ぼくがネットワーク問題に興味をもった理由

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 よく聞かれるのですが、なぜ僕が、ネットワークの問題に興味をもったのか、ということについてお話ししたいと思います。

 それは僕が、大学院に通っていた時代にさかのぼります。そのころの僕は、早朝や深夜の無言電話に悩まされていました。

 あまりにひどいので、カレンダーにその日の無言電話の数をチェックしていたほどです。なぜ無言電話をかけられたのか、さっぱり心当たりもなく、いまだにはっきりした理由はわかりません。なにせ電話に出ると相手が無言で切るの連続でしたから、最後まで犯人が誰だかまったくわからずじまいでした。そういったことが2年くらい続き、その後ぷっつりとなくなりました。

 当時はまだ電話の音を消音できる電話機がありませんでしたので、本当に困り果て、NTTに何度も相談したことを覚えています。

 ところがその後弁護士になり、何の因果か、5年間にわたって無言電話をかけ続け、業務妨害の疑いで逮捕された女性の弁護を担当することになりました。その女性は、起訴された約2カ月間だけで、被害者宅に無言電話を1000回以上もかけていました。5年間に換算すると、かけた無言電話は数万回に及ぶと思われました。

 示談交渉をするため、被害者宅を訪問しました。被害者家族の憔悴しきった姿に、改めて無言電話による精神被害の大きさに驚かされました。被害者家族は、お店を営業していたため、呼び出し音を切ったり、電話に出ないわけにもいかず、5年間という長期にわたり本当に苦しんだ様子が見てとれました。

 他方、被告人の女性は、特別な前科もなく小学校に通う娘を持つごく普通の女性でした。以前交際していた男性から、男性の前妻だった被害者と比較され、ののしられたことから、被害者のことを逆恨みするようになり、無言電話を頻繁にかけるようになってしまったということでした。

 むしろ無言電話をかけるべき相手は、以前交際していた男性だと思うのですが、男性から罵倒されたことで、ノイローゼのような状態で前妻宅に無言電話をかけ続けたのでした。

 この事件は、被害者も加害者も、電話という文明の利器を間にはさんで、お互いノイローゼのような状態になっていました。

 僕は、電話というサービスは、相手がわからないという点で、欠陥商品ではないかと思うようになりました。無言電話を防止できるシステムがありさえすれば、加害者も被害者も犯罪に巻き込まれなかったのにと思うと残念でなりませんでした。

 最後の法廷で、僕は裁判所に対し、こう訴えました。

 「被告人の犯行は、電話機の発達がいまだ不十分なために可能とされたものである。しかし将来的には通信機器の発達につれて、無言電話等の犯罪形態は、今後しだいに解消すると思われる。したがって本件犯行に関して、同種の犯罪を予防するという見地を強調して、重罰を課すのは相当でない」

 最終的に被告人は懲役1年6カ月、執行猶予4年の判決を受けました。

 こうして僕は電話というネットワークの持つ欠陥性に興味を持つ中で、ダイヤルQ2が社会問題化したときには、積極的に被害者の弁護活動にたずさわるようになりました。



 その後のネットワーク問題に関する僕の主な活動は次のとおりです。

 なおこれらの活動は、僕一人の成果ではなく、一緒に活動している弁護士と知識を共有しつつ、ともに歩んだ成果であることを、一言お断りします。