宗教団体の責任を考える上での主な裁判例
(最終更新2003年1月14日)




A 信教の自由の限界一般論

1 最高裁昭和38年5月15日大法廷判決(判例時報335号11頁/判例タイムズ145号168頁)

 精神障害の治療のために加持祈祷を行い、その結果患者を心臓麻痺で死なせ、僧侶が傷害致死罪に問われた事例

 「憲法20条1項は信教の自由を何人に対してもこれを保障することを、同2項は何人も宗教上の行為、祝典、儀式または行事に参加することを強制されないことを規定しており、信教の自由が基本的人権の一として極めて重要なものであることは言うまでもない。しかしおよそ基本的人権は、国民はこれを乱用してはならないのであって、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負うべきことは憲法12条の定めるところであり、また同13条は、基本的人権は、公共の福祉に反しない限り立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする旨を定めており、これら憲法の規定は、決して所論のような教訓規定というべきものではなく、したがって、信教の自由の保障も絶対的無制限のものではない」


2 神戸簡裁昭和50年2月20日判決「神戸牧会事件」 (判例時報768号3頁、判例タイムズ318号219頁)

 建造物侵入等の事件の犯人として警察より追及を受けている高校生2名を、牧師が教会に約一週間にわたり宿泊させた行為につき犯人蔵匿罪に問われた事案について、正当な業務行為であるとして無罪を言い渡した事例

「正当な業務行為として違法性を阻却するためには、業務そのものが正当であるとともに、行為そのものが正当な範囲に属することを要するところ、牧会活動は、もともとあまねくキリスト教教師(牧師)の職として公認されているところであり、かつその目的は個人の魂への配慮を通じて社会へ奉仕することになるのであるから、それ自体は公共の福祉に沿うもので、業務そのものの正当性に疑いを差しはさむ余地はない。一方、その行為が正当な牧会活動の範囲に属したかどうかは、社会共同生活の秩序と社会正義の理念に照らし、具体的実質的に評価決定すべきものであって、それが具体的諸事情に照らし、目的において相当な範囲にとどまり、手段方法において相当である限り、正当な業務行為として違法性を阻却すると解すべきものである」


3 最高裁昭和56年4月7日判決「創価学会板まんだら判決」 (民集35巻3号443頁、判例時報1001号9頁、判例タイムズ441号59頁)

 「本件訴訟は、具体的な権利義務ないし法律関係に関する紛争の形式をとっており、その結果信仰の対象の価値又は宗教上の教義に関する判断は請求の当否を決するについての前提問題であるにとどまるものとされてはいるが、本件訴訟の帰趨を左右する必要不可欠なものと認められ」、「本件訴訟の争点及び当事者の主張立証も右の判断に関するものがその核心となっていると認められることからすれば」、「本件訴訟は、その実質において法令の適用による終局的な解決の不可能なものであって、裁判所法3条にいう法律上の争訟にあたらない」とされた事例


4 最高裁昭和63年6月1日判決「殉職自衛官の合祀申請行為の合憲性が争われた事例」 (民集42巻5号277頁、判例時報1277号34頁、判例タイムズ669号66頁)

 傍論において「私人間において憲法20条第1項前段及び同条2項によって保障される信教の自由の侵害があり、その態様、程度が社会的に許容し得る限度をこえるときは、場合によっては、私的自治に対する一般的制限規定である民法1条、90条や不法行為に関する諸規定の適切な運用によって、法的な保護が図られるべきである」と指摘した事例


5-1 東京地裁平成7年10月30日決定「オウム真理教解散決定事件」 (判例時報1544号43頁、判例タイムズ890号38頁)

 宗教法人オウム真理教に対し、宗教法人法81条1項1号、2号前段に基づいて解散が命じられた事例

5-2 東京高裁平成7年12月19日決定(判例時報1548号26頁、判例タイムズ894号43頁)

 4-1の即時抗告棄却決定

5-3 最高裁平成8年1月30日決定(判例時報1555号3頁、判例タイムズ900号160頁)  

 4-2の特別抗告棄却決定


6 東京地裁平成8年3月28日決定「オウム真理教破産決定事件」 (判例時報1558号3頁、判例タイムズ907号98頁)

 宗教法人オウム真理教が、その代表役員らの不法行為による損害賠償債務のため、債務超過・支払不能の状態にあるとされ、破産宣告が下された事例


7 東京高裁平成10年2月9日「輸血拒否訴訟控訴審判決」 (判例時報1629号34頁/判例タイムズ965号83頁)

 エホバの証人である成人の癌患者が、その手術に先立ち「輸血以外には救命手段が内事態になっても輸血しないでほしい」旨の意思表示を下が、医師がこれと異なり「輸血以外に救命手段がない事態になれば輸血する」という治療方針を採用している場合は、医師は、同患者に対してその治療方針を説明する義務があり、この説明義務を怠って手術をし、輸血をしたときは、これにより、同患者が被った精神的苦痛を慰謝する義務を負うと判断した事例


8 東京地裁平成13年6月13日判決「アレフ観察処分取り消し請求事件」(判例時報1755号3頁)

 1 無差別大量殺人行為を行った団体の規制に関する法律に定める観察処分の合憲性。
 2 上記法律に基づく観察処分の要件として具体的危険性を要するか(積極)。
 3 公安審査委員会が上記法律に基づいていした観察処分が適法とされた事例。





B 刑事事件


1 広島高裁昭和29年8月9日判決(高等裁判所刑事判例集7巻7号1149頁)

 病気治癒のための祈祷行為が恐喝罪にあたるとされた事例


2 最高裁昭和31年11月20日判決(刑集17巻4号302頁、判例時報335号頁11頁)*注1

 加持祈祷行為を詐欺恐喝により有罪判決を下した事例


3-1 神戸地裁昭和40年12月2日判決(愛知学院大学宗教法制研究所紀要第26号「寺社をめぐる刑事判例(追補)」7頁)

 宗教活動のためと称する募金行為が詐欺罪に問われた事例

3-2 大阪高裁昭和41年5月9日判決(愛知学院大学宗教法制研究所紀要第26号「寺社をめぐる刑事判例(追補)」26頁)

 3-1の控訴審判決

3-3 最高裁昭和41年11月22日判決(判例時報467号65頁/愛知学院大学宗教法制研究所紀要第26号「寺社をめぐる刑事判例(追補)」1頁)

3-2の上告審判決


4 青森地裁昭和59年1月12日判決(判例集未登載)*注2

 統一協会信者の行った霊感商法が恐喝罪にあたり、犯行を行った信者3名が有罪とされた事例

 

5 名古屋地裁平成8年6月18日判決(判例集未登載)

 宗教法人明覚寺の行ってきたいわゆる霊視商法に関し、霊能師役の女性を詐欺により有罪とした事例


6 富山地方裁判所平成10年6月19日判決(判例タイムズ980号278頁)注2−2

 宗教法人明覚寺の行ってきたいわゆる霊視商法に関し、僧侶が病気治癒を願う相談者に供養料を支払わせた行為につき、詐欺罪の成立が認められた事例

 *注2−2 判旨



7 名古屋地裁平成11年7月19日判決(判例集未登載)

 宗教法人明覚寺の行ってきたいわゆる霊視商法に関し、代表役員である教団最高幹部に、詐欺罪の成立を認め、懲役6年の実刑判決言い渡した事例

 「(1)憲法の保障する「信教の自由」の理念に照らすとともに、その性質上、宗教が超自然的な宗教活動の一環として行われる供養の効果(霊験)に対する評価は主観的な色彩を強く帯び、自然科学的な見地に基づく客観的な判定になじまないことを考慮すると、それが宗教活動の一環としてなされたものであって、その方法、結果等がいずれも社会通念に照らして相当と認められる場合には、供養の効果(霊験)を説いて供養料を求めるにあたって、能力や供養の効果等に多少の誇張が伴ったとしても、直ちに違法とは言えない。
  (2)しかし宇崎ら僧侶の本件行為は、そのような違法性を欠く場合にあたらない。すなわち深刻な悩み事を抱え、その解決を求めて満願寺を訪れた被害者らに対し、宇崎ら僧侶は、「霊能」があると偽り、「霊障」が悩み事の「根源」であると断定し、かつ「供養」によって悩み事を解決できる旨殊更に断言している。
  (3)しかもその過程では、実態は前記のとおりである「鬼業鑑定」や「流水灌頂」といった小道具類までも利用しながら研修等により習得した話術を駆使して、「供養」しなければ事態が一層悪くなるなどと執拗に説いて、被害者らの不安をいたずらに煽り、時には恐怖心すらも植え付けるなど心理的に追い詰める手法を用い、巧みに被害者らを錯誤に陥れている。
 宇崎ら僧侶が用いた方法は、甚だ巧妙かつ悪質であって、冷酷かつ卑劣と言っても過言ではなく、社会通念上相当として許容される範囲を大きく逸脱している。
 また、合計2,150万円もの多額の金銭を「供養料」の名のもとに騙し取り、被害者らに対し、物心両面にわたる深刻な被害を与えている。
 更に、満願寺ないし僧侶らに対し、巨額なノルマが課せられ、その「ノルマ」を達成させるべく、僧侶らに「供養料」の実績を含む活動状況を日々報告させて被告人自身の決済を得させるなどの成績管理が行われ、僧侶らの位階や給与額なども、もっぱらその成績の如何によって変動する体制が取られていた。
 これらの事情を総合すると、満願寺における宇崎ら僧侶の実態は、宗教活動と言うには程遠いものであって、多だ単に宗教に名を借り、宗教活動を装っていたに過ぎなかったといっても決して過言ではない。
 以上のとおり、宇崎ら僧侶が行った本件一連の詐欺は、宗教活動として社会通念上相当として許容される範囲を大きく逸脱しており、違法というべきである。」


