意見書

件名

我が国における個人情報保護システムのあり方(中間報告)
に対するパブリックコメント




2000120
インターネット消費者被害対策弁護団
弁護団長 紀藤正樹
連絡先:licp@po.teleway.ne.jp



1 当弁護団は、199811月、ネット上の消費者被害を救済するために結成された弁護団です。当弁護団の活動につきましては、詳しくは述べることを控えますが、可能であれば、当弁護団が作成しているホームページ(http://homepage1.nifty.com/kito/licp.html)をご覧いただければ幸いです。
 さて今回の中間報告に対し、当弁護団の立場から次のように意見を述べたいと思います。


2 民間部門をも対象とした個人情報保護に関する法整備を含めたシステムを構築し、将来的には基本法を制定することについては、基本的に賛同できる。むしろこうした提言がなされること自体、遅きに失した感がある。
 情報社会の高度化に伴い、消費者はその利便を享受するとともに、個人情報を商品として、収集、利用・取引の対象となる危険にさらされることとなった。特に、ネットワークの進歩によって、個人情報が一度流出すると、大きな被害を受けることとなる。しかも個人情報は、謝罪広告が認められる名誉毀損と異なり、一度流出してしまうと回復困難であるという特質を有する。
 このことは消費者と業者との間も同様である。既に、インターネット・パソコン通信を利用した取引の中で、消費者の個人情報が流出するトラブルが増加している。消費者の保護の観点からも、民間部門の個人情報保護に関する法整備が待たれていた。


3 他方、個人情報保護の名の下に、消費者の権利行使が妨げられないよう留意しなければならない。
 インターネット・パソコン通信が匿名で利用できることにより、匿名性を利用した業者による消費者被害が増加しており、弁護士に救済を求める件数も激増している。
 このような消費者被害の回復のため法的手段を講じるに当たり、悪徳業者や加害者の特定を行う必要がある。ところが、唯一こうした顧客情報を保有しているはずのプロバイダーは、プライバシー(通信の秘密)を盾に、情報公開を拒むのが現実である。したがって、ネットの中で権利侵害が行われた場合には、侵害者の特定が特に難しく、多くの場合に権利回復を断念せざるを得ないのが現状である。個人情報保護の法規制を進めたために、かえって消費者の被害救済の道が閉ざされては、本末転倒である。


4 次に特に規制すべき個別法の分野であるが、信用情報分野、医療情報分野、電気通信分野などと記載されているが、個人情報の流出事故があいついでいるのは、これらの分野に限られない。労働者情報(典型的なものがテンプスタッフの派遣登録者9万人も名簿が流出した事件)や、昨今社会問題化している盗撮された「裸」などの個人情報(個人情報のうち特に保護の必要性が高いもの)も当然個別規制が必要な分野に含まれるべきである。しかもこれらの分野は、刑事罰も必要な領域であると考えられる。
 またインターネット時代は個人情報が容易に流通する危険が無限級数的に増大するが、個人情報の流通の分野は、特に規制が必要な分野が存在すると言える。たとえば名簿屋や興信所など個人情報を金銭で収集するといった分野や、あるいは盗撮情報、すなわち違法に入手された情報を転々流通させるといった分野も考えられ、こうした分野については、業者登録制などの方法も当然考慮されるべきであるし、違法に入手された情報を、それと知って購入するような分野については、刑事罰も考慮されるべきである。


5 以上、今後個人情報保護システムについて検討される上で、日常的にネット上のトラブルに対処している当弁護団の意見も反映させていただくよう希望するとともに、公聴会ないし意見聴取の機会をもうけ、その際に当弁護団が意見を述べる機会を与えていただくよう希望する。

以 上