「ホームオブハート」の実態
2004年4月11日UP
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1 ホームオブハートの実態

 株式会社ホームオブハート(登記上の住所;栃木県那須郡那須町大字高久丙字海道下4378番3、登記上の代表者代表取締役;加田順子、ホームページ;http://www.homeofheart.co.jp/、以下ホームオブハートとする)は、いわゆる「自己啓発セミナー」の主催やその関連商品の販売を主な業務内容とする会社であり、その実質的な主催者は、「癒しやヒーリングのブームの先駆者的存在」であり、「人を真に変容させるトレーナーとして名高い」と称しているMASAYAこと倉渕透(以下、倉渕とする)である。

 ホームオブハートは、元アイドルと称している倉渕が、平成5年6月28日に設立した「レムリアアイランドレコード」を、平成13年9月1日に商号変更したものであり、当初は自己啓発セミナーの要素を残していたが、現在においては、実質的に見て、宗教団体そのものと評価できる団体である。

 株式会社トシオフィス(登記上の住所;東京都渋谷区恵比寿西2丁目8番5号、登記上の代表者代表取締役;出山利三、現在の本拠;栃木県黒磯市本郷町5−9メゾン本郷302号、ホームページ;http://www.toshioffice.co.jp/、以下トシオフィスとする)は、ホームオブハートの一事業部門とも言える会社であり、もともと人気ロックバンドであった「X−JAPAN」のボーカルを務めていたTOSHIこと出山利三が、そのプロモーションのために設立した会社であるが、現在は、ボランティアと称してコンサート活動を続けることによってもたらされる年間1億円程度の収益のほぼすべてを、ホームオブハートに還流させる構造となっており(つまりボランティアと称するは嘘である)、ホームオブハートの営利事業の枢要部分を形成するとともに、ホームオブハートの広告塔として、事情を知らない一般市民やその子どもたちを、精神を意図的に抑圧する「自己啓発セミナー」に勧誘する窓口となっている。

 つまりトシオフィスは、ホームオブハートの資金集め、人集め、双方の重要な部分を担っており、同セミナーに勧誘されたことをきっかけとして、ホームオブハートのスタッフになり、未成年の子どもらも含めて、出家信者のような形態で共同生活をさせているホームオブハートの組織を支える枢要的な会社となっている。

 そのほかホームオブハートの関連会社にはいくつかあるが、仮に、株式会社と切り離した集団としてのホームオブハートを宗教団体のようなものだと考えると、まず教祖MASAYAこと倉渕透を頂く宗教団体ホームオブハートがあり、その集団の世俗的な現れ方として、株式会社ホームオブハートがあり、さらにホームオブハートの一事業部門として、トシオフィスを含めた各株式会社があるという構造にある。


2 ホームオブハートの考え方

 倉渕氏は、ホームオブハートのホームページにおいて表現しているところによると、「人間の悩みの最大の要因は観念である」「真に至福の人に戻るには、自我の観念の終焉とともにこそ、現われてくる」「エゴ的競争の人間界の観念から自由な人にのみ、真のしあわせがおこる」「エゴの観念や勝ち負けを強く習った人が苦しみ、そのような観念がない人がやすらぐ」「自分(我)のものが少ない人ほど素晴らしくなり、美しい人生となる」ということであり、いわゆる「生病老死」などの人の基本的な悩みは、エゴの産物であり観念であると教えたうえ、観念にとらわれると不幸になるなどと教え、結果的には、人間の持つ「理性」すべてを否定し、「自我」を否定する。
 これを具体的に言うと、病気で悩んでいる人に対しては、「病気で悩むこと自体が観念であり、エゴの産物であり、これを捨てないと、病気は治らない」と教える。これは明らかに病気で悩む人にとっては、詐欺、脅迫的行為となる。こうした論法は、様々な悩みを持つ人に共通であり、子どもたちが「学校に行きたい」「親と一緒に暮らしたい」と悩めば、そうした悩み自体が観念であり、エゴの産物であると、詐欺的脅迫的に責められることになる。


3 ホームオブハートのスタッフと共同生活の実態

 ホームオブハートのスタッフは現在判明しているだけで、6人の未成年者を含め40人弱であり、概ね3つの拠点(うち那須町内の二つはホームオブハートの拠点、黒磯市内の一つはトシオフィスの拠点)に分かれて、共同生活をしている。6人の未成年者に対しては、就学年限の児童でさえ学校に行かせず、児童虐待防止法2条の虐待が継続的になされている状態にある。
 