8 青森地裁平成11年11月18日判決(判例集未登載―青森宝冠堂事件判決)

 青森市内の宝冠堂薬局を舞台に、「霊を払えば病気が治る」などと持ちかけて病気治療のために訪れた36人に対し、治療効果のない釜焚き(かまたき)という儀式を行い、総額約4700万を騙し取った、いわゆる「霊視商法詐欺事件」で、宗教擬似団体を主宰していた男性に、懲役6年6月の実刑判決を言い渡した事例。


 「実際には何ら病気などを治癒する効果が無い釜焚きによってそれが確実に治癒するかのように説いて多額の金銭を騙し取る行為が、宗教的行為などという名の下に許容される余地が無いことは論を待たず、病気などに思い悩んでいた被害者らには特段の落ち度は認められない。個々の被害者の被害額は最低でも一五万円で、被害合計金額は四七〇〇万円余りと高額に上っており、財産的被害の結果も重大である。本件は、難病を患うなどの苦しみを抱えた被害者らに、判示のとおり多額の財産的な損害を負わせたのはもちろん、釜焚きには病気などを癒す効果がないことを知った被害者らに与えた喪失感や絶望感も軽視できず、被害者らが被告人に対する厳重な処罰を希望しているのは当然である。
 被告人は、絶対的ともいえる宗教上の立場を利用して、一林に対して釜焚きを行って薬局に来た客から金銭を騙し取ることを具体的に指示して本件犯行を持ちかけており、その意味で釜焚きという一見宗教的な儀式に見せかけた本件詐欺は、被告人の存在なしには起こり得なかったものである。その上、被告人は、釜焚きを始めた一林に対して釜焚き等の売上をさらに上げるように強く働きかけるなどしており、ここまで被害が甚大になったのもそのような被告人による働きかけの結果であって、本件において中心的な役割を果たした被告人の責任は重大である。このように自ら本件を主謀して中心的な役割を果たしているにもかかわらず、被告人は、一林が勝手にやったことであるなどと不合理な弁解を弄して本件への関与を全面的に否認しており、謝罪はおろか一切の反省の態度すら見せていない。以上のことを考慮すると、被告人の刑事責任は甚だ重いといわねばならない。」



C 資金獲得型不法行為事件

1 名古屋地裁昭和58年3月31日判決(判例時報1081号104頁)

 難聴を治癒すると称して祈祷と療術を施し高額の料金を取得した行為に公序良俗に反する部分があると判定した事例


2 東京高裁平成4年3月26日判決「フリー事件」 (判例集未登載、解説として「国民生活」92年12月号)

 宇宙エネルギーの流れをとらえ、これに合わせて自らの内部にエネルギーの流れを作り出すことにより、不幸は解消され、真の幸福および健康を得ることができるとして、「フリー」と称する健康器具を法外な高値で販売することは、著しく欺瞞的、便乗的、暴利的で社会的に是認される営利活動の範囲を超え違法性を帯び、不法行為になるとして損害賠償を命じた事例


3-1 福岡地裁平成6年5月27日判決「統一協会献金違法判決」*注3(判例時報1526号121頁、判例タイムズ880号247頁、解説として日弁連消費者問題ニュース41号2頁)

 2人の女性に対する統一協会の信者らによる献金勧誘行為が違法であるとして統一協会に使用者責任を認めた事例

3-2 福岡高裁平成8年2月19日判決 (判例集未登載)

 3-1の控訴審判決で、統一協会の控訴が棄却された事例

3-3 最高裁平成9年9月18日判決(判例集未登載)

 3-1の上告審判決で、統一協会の上告が棄却された事例(確定)


4 神戸地裁平成7年7月25日判決「黄金神社事件」*注4(判例時報1568号101頁)

 黄金神社を主宰する被告が、宗教行為に付随して祈祷料その他の献金を勧誘する行為に不法行為責任を認めた事例


5 東京地裁平成8年6月5日判決(判例時報1578号64頁/確定)

 オウム真理教に対する土地建物の贈与の意思表示が脅迫に基づくものと判断され、その取り消しが認められた事例


6 高松地裁平成8年12月3日判決「統一協会献金違法判決」(判例集未登載/高裁で和解)*注5

 統一協会信者による霊感商法と同一の方法による献金の強要に関し、統一協会に対し、使用者責任を認めた事例


7-1 奈良地裁平成9年4月16日判決「統一協会献金違法判決」(判例時報1648号108頁、判例解説について、民事法情報132号48頁、日弁連消費者問題ニュース59号)*注6

 統一協会信者による霊感商法と同一の方法による入会や献金の強要に関し、統一協会に対し、使用者責任ではなく、民法709条の直接不法行為責任を認めた事例

7-2 大阪高裁平成11年6月29日判決(判例タイムズ1029号250頁、判例解説について、日弁連消費者問題ニュース72号)

 7-1の控訴審判決。但し統一協会の控訴を棄却したものの、原審が統一協会の直接の不法行為責任(民法709条)を認めた部分を変更し、使用者責任(民法715条)を負うと変更した。

7-3 最高裁平成12年1月21日判決(判例集未登載)

 7-1の上告審判決。統一協会の上告を棄却した。


8 東京地裁平成9年5月27日判決「邵錦宇宙パワー商法事件」 (判例時報1636号78頁/判例タイムズ942号267頁)

 自称宇宙パワーを有する中国人女性邵錦が、日本テレビの番組や出版物を通じ、宇宙パワーにより難病を治療すると称し、番組や出版物を見て来訪した難病患者らに対し、高額の対価を要求した行為を、難病患者らに対する詐欺行為に当たるとして、不法行為による損害賠償が認められた事例


9 大阪地裁平成9年7月28日判決「オウム真理教布施強要違法判決」 (確定/判例時報1636号103頁/判例タイムズ964号192頁)

 オウム真理教による信者らへの違法な布施強要行為によって、これに影響を受けた信者らが家族の財産を無断で持ち出して、オウム真理教に対し布施した行為が、持ち出した信者らの不法行為を形成するのみならず、オウム真理教については、宗教法人法11条1項、民法44条1項の責任を、オウム真理教の代表者である松本智津夫については、民法709条の責任(いずれも過失責任)を形成し、当該信者との関係では、民法719条1項の共同不法行為責任を負うとされた事例


10-1 東京地裁平成9年10月24日判決「統一協会献金違法判決」(判例時報1638号107頁)*注7

 統一協会信者による霊感商法と同一の方法による献金の強要に関し、統一協会に対し、使用者責任を認めたが、従来の判例と異なり慰謝料を認めなかった事例

10-2 東京高裁平成10年9月22日判決(判例時報1704号77頁)

 10-1の控訴審判決  慰謝料を否定した上記一審判決を覆し、慰謝料を認めた事例。

 統一教会の控訴を棄却した上、慰謝料に関する原告控訴部分については、原判決を覆した。

 すなわち、慰謝料に関しては、

 「一審被告の信者らによる一審原告に対する一連の献金勧誘行為は、社会的相当性を逸脱していると評価すべき違法と評価すべきであるが、これにより、一審原告は、不安心理を不当に増大させられたり、高額の献金を決意させられるなどして、相当の精神的苦痛をも加えられたものと認められ、右の精神的苦痛は、通常の財産権侵害における場合とは異なり、単に一審原告が違法に献金させられた献金相当額の返還を受けただけでは回復することができるものではないと認められる」と判示している。


10-3 最高裁平成11年3月11日判決(判例集未搭載)

 一審判決を覆した10-2の高裁判例を維持して統一協会の上告棄却を決定した事例


11 大阪地裁平成10年2月27日判決「霊視商法詐欺判決」(判例時報1659号70頁)

