iモード迷惑メールとNTTドコモの対応 -「iモード」出合い系メールの問題点(2)- 2001年8月1日号 UP01/11/26 2018/5/7訂正 本文約2000字 MAC||HOME |
リード あいつぐ出会い系サイトの事件がマスコミを賑わせている。出会うはずもない男女を結びつけたのはiモードの出会い系サイトだが、そのきっかけとなったのは、出会い系サイトへと誘うiモードの迷惑メールである。世論の批判に答え、ようやくNTTドコモも改善策を打ち出してきた。前回に引き続き、今回も、iモードの迷惑メールの問題を取り上げてみたい。 ■ 迷惑メールの氾濫 2001年5月17日、携帯電話のメールアドレスを、初期設定の電話番号@docomo.ne.jpに戻してみた。驚くべきことに、その日から、誰にも教えていないアドレスに、迷惑メールが送信されてきた。以来、毎日、読みきれないほどのメールが送られてくる。そのすべてが出会い系サイトへと誘う迷惑メールだ。iモードのメールを仕事で使用してきた人が、業務妨害だというのもうなずける。事実、時おり送られて来る必要なメールが、迷惑メールにうずもれている。 1999年2月に開始された「iモード」は、携帯電話から簡単にインターネットの利用が可能になったという点で、画期的なサービスだ。開始から2年あまりの2001年6月17日現在、契約者数が約2400 万件に達し、NTTドコモの急成長のけん引役となった。しかしiモードのメールの初期設定が、誰でも容易に予測できる携帯電話の番号とされていたことから、迷惑メールが氾濫する結果となった。 ■迷惑メールの問題性 迷惑メールは、ダイレクトメールと似ているが、似て非なるものというべきだ。ダイレクトメールは、問題点が指摘されることはあったが、総称して「迷惑メール」とは呼ばれることはなかった。なぜeメールの場合、「迷惑メール」と呼ばれるに至ったのか? まずダイレクトメールは業者の費用で送ってくる。しかも一通、郵便代として80円がかかる。10万通も送れば、800万円が必要である。費用面から、ダイレクトメールが世に氾濫するという事態は生じる余地がなかった。 これに対し、迷惑メールの場合、ほとんど費用がかからない。1000万人に送信しても、1通の送信費がかかる程度である。しかもダイレクトメールは、外観から、即座にゴミ箱に捨てる物か否かが判別できる。ところが、迷惑メールの場合、「久しぶり!」というタイトルのメールをあけてみると、迷惑メールだったりするなど、開封してみるまで、迷惑メールとわからないことも多い。 またダイレクトメールの到着で、ドアのチャイムはならない。しかし迷惑メールは、早朝、深夜など、受け取る人の都合を無視し、押し寄せる。そのたびに携帯電話の着信音に悩まされる。これでは無言電話などの迷惑電話と変わらない。 そのうえ、NTTドコモの場合、原則としてメールを受け取る側に、0.9円(20字)から2.1円(250字)の通信費が課金される。着信にお金がかかる分だけ、迷惑電話より「迷惑性の度合い」が高い。2001 年5月、iモードの出会い系サイトの病理現象が社会問題化したが、マスコミや世論の批判が、出会い系サイトに対する以上に、iモードの迷惑メールの問題性に集中したのも当然だろう。 この点、当初、NTTドコモは、マスコミの取材に答え、「メールを受け取るのに通信費がかかるのは当然である。通常のメールを受信する場合でも通信費がかかることと同じだ」、「送信を禁止しようにも、メールの内容にまでタッチできない」などと反論していた。しかしこの理屈は、日本を代表するネットワーク企業の主張としては、まったく納得できない。既に同種の問題につき、日本のネットワーク史に前例があることも知らない言い分だ。 ■NIFTYの取った仮処分事件 やはり日本を代表するネットワーク企業の一つNIFTYは、同社が運営するパソコン通信の会員に対し、たとえばABC〇〇〇〇〇といったふうに、3文字のアルファベットと5桁の数字を並べた8文字の会員IDを与えていた。この会員IDがそのままメールの送信先と兼ねていたこともあり、iモードの場合と同じく、容易にメールの送信先が解析できる状態にあり、これに目をつけた業者による迷惑メールが頻発した。こうしたケースに直面した際、NIFTYのとった行動は賞賛に値する。NIFTYは、1999年2月、一方的に迷惑メールの送信を続けている人物に対し、浦和地裁に電子メールの送信を禁止する仮処分を申し立てたのである。1999年3月9日、同地裁は、この申し立てに理由があることを認め、全国ではじめて、電子メールの送信を禁止する仮処分を決定した。結果的にNIFTYは、会員を守ることになった。 ■NTTドコモの主張の無責任性 また実は、プロバイダーの多くは、メールサーバー上の処理によって、既に存在が確認できたコンピュータウイルスを削除する処理を行っている。つまりNTTドコモの「メールの内容にタッチできない」としている見解は、メールサーバーを管理する企業として、iモードの契約者の利益を無視した、まったく無責任な見解なのだ。 NTTドコモは、世論の批判を受け、2001年6月18日、メールアドレスの初期設定を英数字化する、実施時期を2001年7月9日とすると発表した。この間、1ヶ月で、少なく見積もっても、1000万契約者×1通1円×30日=3億円の利益が、NTTドコモに転がり込んだ計算となる。自社の利益を優先させたために、改善策が遅きに失した感は否めない。注 |
注 ようやく2001年11月になって、NTTドコモが打ち出してきた改善策についての僕の意見は、12月15日発売のMacFanに掲載する予定です。
NTTドコモの対策 | ||||||
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■ドコモ、13日から迷惑メール遮断-毎日新聞(2001.11.12) ■迷惑メール防止法案 民主党が今国会提出へ-毎日新聞(2001.11.8) ■迷惑メールの新対策 NTTドコモが発表-毎日新聞(2001.11.6) ■迷惑メール規制 都が条例・規則改正提案へ-毎日新聞(2001.10 .31) ■データベース構築へ 携帯の迷惑メール防止に-毎日新聞(2001.10 29) ■初の仮処分命令 迷惑メールはダメ 横浜地裁- 毎日新聞(2001.10 29) ■迷惑メール、不満噴出 総務省の後追い行政に-毎日新聞(2001.10 23) |