くろ坊のこと
UP99/04/11
更新02/01/04

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第2話「抱き癖」


 それまで僕が、下宿で猫を飼ったのは、実はくろ坊とちゃあ坊が初めではありません。それまでも子猫を飼おうとしたことが何度かあります。刀根山公園周辺には、ノラ猫が多く、子猫が僕の下宿に迷いこんで来ることが何度かありました。
 そのたびにキャットフードを与え、なんとか手なづけようとしました。しかしそこはやっぱり根がノラです。放し飼いにすると、満腹になれば、どこかに行ってしまい、結局僕の下宿に居座る猫は、一匹もいませんでした。
 いついた期間一週間くらいが最長でした。でも実は内心ほっとしていたのです。下宿では、もちろん、動物を飼うことが禁止されていたからです。

 しかしこの時、僕は考えました。「今回は絶対に失敗しない」と。

 そのころの僕は、わけあって、3年ほど、司法試験の勉強に手がつかず、とても落ち込んでいた時期でした。
 そのときは僕の寂しさを紛らわせてくれる子猫が心からほしかったのです。
 しかもくろ坊とちゃあ坊は、これまで飼った猫の中でも、もっとも美しい猫でした。

 そこで僕は、くろ坊とちゃあ坊が完全に僕に慣れるまで、部屋から出さないことにしました。

 ますトイレですが、以前に猫を飼った時の失敗で覚えたノウハウがありました。最初こそ、トイレに失敗しましたが、次からはおしっこをふいたタオルをダンボールに入れ、くろ坊とちゃあ坊に、トイレをする場所を覚えさせました。

 次にくろ坊とちゃあ坊に抱き癖を覚えさせました。抱き癖は、吸収力のある子猫の時に教え込まないとうまくいかないことも、これまで猫を飼った経験から知っていました。

 そこで、僕は、機会があれば、二匹の猫を抱っこしました。当時の僕は、大学院や家庭教師などのアルバイトに行く時以外は、いつも下宿にいてもかまわない生活をしていました。
 ですからくろ坊とちゃあ坊に対しては、今の僕にはできない、本当に無数に抱っこをしたと思います。

 そして抱っこするたび、「愛しているよ」「大好きだよ」とテレパシーで話しかけました。
 抱っこは愛情表現だよ、とわからせるためです。こうして2匹の猫は、大きくなっても、寂しいときは、自分から僕に抱っこを求めるようになりました。

 もちろん寝るときもいつも一緒です。ベッドの中では、2匹の猫は、僕の股の間(^^)に入って寝ます。さすがに夏は駄目ですが、冬はとっても暖かかった・・・・・。

 部屋の中では、スキンシップが大事です。僕が机について勉強するときは、くろ坊とちゃあ坊は、僕の腿(もも)の上でくつろぎます。

 右腿には、くろ坊。左腿には、ちゃあ坊、最初は、意図的に腿の上に乗っけたのですが、いつしか、僕が勉強中は、自分から腿の上に乗るようになりました。そしてしばらくすると寝息を立てるのです。さすがに小さい時はいいのですが、段々2匹が大きくなると、とても僕の腿に乗り切れなくなります。それでも、2匹は競うように僕の腿に乗ることをやめませんでした。

 そのころの僕は、司法試験の勉強に手がつかず、机についても漫画を読んだり、テレビを見たりと、気が散る毎日をおくっていました。ところが、僕が机につくと、両腿にくろ坊とちゃあ坊が、でんと居座るのです。あげくのはてには、ぐっすりと寝入ります。しかもその寝顔が可愛い。

 あまりの可愛さに、姿勢を正して、この猫たちの睡眠を邪魔しないようにするしかありません。一端机につくと、二匹がおきるまで立つことが許されないのです。

 そんなわけで、僕は机につくと、姿勢を正して、勉強に専念するしかないような状態になりました。

 おかげで気が散ることなく、司法試験の勉強がはかどるようになりました。これは期せずした結果でした。僕は3年ぶりにものすごい勢いで勉強するようになったのです・・・・・・。



 2話目を、なんと1年ぶりに書きました(^^;。お待ちいただいていた方には、大変な思いをさせました。失礼しました。でも2話目は少しプライベートに踏み込んで気恥ずかしい限りです。
 いよいよくろ坊とちゃあ坊が外に出ます。まだまだ続きます。





第1話「出会い」 UP99/04/11最終更新02/01/04
第2話「抱き癖」 UP00/04/15最終更新02/01/04
第3話「きずな」 UP00/07/27最終更新02/01/04
第4話「決 意」 UP02/01/03最終更新02/01/04




なおこの内容は、いつか書籍(絵本や童話)にすることを考えており、
どなたかご興味のある出版社の方は、ぜひご連絡ください。