 生活上の悩みや苦しみについて相談を受けた僧侶らがした、相談者に供養料、祭祀料等の名目で金員を支払わせる行為が詐欺行為として違法であるとされた事例

 「被告明覚寺の僧侶らは、因縁や霊障を見極める特殊な能力はなく、ただ、供養料獲得のマニュアルやシステムに則って、執拗に因縁や霊障の恐ろしさを解いて原告らを不安に陥れ、供養料を支払いさえすれば不幸や悩みから逃れられると誤信した原告らに供養料名目で金銭を支払わせていたものと認めるのが相当であり、これは、詐欺行為として違法と言うべきである」とし、被告の使用者責任を認めた。




12 東京地裁平成10年4月23日判決「神慈秀明会事件」(判例タイムズ986号248頁、控訴審で和解)

 宗教法人神慈秀明会の元信者が、入信を勧めた元信者と神慈秀明会に対し、欺罔脅迫行為に基づいて献金させられたとして、その損害賠償を求めたが、「必ずしも相当であるとは言えない部分がある」と認定しながらも、損害賠償が認められなかった事例


13-1 仙台地裁平成11年3月23日判決「統一協会献金・物品勧誘違法事件」(判例集未登載)

 3人の女性に対する献金や人参濃縮液の販売行為が、不法行為にあたり、統一協会に使用者責任があるとした。

 「一般に、特定の宗教団体の信者が、当該宗教の教義を広める宗教活動の一環として、宗教活動に付随して、自己の属する宗教団体への献金を任意に求めたり、物品の購入を求めたりする行為は、その方法、態様及び金額等が社会的に見て相当なものである限りは、違法ということはできない。しかしながら、献金勧誘行為や物品購入勧誘行為が、その目的において、専ら利益獲得を目指すものであるなど、社会通念に著しく反し、宗教活動の一環あるいはそれに付随する行為とは評価できないものであったり、その方法、態様及び金額等において、ことさらに被勧誘者の不安を増大させ、被勧誘者の困惑を引き起こして多額の金銭を支出させたりするなど、社会通念上相当と認められる範囲を著しく逸脱するようなものである場合には、違法との評価を受けざるを得ない」として、献金勧誘行為だけではなく、物品勧誘行為の違法性を認めた事例。

13-2 仙台高裁平成13年1月16日判決

 13-1の判決につき、統一協会が控訴するとともに、原告敗訴分(慰謝料及び一部物品の敗訴部分)につき、原告側が付帯控訴したが、双方とも棄却され、原審が維持された事例。


14-1 福岡地裁平成11年12月16日判決「霊感商法違法事件」(判例時報1717号128頁)

 統一協会信者らが行う霊感商法により高額なつぼや人参茶等を売りつけられた被害者が、統一協会及びその物品販売会社である株式会社ハッピーワールドに対し求めた損害賠償が、いずれも使用者責任を理由に認容された事例。

 「宗教活動に藉口して専ら利益獲得を目的とし、勧誘された者の不安を増大させたり困惑を引き起こすような態様で行われ、社会的地位や資産等に照らして分不相応な多額の金員を支出させるなど、社会通念上相当と認められる範囲を著しく逸脱するものである場合には、右行為は違法となるというべきである」と判示している。   その上で、「原告Aの娘の目に障害があるのは先祖の非道な行為の因縁であると決め付け、さらに将来身内に障害者が生まれるなどと述べて、原告を不安に陥れることにより、それぞれが数百万円という高額な物品の購入を承諾させたものであり、その代金には、老後に備えるべき退職金の一部が当てられたものである。また原告Bに対し物品購入を勧誘した被告統一協会信者らは、夫の病気は先祖の悪性格の因縁であると決め付け、更に子供にも不幸が及ぶなどと述べて、同原告をして、因縁を断ち切るためには壺等を購入し、人参茶を飲んで血をきれいにするしかないと困惑させて、物品の購入を承諾させたものである。右各行為は、いずれも社会通念上相当と認められる範囲を著しく逸脱する勧誘行為であると言うべきである。そして、各原告に対し、物品購入を勧誘した被告統一協会信者らには、右違法行為をお行うにつき故意があったということができる」

 なおこの判決は、被告ハッピーワールドの消滅時効の抗弁について次のように判示している。参考になるので紹介する。

 「使用者責任において民法代七二四条の加害者を知るとは、被害者が、使用者並びに使用者と不法行為者との間に使用関係がある事実に加えて、一般人が当該不法行為が使用者の事業の執行につきなされたものと判断するに足りる事実をも認識することを言うと解される。・・・・(原告らは)いずれもいわゆる霊感商法により被害を受けたとして、原告ら訴訟代理人に本件訴訟を委任することとなったこと、被告ハッピーワールドと不法行為の実行者である外交員らのと間には複数の販売会社が介在しており、原告らにとって、弁護士への右委任までは、同被告と外交員らとの間に使用関係があるのか、原告らのへの不法行為が、同被告の事業の執行にきつきなされたものであるかについての判断は非常に困難であったことを認めることができる。そうすると同被告に対する損害賠償請求権の消滅時効の起算点は、右委任の時であったというのが正当である」と判示し、消滅時効の起算点は、原告弁護団に委した時点を時効の起算点と解し、被告ハッピーワールドの消滅時効の抗弁を排斥している。


14-2 福岡高裁平成13年3月29日判決「霊感商法違法事件」(判例集未搭載)
 
 14-1の控訴審判決で、統一協会の控訴が棄却された事例

14-3 最高裁平成13年10月16日判決
 
  14-1の上告審判決で、統一協会の上告が棄却された事例


15-1 東京地裁平成12年4月24日判決(判例集未登載)

 未亡人の女性に、多宝塔、人参液、釈迦塔を売りつけた行為が、不法行為にあたるとして、統一協会に使用者責任を認めた事例。

15-2 東京高裁平成12年10月30日判決(判例集未登載)

 15-1の控訴審判決。統一協会の公訴を棄却した。


16 一連の「法の華三法行判決」−平成13年3月29日、東京地方裁判所による破産決定が出されたので、控訴審判決が出されたのは@のみである。

@−1 福岡地裁平成12年4月28日判決「法の華三法行判決」(判例タイムズ1028号254頁、判例時報1730号89頁)

 足裏診断により研修費等の名目で多額の金銭を取られたとして、元修行者らが求めた損害賠償請求において、法の華三法行と教祖福永法源らの行為が、共同の不法行為にあたるものとして、709条、719条の責任が認められ、実損額と弁護士費用および慰謝料が認められた事例。

@−2 福岡高裁平成13年2月20日判決「法の華三法行福岡訴訟控訴審判決」(判例集未搭載)


A 秋田地裁平成12年11月10日判決「法の華三法行判決」(判例集未登載)

 法の華三法行と教祖福永法源の行為が、共同の不法行為にあたるものとして、709条、719条の不法行為責任が認められ、実損額である458万円と弁護士費用および慰謝料が認められた事例。

B 大阪地裁平成12年11月13日判決「法の華三法行判決」(判例時報1758号72頁)
 
 法の華、その教祖、信者から足裏診断等を介して害悪を告知されて研修に参加させられ、多額の出捐を強いられたとして求めた損害賠償請求が認容され


C 東京地裁平成12年12月25日判決「法の華三法行判決」(判例タイムズ1095号181頁)

 足裏診断により研修費等の名目で多額の金銭を取られたとして、元修行者らが求めた損害賠償請求において、法の華三法行と教祖福永法源らの行為が、共同の不法行為にあたるものとして、709条、719条の責任が認められ、実損額と弁護士費用および慰謝料が認められた事例。

 「憲法で保障された信教の自由は、それが内心の信仰にとどまる限り私法秩序上違法と評価されることはないが、宗教的行為として外部的な行動を伴い外界との交渉を生ずる場合には、その行為が、いかに当該宗教上の教義に則り、教義上では正当化されるものであったとしても、市民法の定める法律関係からみて社会的に是認し難い違法なものであると評価され、民法上の不法行為に該当するとされることがあるのは当然である。
 ところで、内心における信仰の外部的発露である宗教的行為について、市民法的立場からその違法性の判断をするに当たっては、もともと宗教が超自然的、超人間的本質の存在を確信し、これを畏敬崇拝する心情と行為と解釈され得るものであることを前提とすれば、信者の勧誘態様や勧誘時に説かれる内容が、科学的知見に照らして荒唐無稽であるとしか理解し得ないものであったり、宗教上の物品や行為に対する支出が経済取引上の対価関係と比較して高額であると評価されるものであっても、その一事をもって直ちに違法性を有するということはできないし、その際に先祖の因縁話や信者に対する害悪の告知と思われる行為があったとしても、許される場合があるというべきである。
 しかしながら、勧誘の際に告知される先祖の因縁話や害悪の内容が極めて具体的であって、相手方の不安を過度にあおり立てるようなものであったり、逆に、科学的には保証し得ない具体的な利益を約束して相手方に過度の期待を持たせるような場合であって、その勧誘の方法が執拗であり、しかも相手方に熟慮の機会を与えることもなく、その結果として、相手方の地位、資力、年齢等からみて一般的には高額であると考えられる額の金員の支出をさせたような場合には、そのような勧誘は社会的にみて許容することができない違法な行為というべきであり、不法行為に該当するというべきである。」

