インターネット犯罪と法規制 初出:日韓法学会第2回共同シンポジウム資料集 UP01/01/07 更新02/04/07 2000年9月9日、早稲田大学国際会議場において、第2回「日韓法学会」(Japan-Korea Law Association) の共同シンポジウムが開催された。 99年の第1回は韓国で開催されたが、2000年のテーマは「高度情報通信社会と法をめぐる諸問題」。 日韓のインターネットをめぐる状況について、 下記の学者7名と筆者の合計8名(韓国側4名、日本側4名)が報告したが、 本稿は、その日の筆者の研究発表をまとめたものである。 日本のインターネット犯罪の幕開けとなった1996年から 2000年までのインターネット犯罪を巡る状況の参考になると思われますので、あえてUPしておきます。
初出原稿に若干の加筆 (約7100字) なお初出原稿に関しては、ハングル語訳があります。 HOME インターネットを考える |
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1 初摘発・初逮捕から見たインターネット犯罪 1996年2月1日-これは日本のインターネット犯罪史上に特筆される日だ。インターネットを利用した犯罪が日本で初めて摘発された。警視庁は、その日、ネット上に猥褻な画像を流したとして、わいせつ図画公然陳列罪の容疑で、28歳の会社員男性を逮捕した。逮捕の前日、この会社員と16歳の高校生の自宅、そして当時日本最大のプロバイダーの一つであったベッコアメ・インタネットというプロバイダーの家宅捜索を行った。 逮捕された会社員は、その後、同年4月22日に、懲役1年6カ月、執行猶予3年の有罪判決を受けた(東京地裁平成8年4月22日付け判決(判例時報1597号151頁))。 その後1996年中は、「日本国内のサーバーに猥褻画像をアップした」という典型事件の摘発が続くことになる。そのため当時一部ネットワーカーの中で「海外サーバーにアップすれば逮捕されない」などという噂がまことしやかに流れたことがあった。 ところが大阪府警は、翌年の1997年2月、海外サーバーに猥褻画像をアップしたという事件にメスを入れた。 さらに1997年4月、各都道府県警を所管する警察庁は、総合的なハイテク犯罪への対処を検討するセキュリティ対策室を設置した。設置は、警察がインターネット犯罪に本腰を入れようとする強い意思の現れだった。 実際、その月、大阪府警は、画像にモザイクを入れたり消したりすることが簡単にできる画像処理ソフト・FLマスクを販売するとともに、FLマスクによりモザイクを入れた猥褻画像を提供しているホームページへのリンクをしていたというケースを、猥褻図画公然陳列罪の幇助犯として摘発した。 その後岡山県警が摘発した別の事件で、1997年12月に、モザイクの入った猥褻画像を掲示していた事例で、モザイクは、取り外し容易として、有罪判決が出された(岡山地裁平成9年12月15日付け判決(判例時報1641号158頁))。 こうして1996年から始まった猥褻事犯の摘発は、1997年までに、ほぼ考えられるすべてのケースで行われた。 ただ猥褻な画像を提供するホームページへのリンクについては、1996年10月、広島県警が摘発した事件が起訴猶予とされ、単なるリンクは犯罪とはならないという基準は一応確立した。 そのほかの犯罪についての本格的な捜査は、典型的な詐欺(1996年4月、神奈川県警)の事案を除いて、1997年から始まった。 新聞記事等の検索から初摘発だけを追ってみる。出資法違反(1997年5月、北海道警)/ハッカー(1997年5月、大阪府警)/売春勧誘(1997年10月、警視庁)/侮辱(1997年11月に罰金命令、秋田県警)/ 銃器販売(1998年1月、宮城県警)/宝くじ(1998年1月、広島県警)/訪問販売法違反(不実告知、1998年5月、兵庫県警)/ネズミ講(1998年8月、福岡県警)。 警察は、1996年は、国内サーバーに猥褻画像をアップロードしたという比較的簡単な事件から捜査に着手した。こうしてインターネット上の犯罪の捜査手法に習熟していった警察は、1997年から1998年にかけて、本格的な捜査体制に入ったことは明らかである。 