SOHOビジネスの罠
1999年2月15日号
UP 不明
本文約1300字
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最終更新02/10/19


リード

 インターネットから生ずる消費者被害を救済するための弁護団が結成された。日本初のことだ。インターネットは、普通の人の表現発信を可能にしたが、同時にネット上に、ネズミ講やマルチ商法を氾濫させている。





 98年11月26日、僕を含む10人の弁護士で、インターネット消費者被害対策弁護団を立ち上げた。第二東京弁護士会が同年10月30日に開催した「インターネット・マルチメディア110番」に寄せられた相談のうち10件までもが特定業者のSOHO商法に集中し、放置できないと判断されたからだ(110番の結果は、同会のホームページ参照)。

 業者の手口はこうだ。「日本初のインターネットビジネス/月50万から100万以上」などというキャッチフレーズで、求人ホームページや新聞の折り込み広告などをうつ。広告に引かれて集まった入会希望者を対象に事業説明会を開き、ホームページの製作やバーチャルショップなどの業務委託料や会員の紹介料などで、自宅にいながら月50万円以上の収入を得ることができるなどと説明する。

 こうして高額の収入を期待した参加者に、この事業に参加するにはパソコンセットを買う必要があると称して、市価15万円程度のパソコンを95万円(クレジットを組めば約138万円)で購入させる。ところが入会後は、パソコン通信などの各種掲示板へ会員募集の書き込みなどをさせるだけで、ホームページやSOHOなどの業務委託はなく、業者が当初説明したような収入は得られない。そのためクレジット分がそのまま損害となる。

 こうした商法は、新規会員獲得に紹介料が伴うことから典型的なマルチ商法と言える。もっともマルチ商法は禁止されているわけでなく、訪問販売法上(注1)の「連鎖販売取引」として、同法の厳格な規律に服する範囲でその活動を許されている。

 規律の一つが、業者は、20日間のクーリングオフが可能であることを示す書面を消費者に交付しなければなならいとする規定がある。こうした書面を消費者に交付しなければ、消費者はいつでも業者に対しクーリングオフが可能だし、書面不交付は、6カ月以下の懲役又は50万円以下の罰金となる。

 弁護団では、現在(1998年12月21日)まず第一陣として、12人の被害者の依頼を受け業者と交渉に入ったが、更に20人が相談を希望している(弁護団の連絡先は、http://www1.neweb.ne.jp/wb/licp/l)

 失業率の増加が顕著だ。こういう時期には、手っ取り早く収入が得られるとの触れ込みの、内職商法やマルチ商法がはやる。東京都消費者センターに寄せられる内職・副業に関する相談は、1995年度606件、1996年度792件、1997年度939件と毎年顕著に増加している。

 最近受けた読者からの相談は「ボランティアで豊かになれる」という電子メール。募金者を増やしてくれれば、集まった募金から活動金名目のお金を出すという。ここまでくると外形上金銭配当組織であるネズミ講と変わらない。ネズミ講は「無限連鎖講防止法」によって、その存在自体を完全に禁止されており、開設することは当然のこと(3年以下の懲役又は300万以下の罰金)、末端参加者が勧誘することさえ禁止している(20万以下の罰金)。

 国民生活センターによると、インターネットを使ったネズミ講の相談は、96年年度2件だったものが、97年度は51件を越え急増しているとのことだ。不況の時こそ、跋扈する安易な金儲けには要注意だ。



注1 2001年6月1日からは、特定商取引に関する法律(特定商取引法)と改称。