 「 被告法の華において、原告らを勧誘するに当たって、宗教性を秘匿し、詐欺的・脅迫的な態様で、執拗に勧誘し、被告法の華の研修に参加し研修費を払うか否かを即断・即決・即納を迫り、過酷な研修を体験させ、高額な支出をさせ、その金銭を被告福永らにおいて自己の利益を図るために用いるなどしているのであるから、被告法の華の活動は、少なくとも右のような方法で原告らからの高額な支出を求めた点で、社会通念上相当性を逸脱しており、違法性を有することは明らかであるといわなければならない。」



17 東京地裁平成12年9月27日判決「二穣会事件」(判例タイムズ1050号145頁)

  「二穣会」を主宰する平林重美子より、「このままでは平成14年に死ぬ」などと言われて、総額で約1億2500万円を提供させられた主婦が、平林重美子ら他2名を被告として、実損額に加え、慰謝料、弁護士費用の損害賠償を求めた事案で、「被告重美子の行為は、その手段において卑劣であり、その結果も重大であって、社会的相当性を逸脱することは言うまでもなく、意図的に人を欺罔すると言う点では、詐欺と選ぶところがないと評価するほかない」として、被告平林重美子に対し、不法行為損害賠償請求を認めたが、他の2名に対する不法行為損害賠償と、平林重美子に対する慰謝料請求が否定された事例。


18-1 東京地裁平成13年1月31日判決「ヤマギシ会判決」(判例集未登載)
18-2 東京地裁平成14年2月27日判決「ヤマギシ会判決」(判例時報1792号63頁)
 ヤマギシ会(ヤマギシズム生活実顕地調整機関)に全財産(約2億5000万円)を引き渡してその活動に参画した女性が、脱退した後、その財産の返還を求める請求について、財産の出捐が、一種の出資したうえ、返還を一切認めないという不返還約款は、公序良俗に反し無効になるとし、出資額及び参画期間等の諸事情を考慮して、1億円の限度で返還が認められた事例。1審判決は約2億4000万円の返還を認めたが、控訴審では、返還額が減額された。

 なお山岸会には、参考判例として、刑事事件であるが、脅迫、強要、不法監禁、暴力行為等処罰に関する法律違反各被告事件として、津地方裁判所昭和36年4月28日判決(判例時報262号4頁)がある。


19-1 長崎地裁平成13年9月26日判決「泰道(宝珠宗宝珠会判決」(判例集未登載)
19-2 佐賀地裁平成14年2月15日判決「泰道(宝珠宗宝珠会判決」(判例集未登載)
19-3 福岡地裁平成13年9月26日判決「泰道(宝珠宗宝珠会判決」(判例集未登載)



D 妨害、攻撃型不法行為事件


1 横浜地裁平成5年6月30日判決(判例時報1473号117頁、判例タイムズ841号186頁)

 オウム真理教の被害対策弁護団の所属弁護士が、教団の農園予定地を撮影した際、信者よりカメラを奪われフィルムを抜き取られたことにつき、使用者としての損害賠償責任が認められた事例

1-2 東京高裁平成6年1月24日判決

 1の控訴審判決

1-3 最高裁平成6年7月14日判決

 1の上告審判決


2-1 福岡地裁平成6年12月14日判決(判例集未登載)

 オウム真理教外報部が主催した記者会見の席上で、青山吉伸オウム真理教顧問弁護士(当時)らが、オウム真理教被害対策弁護団の所属弁護士を誹謗中傷する発言を行ったことにつき、顧問弁護士の名誉棄損を認め、オウム真理教に対し使用者責任を認めた事例」

2-2 福岡高裁平成7年12月26日判決(判例集未登載)

 2の控訴審判決(顧問弁護士は控訴取り下げ/オウム真理教部分については上告せず確定)


3 東京地裁平成7年10月31日判決(判例タイムズ922号268頁)

 弁護士が、霊感商法被害の救済のために、被害者を代理して統一協会信者に内容証明郵便を発し、また、同信者からの懲戒申立事件について弁明書を提出した行為が、いずれも名誉棄損にあたらないとして、同信者からの請求を棄却した事例


4 東京地裁平成8年12月20日判決(幸福の科学対講談社事件)(判例時報1521号44頁)

 幸福の科学の信者による講談社に対する抗議行動の違法性を認め、幸福の科学に対し使用者責任による損害賠償責任が認められた事例


5 東京地裁平成9年2月24日判決(判例時報1626号90頁)

 多くの研究者がガンの早期発見に有用でないと報告している腫瘍マーカー総合診断法を実施して、癌でもないのに癌だと判定し、不安を感じた患者らが治療を求め、かつ高額の治療費を負担させられたなどの行為について、「命を弄ぶ霊感商法」などと告発した週刊誌の記事に対し、記事を掲載された医師及び病院が求めた名誉棄損に基づく損害賠償等の請求が、棄却された事例


6 東京地裁平成9年4月21日判決(判例タイムズ969号223頁)

 大阪毎日放送にレギュラー番組を有する、ジャーナリスト大林高士こと大林頌幸氏が、同番組内で、「法の華三法行」の被害実態を取り上げることとし、同教団に取材申し込みをしたところ、教団の広報委員会は、『取材を拒否する』としたうえで、同ジャーナリストを誹謗中傷する文書を同番組宛にファクスした。
 この行為について、テレビ局に送付した行為が公然性に欠けず、名誉毀損を構成するとし、宗教法人法の華三法行に対し、709条の不法行為責任を認めて、大林氏に対し金40万円(慰謝料30万、弁護士費用10万円)の支払を命令した事例


7 名古屋地方裁判所平成9年9月5日判決(判例集未登載/高裁で和解)

 統一協会の信者らが、牧師に対し街宣活動等を通じて誹謗中傷を繰り返し、また杉本牧師の妻に対し暴行を行った事件で、『街宣は教団の事業に属する布教活動として行われ、暴行も密接な関連を持つ』として統一教会の使用者責任を認め、信者と統一協会に対し名誉棄損等の損害賠償を認めた事例


8 名古屋地方裁判所平成11年8月4日判決(判例集未登載)

 有限会社ライフスペースらが、ライフスペースを考える会とその代表者らを訴え、会の解散などを求めた事例について、「ライフスペースを考える会には当事者能力がないとして却下するともに、会代表者らに対する訴えについては、本訴提起が「訴訟の濫用に当たる可能性もあると認められる」として、民事訴訟法140条に基づき、却下判決を下した事例」


9 宮崎地方裁判所平成12年5月29日判決(宮崎資産家拉致事件判決/判例時報1733号94頁)

 「オウム真理教の教祖及び信徒が布施名目で教団に多額の金員を提供させるため、施設に拉致し、これを隠蔽するため不当な訴訟を提起する等の行為を違法として、損害賠償責任が認められた事例」




E 信者、構成員収奪型の事件


1 統一協会の合同結婚式後に入籍した婚姻の無効を認めた審判・裁判例 全国各地で既に40例を越える裁判例がある。公刊物に掲載された代表的な例として

@-1 福岡地裁平成5年10月7日判決(判例時報1483号102頁、判例タイムズ831号)

 統一協会の合同結婚式に参加し、協会の指示により婚姻届をした日本人女性から、婚姻意思の不存在を理由として提起された日本人男性に対する婚姻無効の訴えが認容された事例

@-2 福岡高裁平成7年10月31日判決(判例集未登載)

 1-1の判決を不服として控訴した日本人男性の控訴を棄却した事例

@-3 最高裁平成8年4月25日付判決(判例集未登載)

 1-2の判決を不服として上告した日本人男性の上告を棄却した事例

A 名古屋地裁7年2月17日判決(判例時報1562号98頁)

 日本国内に住所を有する日本人の統一協会元信者が、大韓民国国籍を有し同国に住所を有する者を被告として提起した婚姻無効確認訴訟について、我が国の裁判管轄が認められた事例」