2 リンクするだけで犯罪か? ところで前述のFLマスク事件で、モザイク処理を施したわいせつ画像を掲示したホームページにリンクをはるなどした行為について、大阪地裁は、2000年3月30日、わいせつ図画公然陳列罪のほう助にあたるとして、懲役1年、執行猶予3年の有罪判決を下している。この事件は、被告側で、「リンクは犯罪か」という観点から全面的に争われた。 事案は次のようなものである。 被告の会社員(33)は、画像に簡単にモザイク処理を施したり、モザイク処理を外したりすることのできる画像処理ソフト・FLマスクの開発者で、ホームページ上でFLマスクを販売していた。被告は、そのホームページに、FLマスクを使ってモザイクをかけたわいせつ画像を掲示していた2つのホームページへリンクをはっており、これが、わいせつ図画公然陳列罪のほう助罪にあたるとして、97年4月、大阪府警に逮捕された。 被告は無罪を主張していたが、判決は有罪となった。会社員は、最終的に控訴を断念し、この有罪判決が確定している。 この判決の評価として、マスコミなど一部に、アダルトサイトへのリンクがすべて犯罪となるがごときの誤解に基づく論調が見受けられるが、判決は、事案を前提とするものであり、この事案の場合、単なるリンクしただけの事案ではない。 今回の判決は、次のような行為を有罪としている。判決が認定した「罪となるべき事実」は次のとおりである。 「被告は、正犯者2名が、わいせつ物を公然陳列するにあたり、その情を知りながら、正犯者らに電子メールを送信して、「FLマスク」の使用と、各アダルトサイトから、被告が開設していたホームページへのリンク設定とを誘引し、更に被告のホームページから各アダルトサイトへのリンクを設定して、より多くのインターネット利用者がわいせつな画像を閲覧できるようにし、正犯者らの各犯行をほう助した。」 つまり今回のFLマスク事件は、単なるリンクとは異なり、積極的に正犯に加担している事案である。 次に、わいせつ図画公然陳列罪は、故意犯であり、過失犯処罰規定がないことに注意すべきである。その点が過失処罰規定がある「殺人罪」などの犯罪とは根本的に異なる。 リンクをはった時には、わいせつ画像がなかったが、その後知らないうちにわいせつ画像が掲示されたという場合は、当然に処罰されない。つまりリンク元は、常時リンク先を注意する義務はなく、猥褻サイトへのリンクをはる必要のない普通の市民の場合、今回の判決の影響はほとんど考えられない。 以上のことから、検索エンジンの場合、ディレクトリー方式の場合なら、採用時のチェックで、ロボット検索エンジンの場合なら、特に推奨や宣伝でもしない限りは、ほうじょ犯となることはありえない。もちろんわいせつ画像の掲載を知って、さらにリンクをはり続ける場合なら故意とも言えようが、しかしそれは掲示板の発言などのチェックと同じで、サイト運営者としては当然のことである。 ただし被害者のいる事件なら、注意していても、後に過失による不法行為として民事上の責任を追及されるおそれがある。が、わいせつ図画公然陳列罪は被害者のない犯罪であり、刑事事件だけを念頭においておけばよいわけで、名誉毀損事件に要求されるような義務は要求されない。 なお刑法は、「正犯をほう助した者は、従犯とする」(62条)、「従犯の刑は、正犯の刑を減刑する」(63条)としている。もっともほう助の定義をした刑法上の条文はなく、学説判例は、ほう助とは、正犯の実行行為を容易にする行為と定義している。ここで容易とは、道具や場所を与えるなどの積極的な方法だけでなく、犯罪に関する情報を提供したり、精神的に犯意を強めるようなものも含むと広く解されている。 その上、ほう助犯の場合、通常の共犯と違い、正犯者との間に意思の連絡も必要ない。友人の窃盗行為を、見てみぬふりをし、一方的に手助けをするような行為を幇助犯とした判例があり、学説上、片面的ほう助と読んでいる。 要するにほう助とは、正犯を助ける行為をすべて包摂するもので、もともとあいまいな規定である。そのためほう助犯の安易な適用は、萎縮的効果を持つことになり、「リンクするだけで犯罪となる」との誤解を生んでいることは否めない。 