ネズミ講に手をだすな!
2001年6月1日号
UP01/07/20
本文約2000字
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リード

 
 インターネットにネズミ講が蔓延している。ネズミ講は、開設も運営も加入勧誘もすべて犯罪として禁止されたものだ。加入を勧誘しただけでも、20万円以下の罰金とされている。「儲かる」という安易な誘いにのったことで、警察に逮捕されることになる。後悔しないためにも、こうした誘いに、絶対にのらないことが重要だ。





メール勧誘型ネズミ講の初摘発


 2001年1月23日、ネズミ講を開設したとして、秋田、宮城県警と北海道警は、北海道小樽市在住の会社員(36)を無限連鎖講防止法違反(開設禁止)の疑いで逮捕した。

 1999年10月ころから2000年8月ころにかけ、「リストにあがった4人の口座に1000円ずつ送金した後、一番上の口座番号を削り、一番下に自分の口座番号を加えて、別の人にメールを送るだけで、年収以上の大金を手にできる」などと電子メールで勧誘。1都1道5県の10人に計3万円を振り込ませた。ほかに約1000人から約100万円を集めた疑いも持たれている。この事件では、秋田県の男性会社員(33)ら数名も同法違反(勧誘)の疑いで書類送検された。電子メールを使ったネズミ講の摘発は、全国で初めてのことだ。

 「違法ですか」と僕のところにも問い合わせが来ていたこの種のメールは、一般に「マネーゲーム」と言われ、1996年ころから流行し、対応に苦慮してきた。国民生活センターにも苦情が殺到していた。今回ようやく強制捜査のメスが入ったことで、はっきりと犯罪だと言う事ができるようになった。



ネズミ講の犯罪性


 ネズミ講は、法律用語では、「無限連鎖講」と言い、その開設も運営も加入勧誘もすべて犯罪として禁止されたものだ。

 無限連鎖講の防止に関する法律は、1条で「この法律は、無限連鎖講が、終局において破綻すべき性質のものであるにもかかわらず、いたずらに関係者の射幸心をあおり、加入者の相当部分の者に経済的な損失を与えるに至るものであることにかんがみ、これに関与する行為を禁止する」とある。

 そして5条で無限連鎖講を開設、運営したものは、3年以下の懲役、300万円以下の罰金とされ、7条により、加入を勧誘しただけでも、20万円以下の罰金とされている。
 絶対にこの種の勧誘にのらないことが大切だ。

 既に、ネット上で、ネズミ講への勧誘を安易に始めたために摘発された例も存在する。



サイト勧誘型ネズミ講の初摘発


 「宝くじ感覚でやった」と摘発された女性は供述した。

 事件は、98年までさかのぼる。福岡県警は、その年の8月10日、名古屋市の化粧品輸入販売業の女性(43)ら33歳から53歳までの埼玉、愛知、岐阜、石川、福岡、熊本の6県14人(うち福岡8人、女性1人)を、無限連鎖講防止法違反(勧誘禁止)の容疑で書類送検した。
 14人は1996年10月上旬ころから1997年10月下旬ころまでに、東京都内の女性(34)ら24人を「962万円の大金が入るもうけ話がある」と勧誘、2万数千円から700万円余の配当を受けた。

 この事件で、ネズミ講を開設していたのは、イタリアに本社があるフューチャー・ストレテジー社。システムは「ペンタゴノ」と呼ばれ、ホームページを使い世界中で会員を募集、国内へは名古屋市の女性を端緒に口コミやネットで広がった。
 ペンタゴノは、入会の際に紹介者から1枚4400円の「会員証明書」を購入。証明書には先に入会した会員7人の名前が書かれており、名簿1位の会員とフ社にも各4400円を振り込んだうえ、フ社から送られる証明書3枚を売り、順次会員を拡大していけば、名簿順位が上がり、子が7代まで増えると、962万円が振り込まれてくる。98年当時、日本での会員が全都道府県の延べ約12万人、フ社への送金額は約6億円に上っていた。ただしフ社へは日本の法律が及ばないため、立件は14人にとどまった。



蔓延するネズミ講


 フ社事件の場合、加入は、会員証明書の購入という一応商品の購入という形を取っている点で、単純な送金と異なる。
 しかし商品の購入であっても、その物にほとんど財産的価値がない場合、やはり金銭の配当組織と同視され、無限連鎖講防止法の適用を受ける。

 最近「ホームページを借りる人を紹介してくれれば大金が得られる」「商品があるからねずみ講とは違う」という誘いで、「登録料」を払わされた学生らからの相談や苦情が、全国の消費生活センターに殺到している。

 最初に11サイト分の年間レンタル料1375ドル(約17万円)を「登録料」として払い会員になる。会員になって、順次、「子会員」「孫会員」を増やし、9サイト分の新規レンタル者が集まった時点で会社側から70ドルが紹介料として入る。紹介料の上限は週約2万5000ドルで、米国から小切手で送金される。米オクラホマ州に本社を置くとされるSkyBizというシステムだが、勧誘の際に、20日間のクーリングオフが可能なことなどの記載がある法定契約書が交付されないなどの点で、訪問販売法(連鎖販売取引)(注1)に触れる疑いが濃厚だ。

 違反すれば、勧誘者であっても、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金となる。

 同時にSkyBizは、サイトのレンタル料というほとんど無価値の商品を約17万円で売りつけている点で、無限連鎖講にあたる可能性がある。

 いずれにせよ「儲かる」という安易な誘いのったことで、ある日、警察官がたずねてくるということはないようにしたい。




 注1 2001年6月1日からは、特定商取引に関する法律(特定商取引法)と改称。