2 元信者による未払い賃金請求事件
 松山地裁今治支部平成8年3月14日判決 (労働法律旬報1386号62頁、本判決の解説については同1386号18頁)

 仏教系宗教団体の元信者が、以前勤めていた従業員2〜3人の小規模寺院に、時間外及び深夜労働に対する賃金を請求した事案について、被告寺院の宗教上の奉仕だとの主張を排し、「労基法の適用の可否を検討するに際し、個々人の内心の意思(宗教的な信念)を詮索した結果によって判断することは、かえって宗教尊重の精神に反すると解されるところであるから、外形的、客観的な事情の有無によって判断するのが相応である」とし、当該事案において信者の労働者性を認め、未払い賃金の支払いを命じた事例


3 いわゆる「伝道の違法」を問う裁判例

@ 名古屋地裁10年3月26日判決「名古屋青春を返せ訴訟第1審判決」 (判例時報1679号62頁、判例タイムズ989号160頁、高裁で和解終了)

 統一教会の勧誘、教化行為により、信仰を教え込まれて宗教活動に従事させた行為が、元信者の人格権と財産権に対する不法行為とは言えないとして、損害賠償請求が認められなかった事例。*注8


A-1 岡山地裁平成10年6月3日判決「岡山青春を返せ訴訟第1審判決」(判例集未搭載。判決要旨は、http://www.asahi-net.or.jp/~am6k-kzhr/news55-1.htm参照)

 「統一協会の信者らによるいわゆるマインドコントロールなどの違法な勧誘、教化行為により、被告法人に入会させられ、貴重な青春を奪われ、違法な献金勧誘システムにより献金を強要されたり、違法な商品販売活動に従事させられるなどして、宗教選択の権利や人格権を侵害されたとして慰謝料等の損害賠償を求めたが、認められなかった事例」


A-2 広島高裁岡山支部平成12年9月14日判決―上記Aの1の控訴審判決((判例時報1755号93頁)。判決全文はhttp://www.asahi-net.or.jp/~am6k-kzhr/a0009han.htm参照)。

 A-1の判決を取り消し、原告に対し、実損害額72万5000円に加え、金100万円の慰謝料請求を認めた事例。

 「宗教団体が、非信者を勧誘・強化する布教行為、信者を各種宗教活動に従事させたり、信者から献金を勧誘する行為は、それらが、社会通念上、正当な目的に基づき、方法、結果が、相当である限り、正当な社会活動の範囲内にあるものとと認められる。しかしながら、宗教団体の行う行為が、専ら利益獲得等の不当な目的である場合、あるいは宗教団体であることをことさらに秘して勧誘し、徒らに害悪を告知して、相手方の不安を煽り、困惑させるなどして、相手方の自由意思を制約し、宗教選択の自由を奪い、相手方の財産に比較して不当に高額な財貨を献金させる等、その目的、方法、結果が、社会的に相当な範囲を逸脱している場合には、もはや、正当な行為とはいえず、民法が規定する不法行為との関連において違法であるとの評価を受けるものと言うべきである。
 而して、前記認定したとことによれば、一の2の一連の行為は、個々の行為を見ると、一般の宗教行為の一場面と同様の現象を呈するものと言えなくもないもないものもあり、また控訴人は主観的には自由意思により決断しているようにみえるが、これを全体として、また客観的にみると、被控訴人の信者組織において、予め個人情報を集め、献金、入信に至るまでのスケジュールを決めた上で、その予定された流れに沿い、ことさらに虚言を弄して、正体を偽って勧誘した後、さらに偽占い師を仕立てて演出して欺罔し、徒に害悪を告知して、控訴人の不安を煽り、困惑させるなどして、控訴人の自由意思を制約し、執拗に迫って、控訴人の財産に比較して不当に高額な財貨を献金させ、その延長として、さらに宗教選択の自由を奪って入信させ、控訴人の生活を侵し、自由に生きるべき時間を奪ったものと言わざるを得ない。
 なお本件においては、控訴人がマインドコントロールを伴う違法行為を主張していることから、右概念の定義、内容等をめぐって争われているけれども、少なくとも、本件事案において、不法行為が成立しているかどうかの認定判断をするにつき、右概念は道具概念としての意義をもつものとは解されない(前示のように、当事者が主観的、個別的には自由な意思で判断しているように見ても、客観的、全体的に吟味すると、外部からの意図的操作により意思決定をしているとの評価される心理状態をもって「マインドコントロール」された状態と呼ぶのであれば、右概念は説明概念にとどまる)。
 そうすると、本件において、被控訴人の信者組織のメンバーが周到に計画したスケジュールに従って、有機的に連携してなした一連の行為が宗教行為と評価しるととしても、その目的、方法、結果が社会的に相当と認められる範囲を逸脱しており、教義の実践の名のもとに他人の法益を侵害するものであって、違法なものと言うべく、故意による一体的な一連の不法行為と評価されることになる。」

 その上で、

 「控訴人は、被控訴人の信者らが有機的一体としてなした不法行為によって、 宗教選択の自由を不当に侵害されたうえ、その人格権を侵害され、正常な日常生活を回復した後で回顧すれば、霊感商法等の反社会的経済活動をする集団に心ならずも所属しその一員として活動することとなったことにつき自責の念に苛まれ、被控訴人の信者組織からの勧誘行為に端を発して棄教するまでの間、貴重な人生の日々を控訴人にとっては後悔のみ残る時間としてしか過ごせないことを余儀なくされたものとして、絶え難い悔しさを残していることが認められるところ、控訴人を慰謝するには100万円を下回らない慰謝料をもって相当とすべきことは明らかである」 

A-3 最高裁平成13年2月10日判決(判例集未搭載)

―上記Aの2の上告審判決。統一協会側の上告を棄却するとともに、上告を不受理とした事例。


B札幌地方裁判所平成13年6月29日判決(判例集未搭載)

 マインドコントロールによる勧誘で入信させられ信教の自由を侵害されたとして、北海道内や首都圏在住の元信者ら20人が統一教会など2者に慰謝料など総額9157万円の損害賠償を求めた事案で、「勧誘は財産の収奪と無償の労役提供という不当な目的で組織的・体系的に行われ、信仰の自由を侵害する恐れのある違法な行為があった」として、同教会に2952万円の支払いを命じた事案。

 以下は裁判所が配布した判決の要旨である。

判決骨子
 被告世界基督教統一神霊協会の協会員による原告らに対する入教、献金等の勧誘は、原告らの財産の収奪と無償の労役の享受及び原告らと同種の被害者となるべき協会員の再生産という不当な目的に基づく、社会的相当性の範囲を逸脱した方法による違法な行為であるから、同被告は、これによって原告らが被った物的及び精神的損害を賠償する義務がある。
判決要旨
1 特定の宗教の信者が、宗教団体の加入を勧誘し、献金を受け、宗教団体の活動への参加を求めることは、信教の自由により保障された宗教活動であるが、それが、外形的客観的に見て不当な目的に基づくもので、方法や手段が相当と認められる範囲を逸脱し、その結果相手方に損害を与えるおそれがあるときには、相手方が任意に承諾した場合でも、相手方の不当な目的を知らない以上は、違法性がある。

2 被告世界基督教統一神霊協会の協会員による原告らに対する入教、献金等の勧誘は、原告らの財産の収奪と無償の労役の享受及び原告らと同種の被害者となるべき協会員の再生産という不当な目的のもとに、組織的体系的目的的なプログラムに基づき、同被告の教義であることをことさらに秘匿し、あるいは、その宗教教義に名の下に、人の弱みにつけ込み、宗教教義とは直接関連のない不安を煽り立て、畏怖困惑させるなどしして宗教的救いを希求する心情をかきたてる過程で行われたものであって、これは社会的に見て相当性が認められる範囲を逸脱した方法によるもので、原告らの信仰の自由等を侵害するおそれのある違法な行為であるあるから、同被告は、これによって原告らが被った物的損害及び精神的損害を賠償する責任がある。

 判決要旨につき、原告側代理人の郷路征記弁護士のサイトを参照。

C 準備中





F 家族破壊型の事件



1 人身保護事件
@ 徳島地裁昭和58年12月12日判決(判例時報1110号120頁)

 遊学先から親元に連れ戻された未成年者に対し、統一協会信者からの人身保護請求を棄却した事例

A-1 大阪地裁平成2年9月7日判決(判例時報1366号96頁、判例タイムズ739号223頁)

 オウム真理教の信者の母親が、A(14歳9カ月、中3)、B(12歳8カ月、中1)、C(8歳4カ月、小2)の子供3人を連れて、オウム真理教の富士山総本部道場に居住していることが、Cについては意思能力がないことを理由に、Bについては、意思能力は肯定できるが、自由意思に基づいて監護者の下にとどまっているとはいえない特段の事情があることを理由に、人身保護法に言う拘束にあたるとされた事例