しかしほう助も犯罪である以上、犯罪とするに足る内実を伴っていなければならないい。 96年9月、広島県警は、わいせつサイトへリンクしたとして3人を逮捕したが、いずれも不起訴とされた。つまり単なるリンクは処罰しないというのが、現在の実務の射程であることを、正確に理解する必要があるし、市民の権力に対する監視も必要だろう。 3 モザイク処理をした画像のわいせつ性 ところでマスク処理をされた画像が、そもそもわいせつ物にあたるのかという論点がある。これがわいせつ物にあたらないのであれば、そもそも正犯は処罰されないから、当然ほうじょ犯も処罰されないことになる。 この点は、わいせつ画像にあたるとするのが、もはや確定判例と言ってよい状態にある。FLマスクで簡単に元の画像が復元できる以上、墨塗りしたわいせつ写真集のマジックが簡単に取れるのと同じことである。 マスク処理された画像が、はじめてわいせつ図画に当たると判断されたのは、先述の97年12月15日の岡山地裁判決である(判例時報1641号) 。 被告2人が、それぞれ懲役1年(執行猶予3年)、懲役1年6月(執行猶予3年)の有罪判決を言い渡されている。 その後今回のFLマスク事件の正犯二人について、大阪地裁は、それぞれ、97年2月に、懲役1年2月(執行猶予3年)、99年3月に、懲役1年6月(執行猶予3年)の有罪判決を言い渡している。 4 インターネット犯罪に対する法規制の現状 日本で真にインターネット元年と言ってよいのは、1995年のことである。日本におけるインターネットの創始者の1人、慶応大学教授の村井純氏の「インターネット」(岩波新書)は、1995年11月に出版され、ベストセラーとなった。 しかしなおインターネットは市民に深く普及したとは言えず、真の意味での日本のインターネット元年は、99年まで持ち越すことになる。その前年のウインドウズ98の登場によるインターネットの爆発的普及を背景として、ホームページで東芝を告発したサイトの登場し、企業社会に衝撃を与えたのが、99年6月(報道は7月)のことである。 そしてその年99年8月13日に閉会した第145通常国会は、日本のインターネット規制をほぼ完成させた国会でもあった。この国会では、児童ポルノ法(99/05/18成立→99/11/1施行)、不正アクセス禁止法(99/8/06成立→2000/2/13施行)、そして令状による盗聴を可能とする組織犯罪対策三法(99/8/12成立→盗聴法は00/8/15施行)が成立し、ネット上の風俗営業に制限を課す改正風営法の施行は99年4月1日のことであった。つまり1995年のインターネットブームから4年かかり、昨年の国会で、我が国のネット規制はほぼ完成したと評価しうる。 警察庁も、1999年3月4日、生活安全局長と刑事局長などの連名で、全国の都道府県警に三つの指示を出している。①ネット上の違法情報を排除のための積極的なサイバーパトロール②ハイテク犯罪の摘発強化③企業などの相談に積極的に応じ国民への注意喚起を行う。 5 雑感―1999年法の解説 1 児童ポルノ法とは? 児童ポルノ法は、正式名称は、「児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律」と言い、昨年の5月18日、国会で可決成立し、5月26日に公布、 11月1日から施行された。 児童とは18歳に満たない者を言い、児童売春禁止と同時に、児童ポルノを頒布、販売、輸入などが禁止された。児童ポルノを公然と陳列した者も罰せられるので、ネット上に児童ポルノをアップするだけでも犯罪となる。違反は3年以下の懲役又は300万円以下の罰金。猥褻物頒布罪(2年以下の懲役または250万円以下の罰金もしくは科料)、児童買春(3年以下の懲役または100万円以下の罰金)より重い罪となる。 「児童ポルノ」の定義について若干説明すると、「写真、ビデオテープその他の物であって」、次のいずれかに該当するものをさすとされている。 ①児童を相手方とする又は児童による、性交又は性交類似行為に係る児童の姿態を視覚により認識することができる方法により、描写したもの②他人が児童の性器等を触る行為又は児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿態であって、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により、描写したもの③衣服の全部又は一部を着けない児童の姿態であって、性欲を興奮させ又は刺激するものを視覚により認識することができる方法により、描写したもの。 児童ポルノ法は、これまで「猥褻」にあたらないとして放置されてきた児童ポルノを、児童買春と同様、児童虐待の一つとして明確に位置付け、児童を保護するために作られた。 2 不正アクセス禁止法とは? 不正アクセス禁止法は、正式名称は「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」。8月6日、国会において可決成立し、8月13日に公布、施行は今年の2月13日。不正アクセス行為は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金。パスワードを第三者に提供する行為も、有償無償を問わず、30万円以下の罰金となる。 ここで不正アクセスとは、①ネットにつなげられたコンピュータに他人のパスワードを使って侵入すること、②セキュリティホールを利用して侵入すること、の2つだ。電子計算機損壊業務妨害罪は5年以下の懲役又は100万円以下の罰金。不正アクセス法違反よりも重い。つまり不正アクセス禁止法は、業務妨害罪では対処できない類型、①業務妨害に達していない単なる覗き見②業務上のコンピュタとは言えない個人のコンピュタへの不正アクセス③パスワードの提供、の3つを新たな処罰対象としたことに意味がある。 3 通信傍受法とは? 「組織犯罪対策法」は、3つの法律案からなっている。刑事訴訟法改正案・マネーローンダリング規制法案・通信傍受法案がそれだ。 中でも正式名称「犯罪捜査のための通信傍受に関する法律」案は、プライバシー保護の観点から問題が多いという反対論も依然根強い。傍受には犯罪の嫌疑が必要だが、自分のメール相手が傍受されていれば、こちらの出したメールも傍受されることなった。 4 以上ごく簡単に法律の内容を見てきたが、犯罪対策の法制としては、今後は、さらに暗号技術の国家管理法案などが浮上してくる可能性も高い。暗号化された通信では傍受の意味がないからだ。 6 著作権法違反の摘発 インターネット上の著作権侵害が初めて摘発されたのは、1999年5月のことである。CDなどの音声情報を約10分の1に圧縮できる音声圧縮ソフトMP3を使い、B'zや宇多田ヒカルなどの人気CDを無断で複製し、インターネットのホームページにのせていたという容疑で、愛知県警は、5月26日までに、札幌市に住む会社員の少年(18)宅の家宅捜索をおこなった。著作権法違反(公衆送信権と公衆送信可能化権侵害)の容疑だ。次に強制捜査に入ったのは宮城県警。マイクロソフト社のプログラム設計ソフト「ビジュアルベーシック」(市価約4万円)を無断で複製し、千葉県に住む男性会社員(32)のホームページに載せたとの容疑だ。5月31日までに、東京都世田谷区に住む16歳の高校生宅の家宅捜索が行われた。容疑は、同じく著作権法違反(公衆送信権と公衆送信可能化権侵害)だ。 ところで「公衆送信権」と「公衆送信可能化権」は、いずれも著作権法の1997年の改正で認められたもので(同法23条、92条の2、96条の2)、1998年1月1日から施行された。「公衆送信」とは、無線、有線、通信、放送を問わず、公衆に向けて行うすべての送信行為を言う。 インターネットを通じて著作物のコピーを公衆に向けて送信する行為も、この著作権者の「公衆送信権」を侵害することになる。これに対し「公衆送信可能化」とは、著作物のコピーを公衆送信が可能な状態に置くことを言う。つまり利用者がいつでも著作物をダウンロードできる状態に置くだけで、著作権者の「公衆送信化権」を侵害することになる。 公衆送信の前段階である「公衆送信が可能な状態」を摘発可能とするために認められた。