NTTの分割はインターネット普及の推進力となりえるか?
2001年1月15日号
UP01/05/12
修正01/05/12
本文約2000字
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 ついに21世紀が到来した。この1年でインターネットはもっと日常化するだろう。2000年末の第150回臨時国会で「IT基本法」(高度情報通信ネットワーク社会形成基本法)が制定されるなど、ネット法制は一応完備し、12月31日には、インターネットの普及を期したインターネット博覧会も始まった。ところが普及の前提となるインフラ整備が追いつかない。その元凶はどこにあるのだろうか?





YOSHIKIの意見書


 解散した人気ロックバンドX-JAPANの元リーダーのYOSHIKI氏が、2000年11月7日、平沼赳夫通産相(当時)に「ITに関する意見書」を手渡した。その中で、同氏は「NTTの独占状況を是正しない限り、一般通信事業者による自由競争が促進できず、それがネットユーザーへの料金問題につながり、インターネット普及率の妨げになる」と指摘している。

 同氏は、現在米国在住だが、昨年8月、同氏の主宰する日本向け会員サイト「YOSHIKI.NET(http://www.extasy-japan.com/index_j.html)」に、米国から映像や音楽を流した。ところが米国の感覚で、ダウンロード時間は5分くらいと思っていたが、ファンから3時間も5時間もかかったという話が寄せられた。これにがく然としたことなどが意見書を提出するきっかけだったという(2000年11月10日付け読売新聞夕刊)。



IT推進に向けた政府の方針


 2000年11月29日、IT基本法が制定された。正式名称は「高度情報通信ネットワーク社会形成基本法」。省庁再編がスタートする2000年1月6日に施行される。

 「基本法」という法律は、国会では、一般の法律より格上の法律で、政府の役割などを明記した憲法に準ずるものと考えられている。法律の条文はわずかに35条。

 難しい用語もないので是非読んでもらいたいが、その17条に「世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成」という表題のもと、次のように規定がある(法律は「首相官邸」 http://www.kantei.go.jp/参照)。

 「高度情報通信ネットワーク社会の形成に関する施策の策定に当たっては、広く国民が低廉な料金で利用することができる世界最高水準の高度情報通信ネットワークの形成を促進するため、事業者間の公正な競争の促進その他の必要な措置が講じられなければならない」

 さらに政府のIT戦略会議は、2000年11月27日、「IT基本戦略」を発表している。「競争及び市場原理の下、5年以内に超高速アクセス(目安として30〜100Mbps)が可能な世界最高水準のインターネット網の整備を促進することにより、必要とするすべての国民がこれを低廉な料金で利用できるようにする(少なくとも3000万世帯が高速インターネットアクセス網に、また1000万世帯が超高速インターネットアクセス網に常時接続可能な環境を整備することを目指す)。

 また短期的には、1年以内に有線・無線の多様なアクセス網により、すべての国民が極めて安価にインターネットに常時接続することを可能とする」とある。

 先述のYOSHIKI氏によれば、この5年内は「どんなに遅くとも」とすべきだと言う。僕もYOSHIKI氏の意見に同感だ。



求められるNTTの再分割


 政府の「事業者間の公正な競争の促進」(基本法)、競争及び市場原理の下(IT基本戦略)という言葉は抽象的だ。これをYOSHIKI氏は、「NTTの独占状況を是正」と大胆に切り込んでいる。

 今回僕が冒頭にYOSHIKI氏の意見を取り上げたのは、僕も、NTTの独占問題に切り込まなければ、日本のIT政策の未来はおぼつかないと考えるからだ。

 有名人とは言え「一介の民間人」が、政府でも名指しできないNTT問題に切り込んでいることに、日本の現状が象徴的に現われていると思う。

 NTTが85年に民営化して15年がたった。電話機の自由化がもたらした電話機の低額化、高機能化は、もはや語るまでもないだろう。

 しかし民営化後も地域通信分野における「独占の弊害」が除去できなかったため、99年7月、NTTは、東西地域会社などに分割された。

 しかしいまだに地域通信分野での東西NTTの売上高シェアは92.3%(平成11年)、トラヒックシェアは93.7%(平成10年)だ。

 このため独占の弊害が随所に現われる。たとえば、ISDNの約10倍の高速アクセスが可能なDSL(デジタル加入者線)に変更するためには、ISDNの契約者は、もう一度一般回線に戻す必要があるが、NTT東西2社は、一般回線からISDNに変更する際は電話番号の変更がないのに、ISDNからDSLに変更する場合は番号の変更を要求していた。

 この問題で、郵政省は、2000年11月13日付けで通達を出し、引き続き同一番号が使用できるようにと指導した。電気通信事業法等で定めた「番号の公平な使用」に反するからだ。

 これに対しNTT東西2社は、昨年11月30日、ソフトの開発で対応するとの改善計画を郵政省に提出したが、開発費が約68億円かかるとしたうえで、この費用を他事業者に負担を求め、しかも新ソフト導入に最大18カ月もかかると回答している。IT革命が叫ばれる時代に18ヶ月はないだろう。数ヶ月で対応してもらわなければ、利用者が困ることは明らかだ。



政府の決断が必要


 NTTの独占問題は、郵政省の電気通信審議会(当時)でも議論がなされている。しかし「IT基本戦略」には「必要なあらゆる手段を速やかに講ずる」とある。独占の弊害のために、インフラ整備が遅々とすすまない現状があるとすれば、政府は、直ちに独占排除の政策を断行すべきではないか。