A-2 最高裁平成2年12月6日判決(判例時報1374号42頁、判例タイムズ751号67頁)

 2-1の上告を棄却した事例


2 親権者変更事件
 札幌家庭裁判所平成8年11月27日審判(判例集未登載)

 妻がヤマギシ会に入会したことをきっかけとして離婚した前夫が、14歳と11歳の2人の子供をヤマギシ会の実顕地に預けた前妻に対し、親権者変更の申し立てをし、これが認容された事例


3 親権行使妨害事件

 大阪地裁平成9年7月28日判決(判例時報1636号103頁)

 被告松本智津夫の指示の下、組織的にオウム真理教幹部らが子供の所在を隠すなど、原告の4人の子供に対する親権の行使を妨害した行為について、松本智津夫被告に対して、民法709条に基づき、オウム真理教に対しては宗教法人法11条1項、民法44条1項に基づき、損害賠償責任を認めた事例


4 準禁治産者申し立て事件
@-1 横浜家庭裁判所昭和61年12月12日審判(判例集未登載)

 統一協会に多額の献金を続ける信者に対し、親族から申し立てられた準禁治産者、保佐人選任事件について、審判前の保全処分を認めた事例」

@-2 東京高裁昭和62年3月30日決定(判例集未登載)

 1-1の抗告審決定。原審保全処分決定に対し、即時抗告をすることは法で認められていないとして、統一協会信者からの抗告を不適法却下し、傍論で「なお、抗告人が宗教上の目的のためにその財産を消費しようとしていることは、それ自体では浪費性を阻却するものではない」と言及した事例

A 東京家裁八王子支部昭和63年2月8日審判(2例/判例集未登載)

 統一協会に多額の献金を続ける信者夫妻に対し、各親族から申し立てられた準禁治産者、保佐人選任事件について、審判前の保全処分を認めた事例

B 東京家裁平成4年6月8日審判(判例集未登載)

 統一協会に多額の献金を続ける信者に対し、親族から申し立てられた準禁治産者、保佐人選任事件について、審判前の保全処分を認めた事例

 C 横浜家裁川崎支部平成5年11月12日審判(判例集未登載)

 統一協会に多額の献金を続ける信者に対し、親族から申し立てられた準禁治産者、保佐人選任事件について、審判前の保全処分を認めた事例

D 名古屋家裁平成9年8月13日審判(判例集未登載)

 統一協会に多額の献金を続ける信者に対し、親族から申し立てられた準禁治産者、保佐人選任事件について、審判前の保全処分を認めた事例

E 東京家裁平成9年9月29日審判(判例集未登載)

 統一協会に多額の献金を続ける信者に対し、親族から申し立てられた準禁治産者、保佐人選任事件について、審判前の保全処分を認めた事例

F 甲府家裁平成10年9月2日審判(判例集未登載)

 祈祷師の主催する団体に多額の献金を続ける信者に対し、親族から申し立てられた準禁治産者、保佐人選任事件について、審判前の保全処分を認めた事例


5 名の変更事件
@ 東京地方裁判所八王子支部平成6年12月8日審判(判例集未登載)

 宗教団体の幹部がつけた元信者の子の名前について、名前の変更を認めた事例」

6 離婚事件
@ 東京地裁平成9年10月23日判決(判例タイムズ995号234頁)注9

 「エホバの証人を信仰する妻に対する夫からの離婚請求が認められた事例」

A 名古屋高等裁判所平成10年3月11日判決(判例時報1725号144頁)
 
 「妻が「エホバの証人」に入信したため婚姻生活が回復し難いまでに破綻したとして夫からの離婚請求が認められた事例」


7 その他
@-1 横浜地裁平成11年2月26日判決(判例時報1700号87頁)
 敗訴
 「妻が、血の塩キリスト港南教会の伝道師となるため、未成年の子を連れて家出したこと等につき、教会及び牧師による、いわゆるマインドコントロールにより妻の自立的判断を失わせたとして、夫及び長男が家庭破壊行為等の不法行為に基づく損害賠償等を求めた請求が棄却された事例」

@-2 東京高等裁判所平成11年12月16日判決(判例時報1742号107頁)
 逆転勝訴
 「一 血の塩キリスト港南教会の牧師が、告白の内容を漏えいした行為が、不法行為を構成するとして、牧師及び同人が代表する教会の損害賠償責任が認められた事例。二 教会及び牧師に対する親権に基づく子らとの面接交渉の妨害禁止請求が認められた事例」









G その他責任が認められた事件


1 大阪地裁平成8年4月22日判決(判例時報1585号66頁)

 医師が患者に明確な根拠もなくガン告知をしたうえで、平和教会と称する新興宗教の護符を患部に張るよう勧めた行為等が不法行為として損害賠償が認められた事例


2 甲府地裁平成9年1月28日判決(判例集未登載)

 被告松本智津夫らが、上九一色村富士ケ嶺地区の住民の生活の平穏を著しく害したとして、住民らの人格権を根拠に、不法行為責任が認められた事例


3-1 京都地裁平成10年2月13日判決(判例時報1661号115頁)

 マンションの一室が賃貸され、オウム真理教の信者らが教団施設として使用する行為が、区分所有者の共同利益に反するとして、区分所有権に基づく賃貸借契約の解除及び占有部分の退去明け渡し請求がいずれも認められた事例

3-2 大阪地裁平成10年12月17日判決(判例集未登載)

 3-1の控訴審判決


4 大阪地裁平成10年2月27日判決(判例集未登載)

 被告の指定するものを右手で指し、同時に左手の人差し指と親指で輪を作り、この輪を被告が開き、その開き具合いによってガン細胞の数を判断するというOリングなどの施術につき、「被告は、被告の行う施術等がガンの治療に何の効果もないことを知りながら、効果があるかのように装い、末期ガンの症状に苦しみながら、藁にもすがる心情にあった原告を欺」いた行為が、不法行為にあたるとされた事例


5-1 京都地裁平成10年11月27日判決(判例時報1690号99頁)

 自己啓発セミナーの研修中に行われた風呂行と呼ばれる修行中に熱中症で死亡した事故について、セミナーを主催した有限会社ライフスペースに対し、不法行為責任を否定したものの、安全配慮義務に基づく債務不履行責任を認め、遺族である両親に、約1400万円の支払いを命じた事例。

5-2 大阪高裁平成11年7月23日(判例集未登載)

 5-1の敗訴判決に対し、有限会社ライフスペースの控訴が棄却された事例。





H 宗教団体の組織


1 東京高裁平成6年3月23日判決(判例時報1507号133頁、判例タイムズ870号267頁)

 檀徒から宗教法人である寺及び権利能力なき社団である壇信徒会に対する会計帳簿等の閲覧・謄写請求が、宗教法人法25条2項を根拠に肯定された事例(改正前の宗教法人法制下の事例)


2 静岡地裁沼津支部平成9年10月29日判決(判例集未登載)

 既に被害回復を受けた宗教法人法の華三法行の元信者が、同法人に対し求めた宗教法人法25条3項に基づく会計帳簿等の閲覧・謄写請求が否定された事例(*注・25条3項は、平成7年の宗教法人法改正で新たに創設された規定)

 「『信者その他の利害関係人』には、現に宗教法人と継続的な関係を有し、その構成分子となっている寺院の壇信徒・教会の信徒のほか、宗教法人と取引関係のある債権者・保証人等、宗教法人の行為により損害を被った者等が含まれるが、信者であってもその後脱退等により信者でなくなった場合、あるいは宗教法人に対し債権を有していても、その後に弁済等により消滅した場合には、元信者あるいは元債権者はもはや宗教法人の適正な管理運営の実現のための閲覧について利益を有しなくなったというべきであるから、右『信者その他の利害関係人』には含まれないと解するのが相当である。また宗教法人の行為により損害を被った者についても、その後に損害を回復することができた場合には、右と同様に解すべきである」





I 海外の判決



1 米カリフョルニア州最高裁判所1988年10月17日判決「モルコ対統一協会事件」 (Molko v. Holy Spirit Association for the Unification of World Christianity, ―46 Cal.3d 1092,762 P.2d 46,252 Cal.Rptr.122(Cal.1988)注10(翻訳を日弁連所蔵))

 「統一協会の詐欺的勧誘行為に不法行為責任を負わせることは、信教の自由を保障した憲法に抵触しないとして、元信者の統一協会に対する請求を却下した略式判決を取り消し、事件を事実審に差し戻した事例」

注10 準備中


2 米連邦最高裁1990年4月17日判決 (本判例の解説につき、ジュリスト1036号113頁/1993年12月15日号)