言わばダウンロードを確認しなくても、ホームページの内容だけで逮捕を可能にしたのが、この「公衆送信化権」の実態である。 7 今後の予定される法規制とその課題 1999年に犯罪対策法制をほぼ完備させた政府は、現在、さらにインターネット上の電子商取引を活性化させるための、法の整備を急いでいる。 2000年、4月11日、商業登記に基礎を置く電子認証制度の導入などを内容とする「商業登記法等の一部を改正する法律」が成立し,4月19日に公布された。 同時に「電磁的記録の認証」「電磁的記録の電子確定日付の付与」「電子文書の保存及び内容に関する証明」を対象とする「電子公証制度」も創設され、本年中には導入の予定とされている。著作権法もネット送信時代に適合するように、毎年のように改正される状態が続いている。 また5月31日には「なりすまし」や「雲隠れ」といった電子商取引にまつわるトラブルを未然に防止し、電子商取引の安全性を確保するため、「電子署名及び認証業務に関する法律」が成立し、2001年4月1日から施行の予定となっている。 さらにインターネット時代に心配される個人情報の保護問題も法制定が急務の課題となり、政府は、来年の次期通常国会で個人情報保護基本法を制定する予定としている。 また政府は、契約に際し、紙で作った契約書面の作成や交付が要求される取引について、書名の作成や交付義務などを免除する方向での規制緩和を実施しようとしている。 課題となっているのは、①書面作成・交付義務の免除、②対面販売、事務所設置義務の免除、③行政手続の電子申請化、の3点で、①については、今年秋の臨時国会で改正にこぎつけたいという。 しかし改正が予定される法律の中には、消費者保護の観点から、書面の作成や交付義務などが要求される法律がある。 書面には、情報提供機能、説明補完機能、警告機能、証拠機能などがあり、消費者の注意を喚起し、トラブルが生じた際の証拠ともなる。たとえば押し売りなどの訪問販売などを規制する訪問販売法は、クーリングオフを明記した契約書の作成を要求し、これに違反すれば犯罪となる。 法制度の整備は急務だが、一方で企業や国優位の社会もノーである。 とすると、インターネットに対する法規制が必要だとしても、市民の側もきちんと声をあげ、また既存の法秩序と調和する形で、規制がなされていく必要がある。 しかし政府のIT政策の失策により、日本のIT化が立ち遅れており、そのため、市民の間に、インターネット利用者層と非利用者層との価値観の分断現象が見られる。 このことが、インターネットに対する法規制を、企業や国優位のものにしがちとなっている現状があり、憂慮せざるを得ない。 |
資料:
■東京地裁平成8年4月22日付け判決(判例時報1597号151頁)
インターネット接続専門会社の会員が、サーバーコンピューター内にわいせつ画像のデータを記録・蔵置させて、インターネットの不特定多数の利用者に右わいせつ画像が再生閲覧可能な状態を設定したことが、わいせつ図画の公然陳列に当たるとされた事例(懲役1年6月執行猶予3年)。
■京都地裁平成9年9月24日付け判決(判例時報1638号160頁)
パソコンネットの開設運営者が自己の管理するホストコンピュータのハードディスク内にわいせつ画像データを記憶・蔵置した事案において、右ハードディスク自体が、わいせつ物公然陳列罪の「わいせつ物」に該当するとした事例(懲役1年6月執行猶予3年)。
■岡山地裁平成9年12月15日付け判決(判例時報1641号158頁)
1 わいせつ画像の性器部分に画像処理ソフトでマスク処理をしたものをプロバイダーのサーバコンピュータに送信してその記憶装置内に記憶・蔵置させ、不特定多数のインターネット利用者において受信した画像データを同じソフトを利用することによりマスクを取り外した状態のわいせつ画像を復元閲覧することが可能な状況を設定し、アクセスしてきた不特定多数の者にわいせつ画像を再生閲覧させたことが、わいせつ図画公然陳列罪に当たるとされた事例。
2 わいせつ物公然陳列罪の対象となるわいせつ物には有体物のみならず情報としてのデータも含まれるとすることも刑法の解釈として許されると判示した事例。
3 被告人A懲役1年、B懲役1年6ヶ月、いずれも執行猶予3年。