 子どもたちに対し、学校については、次のように教えている。「学校は危険な場所だ」「エゴ人間が集まっているところだ」「人間が汚染される」「池田小学校事件は、犯人より、あんな危険なところへ行かせる親が悪い」などと、常日頃から教え、仮に子どもが学校に行きたいと言おうものなら、当該子どもに対し、フィードバック(自己啓発用語で、「間違った考え方を正す行為」を意味する)と称する恫喝を行い、さらに当該親に対しても「そんな観念にした親が悪い」と責め立てる。そのためにさらに子どもは萎縮し、ホームオブハートの考え方に迎合するような精神状態にさせられている。
 このような状態も、明らかに児童虐待と評価できるものである。


4 ホームオブハートの違法性(民事、刑事を含む)

 次のようなものが考えられる(成人スタッフに対するものは、そのまま施設内の未成年者に対してもあてはまる)。
 
(1)MASAYAこと倉渕透氏を絶対的指導者として、あらゆる観念を捨て万物に貢献するために人生の全て(それまでの人間関係、家族関係、財産、仕事をなど一切)を捨てなければならないと教えている。その結果、ホームオブハートの施設内においては、人権はなく、日常的に自我を捨てさせるためと称して、暴言や暴力が行われている。

(2)セミナー参加者と内部スタッフに対して、常習的に、違法なマインドコントロールによる詐欺的脅迫的な精神操作の手法を使っている。そのためセミナー参加者に対し、セミナー代、会員券代、利用権代、商品代と称し、詐欺、恐喝とも評価可能な金銭収奪が行われている。

(3)金銭の支払えないセミナー参加者に対しては、「借りてはならない」と考えることも観念、「返さないといけない」と考えるもの観念であると教え、金銭に対する執着を捨てることを強要し、返済不可能なローンを借りさせたり、虚偽の理由による借り入れを起こさせたり、ホームオブハートを販売店として、そもそも商品の移転のない空クレジット契約を締結するなど、詐欺や私文書偽造とも評価できる悪質な金銭収奪を行っている。
 その結果、セミナー参加者の中には、数百万円から数億円に及ぶ金銭被害が生じ、多数の自己破産者を生み出している。

(4)ホームオブハートが、会員権代、利用権代と称するものも、それ自体、実現可能性のないものであり、詐欺の疑いがある。

(5)セミナー参加者やスタッフに、子どもとの別離や離婚など、著しい家族破壊および精神被害をもたらしている。

(6)スタッフ全員に、無償での長時間労働をさせることを運営の基礎としており、児童福祉法や労働基準法にも違反する著しい労働搾取を行っている。

(7)未成年者を、ホームオブハートのセミナースタッフの労働者として利用し、セミナーの手伝いをさせるなど、深夜に及ぶ長時間労働などをさせている。そのため就学年限の児童を学校に行かせない、外で遊ばせない、テレビや外の本を読ませないなどの、児童虐待防止法2条に定義する虐待を継続的に行っている。

(8)加えて、相手方トシオフィスから相手方ホームオブハートに対する金銭の還流について、脱税の疑いが存している。


5 終わりに

 ホームオブハートは、スタッフの人数が、40人を切る小規模な組織であったため、被害者の絶対数が少なく、これまで実態が明るみに出にくかった。しかし児童虐待と並行して、上記のような被害状況が継続的に発生している現状がある。

 未成年者らは、自ら生活の本拠を決定することができず、ホームオブハートに入信した母親の事実上の出家に伴わされる形で、ホームオブハートの関連施設で共同生活を送らざるをえない状況にあり、自己の意思により、一般社会から隔絶された相手方ら施設内での生活を選択したものとはいえない。
 
 また相手方らは、義務教育年齢にある未成年者を何ら正当な理由がないにもかかわらず学校に通わせず、また、これに代わる十分な学習の機会を全く与えていない。これは子どもの学習権や教育を受ける権利を著しく侵害するものであり、かかる状態が長く続けば、子どもらの健全な人格形成に重大な影響を与えることは明白であり、看過することができない。

 ホームオブハートで共同生活を営む子どもらは、共同生活を営む人間以外と接触する機会が全くなく、一般社会から完全に隔離された状況で生活しており、かかる隔絶された環境では健やかなる成長は期待できないどころか、社会的適応性を欠く人格が形成される危険性が大きい。
 
 そのため児童相談所や日弁連においては、子どもたちの福祉のためにも、可及的かつ早急な対処をお願いしたいと考えている。




以 上