 宗教的儀式において禁止された薬物を使用する行為が、『信仰を理由に一般的に適用される法律の義務、社会的責任を免れることはできない』とされた事例


3-1 仏リヨン地方裁判所1996年11月22日判決(本判決の紹介につき、毎日新聞97年03月20日付朝刊、部分訳を日弁連所蔵)

 リヨンにあるサイエントロジーの施設「ダイアネティックセンター」に通っていたパトリス・ビック(男性、当時31才)が、1988年に投身自殺した事件において、サイエントロジーのマインドコントロール的手法を認定して、同教会の信者らに対し詐欺罪等を認め、施設関係者のマジエ被告(元・同教会リヨン支部長)に対しては、詐欺罪と意図しない殺人の罪で禁固3年(18ヶ月について執行猶予)と50万フランの罰金の有罪判決、14名について詐欺などの罪で有罪判決を下した事例


3-2 仏リヨン高等裁判所1997年7月28日判決(本判決の紹介につき、毎日新聞97年8月28日付夕刊、部分訳を日弁連所蔵)

 サイエントロジーは、宗教という名称を主張しうるし、法律の範囲内で自由に伝道あるいは入信勧誘を含む活動ができるとしたものの、「合法的な宗教であっても、個人が営利目的のために使い、結果として第三者を欺くようなこと」までも認められているわけではなく、「適法に組織された教会でも、営利事業を隠蔽(いんぺい)することがありうる」とし、マジエ被告を禁固3年の執行猶予刑と50万フランの罰金に、また同教会のメンバー15人のうち5人を有罪とした事例





(別 紙)

注1 

 祈祷師が自分の祈祷に効能がないことを知りつつ、顔のあざの相談を持ちかけた主婦に、「御祈祷で取ってあげる」「神様にお願いしておきながら、勝手に参詣を中止しては神様の罰が当たる」「神様の力で顔を真っ黒にする」などと脅して祈祷料を交付させた事件。
 祈祷師は詐欺及び恐喝に問われ、最高裁昭和31(1956)年11月20日判決は次のような理由から祈祷師を有罪に処した。

 「祈祷師が自己の行う祈祷が実は全然治病の効能なく、また、良縁、災難の有無、紛失物のゆくえを知る効もないことを信じているにかかわらず、如何にもその効があるように申し欺いて祈祷の依頼を受け、依頼者から祈祷料等の名義で金員の交付を受けたときは詐欺罪を構成するものというべきである」


注2

 いわゆる霊感商法の手口を使い、大理石の壺などを販売していた統一教会の信者2人が、47歳の主婦に1200万円を支払わせた事件。

 2人は主婦をホテルの一室に約9時間半にわたって軟禁し、「おろした子どもや前夫が成仏できず苦しんでいる。成仏させないと今の夫と子に大変な事が起こる。全財産を投げ出しなさい」などと迫った。

 青森地裁弘前支部昭和59(1984)年1月12日判決は、行為が恐喝罪にあたるとして懲役2年6月(執行猶予5年)の判決を下した。


注3

 統一協会がその信者らを駆使して行ってきた霊感商法に関する初めての判決。

 判決は、信者らの献金強要行為の違法性について次のように判断し、統一教会の使用者責任を認めている。

 「一般に特定宗教の信者が存在の定かでない先祖の因縁や霊界等の話を述べて献金を勧誘する行為は、その要求が社会的にみても正当な目的に基づくものであり、かつ、その方法や結果が社会的通念に照らして相当であるかぎり、宗教法人の正当な宗教活動の範囲内にあるものと認めるのが相当であって何ら違法ではないことはいうまでもない。しかし、これに反し、当該献金勧誘行為が右範囲を逸脱し、その目的が専ら献金等にようる利益獲得にあるなど不当な目的に基づいていた場合、あるいは先祖の因縁や霊界の話等をし、害悪を告知して殊更に相手方の不安をあおり、困惑に陥れるなどのような不当な方法による場合には、もはや当該献金勧誘行為は、社会的に相当なものといい難く、民法が規定する不法行為との関連において違法の評価を受けるものといわなければならない」

 判決は、統一協会信者らが行った献金強要行為について、次のような理由から統一協会の使用者責任を認め、次のように判示している。

 「非営利団体である宗教法人の信者が第三者に損害を与えた場合に、その信者が右宗教法人との間に被用の地位にあると認められ、かつ、その加害行為が宗教法人の宗教活動などの事業の執行につきなされたものであるときは、右宗教法人は右信者の加害行為につき民法715条に定める使用者責任を負うものと解するのが相当である。なぜなら、宗教法人に民法715条の適用を排除する合理的理由はなく、また、代表役員その他の代表者の行為による宗教法人の損害賠償責任を定めている宗教法人法11条の規定も宗教法人につき民法715条の適用を排除するものとは解されないからである」


注4

 妻が夫婦関係の不和などによる心労のために精神状態が不安定になり異常な行動を取るようになった。そこで夫(原告)は知人の紹介で「黄金神社」を訪問して救いを求めた。黄金神社の代表者(被告)は夫に対し、「妻の異常は種々の因縁によるものであり、これを取り除かないと取り返しのつかない結果になる」と信じ込ませ、妻を正常に戻すためには、妻の精神状態の回復を願う祈祷や夫の愛人の除霊などを行う必要があると説いた。夫は極度の不安に陥り、短期間に祈祷料の名目で1038万5000円の現金と金塊を支払った。
 神戸地裁が次のように判決して、「黄金神社」の主宰である個人の不法行為を認めている。

 「宗教者が祈祷その他の宗教的行為に付随して祈祷料その他の献金を勧誘する行為についても、原則として、憲法上の信教の自由の保障が及ぶので、当該宗教の教義が合理的であるかどうか、あるいは、当該宗教的行為の成果が客観的に証明できるものであるかどうかなどの基準に衣拠し、合理性ないし客観性が認められないとの一事をもって当該勧誘行為の違法性を判断するのは相当ではない。しかしながら、献金を勧誘する行為が相手方の窮迫、軽率等に乗じ、ことさらその不安、恐怖心等をあおるなど不相当な方法でなされ、その結果、相手方の正常な判断が妨げられた状態で著しく過大な献金がなされたと認められるような場合は、当該勧誘行為は、社会的に相当な範囲を逸脱した行為として不法行為に該当する」  「被告の行為は、原告が相応な資産を有していることに着目し、財産的利益を得る目的で(中略)追いつめられて平常心を失い混乱した原告の精神状態に乗じ、霊力、因縁等がもたらす災いの話を繰り返して説くことによって、ことさら原告の不安感をあおりたて、その災いを取り除くには被告の提示する諸費用を納めて、被告ないし被告の信奉する神の力に頼るほかはないと信じさせて、著しく高額な献金の承諾をさせ、これを収受したものと認められるから、その目的、方法、結果のいずれにおいても、社会的に相当なものとして是認できる範囲を逸脱しているというべきであ(る)」


注5

 高松地裁は次のような理由で統一協会の使用者責任を認めている。

 「特定宗教の信者が自己の属する宗教団体への献金を勧誘する行為も、その目的、方法、結果から判断して、社会通念上相当と認められる範囲を超える場合には、民法の不法行為との関連において違法の評価を受けるものといわなければならない。」  「勧誘すべき人数につき一定の目標を定めたうえ、珍味の訪問販売をきっかけに訪問先の相手を被告の信者らが主催する講演会等に誘い出し、被告の名を明かさないまま、家系図調査と称して家系、悩み事等を、さらに、環境浄化と称して財産状態を詳細に聞き出し、これらの情報をもとに被告の信者らの間で獲得する献金の目標額を決め、周囲の信者から「先生」と呼ばれるリーダー格の信者が、右目標にしたがって、事前に得た情報を利用しながら献金の勧誘をするという一連の流れが認められ、これら一連の行為は献金獲得に向けられた組織的、計画的行為と認められること、献金の直接の勧誘行為は、前記認定のとおり、原告の入会の意思も十分確認しないまま、予め得た情報を利用して、その不安をあおり、執拗に多額の献金の即決を迫る方法でなされていること、原告が献金を承諾した翌日には、信者らが迎えに行ったうえ、預金の引き下ろしなどの諸手続から献金が終わるまで終始付き添い、原告に熟慮の機会を与えていないこと、右勧誘は被勧誘者の出捐しうる金額全部を献金するよう勧めるとの基本姿勢の下に行われており、現実に右のような勧誘の結果原告によりなされた献金は600万円と多額で、原告の預金のほぼ全額であることなどの諸事情を総合すれば、被告の信者らが行った前記一連の勧誘行為は、その目的、方法、結果において、社会的に相当と認められる範囲を逸脱しており違法性を帯びる」

