日本発・チャイルドポルノ 1998年12月1日号 最終更新01/10/08 本文約1300字 MAC||HOME |
リード マンションの一室。言葉を失った少女に「ちゃんとお話しするんですよ」という声がかけられる。少女は、その後全裸にされて・・。これは現実に存在するビデオのワンシーンだ。我々日本人もチャイルドポルノに対する態度を決める時期が来ている。 1998年9月2日、英国、ドイツ、米国など21カ国の警察は、インターネットを通じチャイルドポルノを流していた国際的犯罪組織の一斉摘発に乗り出した。 摘発作戦は「カテドラル作戦」と呼ばれ、午前4時に、関係者約200人の自宅などの捜索が一斉に行われた。 摘発されたのは米国で結成された「ワンダーランド・クラブ」と呼ばれる国際組織で、逮捕者は約100人。10万点を越えるわいせつ画像が押収された。中には2歳の子供の写真も含まれていたという。 今年6月、ベルギーの人権保護団体「モークホーフェン」が、この組織の送付先リストを入手した。リストには、上記各国のほか、ベルギー、フランス、ポルトガル、チェコ、ロシアなど多数の国の電子メールアドレスが並んでいた(98年7月19日、9月3日各朝日新聞朝刊)。 欧米では、ペドファイルと呼ばれる幼児性愛者にからんだ事件がたびたび問題になっており、幼児虐待につながるチャイルドポルノに対して断固とした姿勢でのぞんでいる。 ドイツ政府は、1997年4月、世界第2位のパソコン通信会社コンピュサーブのドイツ支社長を、インターネットでのチャイルドポルノの提供を黙認していたとして、青少年保護法違反などの疑いで起訴しているほどだ(97年4月17日読売新聞朝刊)。1998年5月、支社長は2年間の保護観察処分という有罪判決を受けた(98年5月30日読売新聞夕刊)。 こうした欧米の厳しい対応に比べて、日本は、チャイルドポルノの天国になりつつある。 1997年7月11日、インターネットを利用してチャイルドポルノを販売したとして、札幌市のビデオ販売会社経営者が、わいせつ図画販売などの疑いで逮捕された例はあるものの、きっかけは「少女ポルノ売ります」などという電子メールがドイツに誤転送されたこと。メールを受け取った人が現地の警察に通報、国際刑事警察機構(ICPO)を通じて警察庁に連絡が入り、事件が発覚した(97年7月12日朝日新聞朝刊)。 外圧がなければ、逮捕はもっと遅れたと思われ、非常にお寒い限りだ。欧米がチャイルドポルノに対する規制を強める中、日本がチャイルドポルノ発信国として国際問題になりつつあるのだ。 日本でのチャイルドポルノ摘発の難しさは、わいせつ物の定義が、通常人を基準をしていることだ。幼児に特に関心のある人を基準としていないのだ。先の摘発例も、画像の中に成人のわいせつ画像があったため逮捕が可能となった。 そのためチャイルドポルノの摘発は、いきおい他の法律に頼りがちとなる。刑法では、13歳未満の女子とSEXをする行為を無条件に強姦罪にしているし(177条/2年以上の懲役)、13歳未満の男女に対するわいせつな行為を無条件に強制わいせつ罪としている(176条/6カ月以上7年以下の懲役)。 児童福祉法は、児童(同法では、満18歳に満たない者を言う)に淫行をさせる行為を禁止し、10年以下の懲役または50万円以下の罰金としている(34条、60条)。 しかし直接子どもにわいせつな行為をした者しか罰せられないとなると、チャイルドポルノをコピーして販売する者には対処できない。そこで今年5月、チャイルドポルノの頒布や貸与などを正面から罰しようとする法律案が、議員立法として衆議院に提出された。金融機関の破綻処理の陰で見えないが、日本でもそろそろこうした法律を国会で審議することが必要な時期ではないか。※ |
※その後1999年5月に、児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律が制定されたのは周知のとおりです。