----- アトピー性皮膚炎の民間療法による健康被害を調査-----
99年04月11日付け朝日新聞朝刊掲載記事の速報



 入院が必要と診断された重症のアトピー性皮膚炎患者の約半数が、民間療法や根拠に乏しい特殊療法を受け、症状を悪化させていたと、日本皮膚科学会の「アトピー性皮膚炎・不適切治療健康被害実態調査委員会」(委員長=竹原和彦・金沢大医学部教授)が10日、東京都内で開かれている同学会で発表した。皮膚炎に関する健康被害の全国調査は初めて。

 同委員会は、昨年10月から今年1月にかけ、全国10カ所の大学病院で入院患者と入院が必要と判断された患者合計93人について、調べた。その結果、46人が直前に民間療法や特殊療法を受け、症状を悪化させていた。  複数回答で聞いたところ、31人が「かゆさのあまり眠れない、いらいらする」と訴え、休学や休職に追いこまれた人も16人いた。

 療法の内容は複数回答で酸性水などを塗る「水治療」、アトピー性皮膚炎に効くとうたった「化粧品」などの民間療法や、医師の勧めで「茶のふろに入る」「特殊な軟こうを塗る」といった特殊療法だった。治療薬として広く使われているステロイド剤が悪化要因だとして医師から使用中止を指示され、悪化した人もいた。特殊療法の一部は、同皮膚炎に効くとする商品の業者が経営に絡んでいる医療機関で行われていたという。

 調査委員会の竹原委員長は「民間療法・特殊療法の宣伝は数知れないが、アトピー性皮膚炎を悪化させる例も多いことは意外と知られてこなかった。悩むあまり、特殊な治療に頼ってほしくない」と話している。同委員会では今年9月まで同様の調査を続けることにしている。(22:55)