大晦日に開幕したインパクってなんだ?
2001年1月15日号
UP01/05/18
修正01/05/20
本文約2000字
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リード

 
 2000年12月31日から、IT社会の早期実現を目指す政府の肝入りで、インターネット博覧会、略してインパクが開催されている。2001年12月31日までの1年間、国、地方自治体、企業などが、インターネットと現実世界で、さまざまな展示や催しを繰り広げる予定だ。しかしインパクの知名度は低く、政府の狙いどおり、本当にIT社会の起爆剤となるのだろうか?





ある会社内の会話


 昨年末に交わされたA子とその上司B氏との会話。
 B氏「インパクってなんだ?」
 A子「インターネット博覧会のことですよ」
 B氏「それは東京で開くのか?」
 A子(苦笑して)「インターネット上で開かれる博覧会のことですよ」
 B氏「?」

 本誌の読者は、さすがに「インパク」(http://www.inpaku.go.jp/)をご存知だろう。開始前には、周知不足だったインパクも、12月31日の開設直後から、容量を越えるアクセスが殺到し、つながりにくい状態になった。

 報道によると、午後7時30分までに約240万の接続が記録された。開幕イベント用のコンテンツが置かれたサーバーや接続回線が対応できる容量は「1時間に10万件」に過ぎなかった。
 急遽、政府は、動画ページへのリンクを切るなどして、データ量の制限に務め、復旧をはかった。
 開始当初にアクセスが殺到することは予想できたことで、明らかな準備不足。インパクは開始当初からつまずくことになった。

 ところがこのつまずきが報道されることで、「インパク」の知名度も高まった。
 ネットレイティングス社の調査によると、インパクは、昨年12月31日だけで、来訪者約25万人、ページビュー約260万を集め、1日だけで、週間ドメイン別ランキング(2000年12月25日〜31日)で83位に初登場した。これはtbs.co.jp(81位)、mainichi.co.jp(89位)、sony.co.jp(96位)などの有力サイトに匹敵する規模だ。昨年注目を集めたkatokoichi.org(自民党 加藤紘一氏の公式サイト)の初登場188位を大幅に上回った。続く2週目(2001年1月1日〜7日)は、さらに54位に躍進した(調査の詳細は、http://www.netratings.co.jp/参照)。



インパクの仕組み


 インパクの仕組みはこうだ。政府のサーバー内に「インパク」というホームページを設置する。これにリンクする形で、参加する企業や地方自治体、NPOなどがサイトを設置。各企業などのサイトを、言わば、博覧会のパビリオンに見立て、全体をインターネット博覧会と名づけた。官民入り乱れて、サイトを運営するこうした博覧会形式のインターネットの運用は、世界初めての試みだそうだ(注1)。パビリオンには、既に申し込みが終了している204の「特定テーマパビリオン」(1月22日現在)と、自由参加パビリオンがあり、後者は、インパク開催中、随時、申し込みが可能である。

 ただし前者は、政府サーバーのスペースを無償で貸してくれるが、後者は、自前でサーバーを確保する必要がある。つまり特定テーマパビリオンは、公式サイト。自由参加パビリオンは国民参加型の応援サイトと言うべきものだ。
 もっとも政府サーバー内には、CGIが利用できず、その結果、掲示板が設置できないなどの制限があり、別途、掲示板用のサーバーを用意するのは、財政難に苦しむNPOにとって、厳しいものがある。

 また自由参加パビリオンにおいても、公式サイト同様、サイトの責任者の名前、住所を明示する義務があり、国民参加型としては、制限が強すぎる感がある。

 サイトの運営上、何か問題が起きたときに、責任者が政府にわかるようにしておけば足りるわけで、直接サイト上に名前、住所を明示できる市民が、どれだけいるだろうか?
 国民参加型のインパクを目指したわりには、個人情報の扱いが杜撰だろう。特定テーマパビリオンについても、政府サーバーを無償で利用させる以上、参加基準を厳しくしたというわりには、消費者の立場から見て、問題ある企業も含まれている。
 公式サイトといえども、政府が企業を認めたというわけではなく、注意を要する点である。



インパクの狙い


 インパクに対する政府の狙いは二つ。一つは日本にIT(情報技術)創造のための人材や組織を育てること。もう一つは、日本のIT推進の好循環をつくり出すことだ。1月5日には記念切手も発行されるなど、政府の力の入れようはひとかたならぬものがある。
 インパクのプロデューサーの一人である荒俣宏氏は、「現実社会の万博は初日に完成しているが、インパクの初日は入り口」「最後が一番おもしろい」などと述べている。果たして閉幕までに、政府の思惑どおりことが運ぶだろうか。

 ところで公式サイトに企業系サイトが多い中、「消費者パビリオン」(http://www.inpaku.go.jp/jacas/index.html)に触れておきたい。唯一の消費者側の公式サイトと言えるもので、日本を代表する消費者6団体「全国消費生活相談員協会」「国民生活センター」「全国消費者団体連絡会」「主婦連合会」「消費者関連専門家会議」「日弁連消費者問題対策委員会」が、共同で設置している。

 ちなみに僕は、日弁連側の「パビリオンプロデューサー」として参加している。
 かってこの6団体が、共同で継続的な作業をしたことはなく、閉幕まで建設途上の「消費者パビリオン」だとは言え、せっかく作ったコンテントを、閉幕後、どのように利用・発展させていくのだろうか。

 つまり消費者パビリオンに限らず、インパクの正念場は、閉幕後だろうと思っている(注2)。



 注1 「初」ではないという意見がある−インパクを笑え!参照。
 注2 紀藤からのごあいさつ「消費者パビリオン開設のお知らせ」