被告らの名目的取締役の主張について判断



 「株式会社の取締役は、代表取締役の業務執行全般を監視し、必要があれば、取締役 会を自ら招集するなどして、業務執行が適正になされるようにすべき職責を負うところ、会社経営者との間で、就任に当たって名目上の取締役となる旨の合意がされ、実 際にも、会社の経営に全く関与せず、また、株主総会や取締役会等の法定機関が全く 機能していなかったことは、右職責を免れる理由となるものではなく、むしろ、その任務懈怠を最も明確に示す事情といい得るのであって、この理は、現実に違法行為に 関与した代表取締役等が会社の経営を独断専行していた、いわゆるワンマン会社の場合でも異なるものではない。取締役において、職責を尽すことが困難であると思慮するのならば、就任を拒絶し、あるいは退任すべきであって、代表取締役等からその職 責の事前免除を受けたことや、単に無報酬であること、日常業務に事実上関与しな かったことなどの故に、対第三者との関係において、任務懈怠に基づく責任を免除又は軽減されることはないものと解するのが相当である。」

 「殊に、前記一に認定したとおり(中略)本件募集は、募集予定数を詐って、商品価 値が乏しいか、あるいは全くの無価値であるゴルフ会員権を募集し、原告らを始めと する多数の消費者から多額の資金を詐取するという、犯罪的行為の範疇に属する性質 のものといえるのであって、会社の業務上、ときに見受けられることのある、放漫経営ないし経営判断の誤りに基づく違法行為とは著しく性質を異にするのである。右の 事情のもとでは、本件募集に関与した会社の取締役に期待される監視義務は、一層高度になるとうべきであって、取締役が、かかる義務に違反し、代表取締役等の違法行為を漫然放置した場合は、相応の責を負わされてもやむを得ないものと思料する。」

 「以上の判示の点は、会社の業務全般について職責を担う代表取締役の場合、より強 く妥当するのであり、特段の事情がない限り、名目的な代表取締役であったこと自体が、悪意又は重過失ある任務懈怠になると解される。」


販売に関与する前に既に購入していた原告に対する関係での責任


 「新たに勧誘した顧客に対する関係のみでなく、(関与する前に既に購入していた) 会員に対する関係でも、そのプレー権を一層不可能にするとともに、ゴルフ会員権の 交換価値をより一層低下させるものであり、不法行為が成立すると認められる」