出会い系サイトへ誘うiモードの迷惑メール -「iモード」出合い系メールの問題点(1)- 2001年7月15日号 UP01/11/26 本文約2000字 MAC||HOME |
リード あいつぐ出会い系サイトの事件がマスコミを賑わせている。出会うはずもない男女を結びつけたのはiモードの出会い系サイトだが、そのきっかけとなったのは、出会い系サイトへ誘うiモードの迷惑メールである。世論の批判に答え、ようやくNTTドコモも改革案を打ち出してきたが、今回と次回は、iモードの迷惑メールの問題を取り上げてみたい。 ■あいつぐ出会い系サイトの事件 2001年5月15日、京都府警は、京都メル友連続殺人事件の容疑者の男性(25)を逮捕した。被害女性2人は、ともに「メル友に会いに行く」と言い残して失そうし、殺害された。普通の生活では出会うべくもない被害者と容疑者と接触するきっかけは、iモードの「出会い系サイト」だった。5月19日には、警視庁が、現職の東京高裁裁判官(43)を児童買春禁止法違反の容疑で逮捕したというとんでもない事件が、新聞1面を飾った。この裁判官が、少女(14)と出会うきっかけもiモードの出会い系サイトだった。 ところで僕は、既に、本誌4月15日号「ネットで出会うということ」という原稿で、出会い系サイトの持つ問題点を取り上げ、人が成長の過程で自然と身につく警戒基準が、ネット社会に応用されないという危険性を指摘している。 そこで今回は、出会い系サイトにアクセスするきっかけとなるiモードの迷惑メールの問題点を取り上げることにしたい。 ■ある実験 世間でiモードの迷惑メールの問題が取りざたされているころ、僕はある実験を行った。あえて迷惑メールを受け取るため、僕の携帯電話のiモードのメールアドレスを、初期設定の電話番号に戻したのだ。 NTTドコモの携帯電話の初期設定のアドレスは、@docomo.ne.jpの前に11桁の携帯電話の電話番号がつくという設定となっている。電話番号の部分は使用者により変更が可能で、僕は、既に迷惑メールの対策上変更していた。実際アドレスの変更後、ただの一通の迷惑メールも来なかった。しかしこれでは今話題の迷惑メールが受け取れない。そこで調査のために、いったん元に戻すことにしたのである。思い立ってアドレスを変更したのは5月17日午前。驚くべきことにその日から迷惑メールが来ることになった。 「女性に安心してメル友を探していたけるサイト。今すぐ乗り換えよう、女性はポイントをためて商品券。男性は25ポイント進呈」と、誰にも教えていないメールアドレスに始めて迷惑メールが来たのは、当日の午後6時15分のこと。その後3日間は迷惑メールが来ることはなかったが、5月21日からは、連日、複数の迷惑メールが押し寄せるようになった。すべて出会い系サイトに登録を誘うメールだ。文字通り「押し寄せる」感で、ひどいのは深夜1時19分、朝5時とメールを知らせる電話音がなり、仕事中でも迷惑メールが来るようになった。普通のメールに迷惑メールがまじってさらに混乱する。もはや「うざったい」というのが本音だが、「いやいや調査だ。今しばらく放置するほかない」と我慢するという調子である。 ■迷惑メールのからくり 誰にも知られていないメールアドレスに、迷惑メールが送られてくるからくりは簡単である。NTTドコモのメールアドレスの初期設定が、@docomo.ne.jpの前に11桁の携帯電話の電話番号がつくという、誰でも簡単にアドレスが解析できる設定となっているからだ。 しかも総務省により、携帯電話の電話番号は、携帯電話各社に割り当てられているが、NTTドコモに割り当てられた電話番号は、旧郵政省のサイトで公開されており(http://www.mpt.go.jp/data/number/mobile.html参照-注)、これを参考にすれば、さらに想定できる組み合わせは少なくなる。つまり迷惑メールは、電話番号をパソコンで解析し、すべてのNTTドコモユーザーに、メールを送りつけることで、成り立っているのだ。 そのうえメールの便利なところは、そのメールアドレスが生きているか否かが瞬時にわかることだ。つまり迷惑メールを送っても、未着となったメールアドレスをキャンセルすれば、より完璧な「今生きているアドレス名簿」に近づく。もちろん携帯電話の新規登録者もいるから、時々はこの名簿も更新しなければならないが、通常は「今生きているアドレス名簿」を使い、「未送信名簿」には、定期的に迷惑メールを送ることで、送信可能となったメールアドレスを「今生きているアドレス」に追加して更新していくだけでよい。 もちろんこの作業は、すべてパソコン上で行うから瞬時の作業である。僕のところに始めて迷惑メールが送られてきたのは5月17日。その後3日間の空白があったのは、最初に迷惑メールの送信が可能となったことで、僕のアドレスが、「今生きているアドレス名簿」に登録され、その後この名簿が、業者間を転々とし始めた結果というべきだろう。 ■iモードメールの問題 つまりiモードは、メールの初期設定に致命的な欠陥があると言うべきである。 5月末でも約50 %のユーザーがメールアドレスを携帯電話のままにしており、その数は1000万人以上にもおよぶという。 6月29日には、一般電話のiモード版であるLモードが始まるが、NTT東西は「当面加入者は多くない」として、特別な対策をとらないとしている。あまりに牧歌的に過ぎるではなかろうか?次号はさらに深く検討したい。 |
注 現在(01/11/25)、このページは閉鎖されているが、本来、国民の知る権利に奉仕する情報はむしろ開示すべきで、迷惑メールをの問題をきっかけに閉鎖されたとすれば、残念というほかない。迷惑メールの問題は、情報公開とは別の問題であり、本末転倒というほかないというのが僕の意見である。