 また同判決は使用者責任について次のように判示している。

 「民法715条における「使用」関係とは、使用者と被用者との間に実質的な指揮監督の関係があることを意味するものと解されるが、実質的な指揮監督の関係が認められれば、必ずしも使用者と被用者との間に有効な契約関係が成立していることを要しないものと解される。また、使用者の「事業」の範囲については、使用者の本来の事業のほか、その付随的業務とみられるもの、さらに不当な事業執行についてもこれに含まれるものと解すべきである。そして、被用者の行為が事業の執行につきなされたものかどうかは、事業の執行についての被用者の行為の外形から判断するのが相当である。
 これを本件についてみると、前記認定事実に前掲各証拠及び弁論の全趣旨を総合すれば、本件献金勧誘行為当時、被告とは別に被告の信者団体があり、大西らは右信者団体の活動として行動していたものではあるが、一方、被告は既に信者となっている者の親族に対する教育活動と被告の協会を自発的に訪れた者に対する伝道活動を除けばあらたな信者を獲得するための独自の布教活動を行っておらず、右布教活動は専ら信者団体により行われていること、信者団体は被告の教義を伝道し、同時にできるだけ多くの献金が被告になされることを目的として活動していたものであり、しかも右団体の構成員である大西ら被告の信者の多くは献金をさせること自体が被告の教義達成のための手段であると認識していて、伝道活動と献金勧誘行為とは密接に関連していること、勧誘の結果としての献金は被告に帰属し、被告の事業の財源となっていることが認められ、以上の事実からすれば、右信者団体の活動が被告の意向と無関係に行われているとは考えられず、被告は右信者団体を通じて伝道及び献金勧誘に際して違法な行為がなされないよう信者らを指揮、指導できる立場にあったものと認められ、また、本件の信者らの行為を勧誘される相手方から外部的客観的にみれば、被告の信者らが被告の教義の実践として被告の利益獲得のために組織的計画的に遂行する行為と認めれられるから、右のいずれの要件も充足するものというべきである。


注6

 奈良地裁判決は、福岡判決、高松判決を一歩進め、統一協会について、715条の使用者責任ではなく、709条の不法行為責任を認めた初めての判決である。


 「被告(統一協会)とその信者組織とは、当然のことながら後者は前者の構成員から成り立っており、人事面での交流もあること、被告は、これまで被告の教義に基づく実践として、組織的に物品販売活動等による資金集めを精力的に行ってきたものであり、その過程において、被告と被告の信者組織との区別が明確であったとはいえないこと、被告の伝道方法等についてはマニュアルが存在し、ほぼ全国共通の方法がとられていることが認められる。
 そして、本件で問題となっている献金勧誘行為は、被告の教義内容に照らして被告の宗教的活動としては最も基本的かつ重要なものであり、実際、被告は、信者を介して集めた献金を受け入れていたことからすれば、本件献金勧誘行為については、被告が被告の活動として行ったものであるといえる」

 そのうえで、被告統一協会の献金勧誘システムの違法性に関し、

 「前記認定によれば、被告の献金勧誘のシステムの特徴として、@.万物復帰の教えの下、個々の対象者からその保有財産の大部分を供出させ、被告全体としても多額の資金を集めることを目的とするものであること、A対象者がある一定レベルに達成するまで、被告の万物復帰の教えはもちろんのこと、被告や文鮮明のことを秘匿あるいは明確に否定したまま、対象者の悩みに応じた因縁話等をして不安感を生じさせ、あるいは助長させる方法をとっていること、B各種マニュアル等により勧誘方法が全国的に共通していて、組織的に行われていることが挙げられる」とし、「このうち、Aの点は、被告への入会ないしは献金等を勧誘するに際し、入会ないしは献金等をしようとする者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつき、不実のことを告げ、また、被告への入会ないしは献金等をさせるため、対象者を威迫して困惑させるものであり、方法として不公正なものと評することができる」としたうえで、「信教の自由との関係」について、次のとおり判示する。

 「宗教団体が布教活動ないし献金勧誘をする行為は、宗教的信仰の外部的な表現である点で、信教の自由(宗教的行為の自由)の一部として憲法上保障されている。
  しかし、本件のように宗教団体において、自らが宗教団体であることや当該行為が宗教的行為であることを殊更秘して布教活動等を行う場合においては、宗教的行為の一部であることが何ら外部には表現されておらず、宗教的信仰との結びつきも認められない単なる外部的行為とみられるから、信教の自由の範囲外であり、一般取引社会において要求されるのと同程度の公正さが献金勧誘行為においても要求されるものである。」
   
 こうして同判決は、結論として、「以上を全体として総合的に判断すれば、被告の献金勧誘のシステムは、不公正な方法を用い、教化の過程を経てその批判力を衰退させて献金させるものといわざるを得ず、違法と評価するのが相当である」と判示している。」


注7

 「宗教的結束を維持し、拡大するための行動であっても、現行法の秩序を踏み超えることはできず、刑事法上是認されないものは、宗教的活動であることの故に犯罪性を否定されず、同様に、民事法上是認されないものは、不法行為等民事上の責任を免れるものでもない。献金が、人を不安に陥れ、畏怖させて献金させるなど、献金者の意思を無視するか、又は自由な意思に基づくとはいえないような態様でされる場合、不法に金銭を奪うものと言ってよく、このような態様による献金名下の金銭の移動は、宗教団体によるものではあっても、もはや献金と呼べるものではなく、金銭を強取又は喝取されたものと同視することができ、献金者は、不法行為を理由に献金相当額の金銭の支払を請求することができると解すべきである。」  「原告の献金に至るまでの津藤らの行動は、肉親を多く失った原因が先祖の罪にあり、それが長男にも及ぶかのうように説いて原告を畏怖させて精神的に落ち込ませ、絶家する原告の家系の運命を免れるためにはすべてを神に捧げることを要すると原告に思い込ませ、一方では、先祖開放祭を実施して気分を高揚させ、献金を決意させたというもので、さながら、原告の心を自在に操っているかのようであり、その結果、原告が前記認定の多額の献金をするに至ったと認められ、金銭を出捐しなければ最愛の肉親の身に重大な害が生じると伝えて献金名下に本件におけるような多額の金銭を得ることは、社会的に到底是認しうるものではなく、不法行為を構成する」

 また同判決は使用者責任についてそのように判示している。

 「宗教法人は、その信者が第三者に加えた損害について、当該信者との間に雇用等の契約関係を有しない場合であっても、当該信者に対して、直接又は間接の指揮監督関係を有しており、かつ、加害行為が当該宗教法人の宗教的活動などの事業の執行につきなされたものと認められるときは、民法715条に定める使用者責任を負う。宗教法人の信者が当該宗教法人と別に組織を構成し、信者が信者組織の意思決定に従って宗教的活動又はこれに付随する活動を行う場合においても、信者組織が宗教法人の教義とは異質の理念に基づいて運営されるか、又は活動していると認められる特段の事情のない限り、当該宗教法人は、右信者組織の意思決定に従った信者による加害行為についても、同様の責任を負う。」


注8

 名古屋青春を返せ訴訟第一審判決

 「一般に、当該宗教を広めるために勧誘、教化する行為は、勧誘、教化された信者を各種の活動に従事させたり、献金させたりする行為は、それが社会的に正当な目的に基づいており、方法、結果が社会通念に照らして相当である限り、宗教法人の正当な宗教活動の範囲内にあるものと認めるのが、相当である。しかしながらこれに反して、当該行為が、目的、方法、結果から見て社会的に相当な範囲内を逸脱しているような場合には、民法が規定する不法行為との関連において、違法の評価を受けるものといわなければならない。ただし、これらを検討するにあたり、裁判所は、憲法20条1項に従い、当該宗教の当否等に立ち入って判断しない。」
(中略)
「セミナーなどにおける勧誘、教化行為は、被告法人の教団名、文鮮明の名前を明かさない点において、やや道義上の問題を残すとしても、前記(1)(2)認定の目的及び勧誘、教化の方法などを総合考慮するとき、いまだ社会的相当性を逸脱したとは言うことはできない」


注9

 エホバの証人の信者をめぐる離婚訴訟については、離婚を認めるものと、離婚を認めないものがある。
 前者の代表的な例として、東京高裁平成2年4月25日判決(判例時報1351号61頁)、大阪高裁平成2年12月14日判決(判例時報1384号55頁)、広島地裁平成5年6月28日判決(判例タイムズ873号240頁)、後者の代表的な例として、名古屋高裁平成3年11月27日判決(判例タイムズ789号219頁)、東京地裁平成5年9月17日判決(判例タイムズ872号273頁)などがある。