弁護士のホームページと広告規制
1999年6月1日号
本文約2000字
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 YAHOO!JAPANで「法」「企業」「法律事務所」の順に、ディレクトリ検索をすると、33の法律事務所がヒットする()。ただしこの数は、海外の事務所や事務所案内とは言えないホームページも含まれた数だ。日本の弁護士は約1万6000人。弁護士数に比べ、ホームページの数が非常に少ない理由に、弁護士広告の原則禁止というからくりがあった。

 1999年4月19日現在





メール法律相談は違法?


「弁護士法に基づく規制との関係により、メールによる法律相談は行っておりません」。ネット上で著作権問題などの法律情報を精力的に発信している岡村法律事務所のホームページ「Cyber Law Japan」には、こういった記載がある(http://www.law.co.jp/cyberlaw1.asp)。「え?メールによる法律相談って問題あるの?」という疑問がわくのも当然だろう。

 既にネット上で一定の地位を得たと思われる牧野二郎弁護士のホームページ「インターネットロイヤー法律相談室」(http://www.asahi-net.or.jp/~VR5J-MKN)は、1996年1月の開始当初から積極的にメールによる無料の法律相談をうたってきた。Yahoo!JAPANの推薦ページにも指定され、文字通りのビッグサイトの一つとなっている。

 ほかにも、たとえば秋山法律事務所のホームページ(http://www.jah.ne.jp/~lawyer)など、メールによる無料法律相談をうたうホームページはいくつかあり、次第に増加しているのが現状だ。ただよく見ると、牧野弁護士のホームページにも、秋山法律事務所のホームページにも、事務所の住所や連絡先が明示されていない。秋山法律事務所のホームページには、秋山弁護士のフルネームすら記載されていない。いずれも弁護士広告の規制を考えてのことだ。



弁護士広告の規制


 現行の弁護士法は唱和24年に制定された。弁護士会が司法省(現在の法務省)から監督されていた戦前の轍を踏まないために、弁護士会は国のどの組織からも監督を受けないこととされ、完全な自治権を認められた。

 弁護士広告の規制は、全国の弁護士会を束ねる日本弁護士連合会の会則第29条の2に根拠があり、「弁護士は、自己の業務の広告をしてはならない。ただし本会の定めるところにしたがって行う場合はこの限りではない」として弁護士の広告を原則禁止している。

 弁護士広告は弁護士の品位を損ね、「基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする」弁護士にはふさわしくないというのがその理由だ。たかが弁護士広告の問題と侮ることなかれ、会則違反は懲戒事由にあたる重大な違反なのだ(弁護士法56条)。しかも「ただし書き」の例外も大変厳しいものだ。

 会則の例外を具体化した「弁護士の業務の広告に関する規定」は、広告媒体の制限と広告内容の制限の両面から厳格な規定を置いている。まず広告媒体として許されるものは、@名刺・事務用せん・封筒、A看板、B挨拶状、C事務所案内および事務所報、D同窓会などの団体の会報および名簿、E日本電信電話会社等の発行する職業別電話帳、F新聞、雑誌その他の定期刊行物の7つだけだとされている。テレビ、ラジオ、通信は広告媒体として禁止され、通信回線を利用するホームページは当然許されないということになる。

 次に広告内容の規制だが、原則として、@氏名および住所、A自宅の電話番号、B事務所の名称、所在地および電話番号、C所属弁護士会、D弁護士登録の年月日、E生年月日・性別および出身地、F学位、G公認会計士などの資格、H取り扱う業務、I事務所の営業時間、J弁護士会報酬会規に定める法律相談料の額の11項目しか広告することは許されない。ただし事務所案内や事務所報は、事務所の沿革、構成員の紹介、取り扱う業務の説明なども記載できるが、弁護士会への届け出が必要とされている。

 要するに弁護士広告は、広告媒体と広告内容の両面から厳格に規制されているのが実情。ホームページが許された広告媒体にあたらない以上、当該ホームページが弁護士広告と判断されれば懲戒されても文句は言えないのだ。

 こうした点をクリアーするために、僕のホームページは、情報の提供が目的であり、質問を受けつけないことをはっきり明示し、事務所の住所、連絡先も公開していない(http://homepage1.nifty.com/kito/mail.houhou.htm)。事務所の住所、連絡先を明示すると、弁護士広告といわれても反論できないからだ。



現行の厳しすぎる広告規制は疑問


 弁護士の執筆活動やテレビ出演は弁護士広告にあたらないと解されてきた。弁護士も一市民として憲法上の表現の自由を持つからだ。ホームページも同様だろう。加えて広告の自由も表現の自由の一つとされており、弁護士広告の原則禁止自体も違憲の疑いが強いものだ。憲法との調和と言う観点からは、制限される広告媒体と内容こそが個別に例示されるべきである。現行の規定は逆となっており過度に広汎な規制と言わざるをえない。

 「借金の債務処理は信頼と実績の○○法律事務所にご相談ください」という誘い文句のホームページも存在する。インターネットは弁護士の広告規制をなし崩し的に崩壊させつつある。早急にインターネット時代にふさわしい広告基準を作成しないと、かえって問題ある弁護士の広告を許してしまうのではないかという心配もある。

 読者のみなさんは弁護士の広告規制をどう思われるだろうか。