H14. 7.17 東京地方裁判所 平成12年(ワ)第16062号 損害賠償請求事件 平成14年7月17日判決言渡平成12年(ワ)第16062号 損害賠償請求事件 平成12年(ワ)第23208号 反訴請求事件 |
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主 文 1 被告は,原告に対し,金104万1800円及びこれに対する平成12年8月24日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。 2 被告の反訴請求に係る訴えを却下する。 3 訴訟費用は,本訴・反訴を通じ,全部被告の負担とする。 4 この判決は,第1項に限り,仮に執行することができる。 事 実 及 び 理 由 第1 請求 (本訴) 主文第1項と同旨 (反訴) 1 被告は,原告に対し,何らの債務も負担していないことを確認する。 2 原告及び反訴被告Aは,連帯して,被告に対し,金1000万円を支払え。 第2 事案の概要 1 本訴 (1) 本訴は,原告名義ないしその妻であるB名義で負担した合計300万円を超える債務の整理を弁護士である被告に委任し(以下「本件委任契約」という。),委任事務処理費用等として合計273万6000円を支払った原告が,本件委任契約は,@弁護士法27条,72条に違反し,無効である,A被告は弁護士としての誠実義務に違反したので,原告は本件委任契約を解除した,B原告は,本件委任契約が弁護士法27条,72条に違反し,また,被告のする債務整理が不誠実なものであることを知っていれば,債務整理を委任することはなかったのであるから,本件委任契約の申込みには錯誤があり,本件委任契約は無効である,C被告は,本件委任契約が弁護士法27条,72条に違反し,また,被告のする債務整理が不誠実なものであることを秘匿し,通常の債務整理業務を行うかのごとき体裁を取り,本件委任契約を締結させたものであるから,原告は本件委任契約を詐欺を理由として取り消した,D本件委任契約は弁護士法27条,72条に違反し,また,被告のする債務整理は不誠実なものであったから,本件委任契約は公序良俗に反するなどと主張して,原告が支払った前記金員の内金104万1800円及びこれに対する本件訴状送達の日の翌日である平成12年8月24日から支払済みまで民法所定の年5分の割合による遅延損害金の支払を求めるものであり,原告の主張する事実経過は,次のとおりである。
(2) 被告は,本訴は,D弁護士を中心とする共産党系クレサラ弁護士一派が競合弁護士つぶしのため,原告訴訟代理人弁護士Aが原告の名義を借りて提起した氏名冒用訴訟であると主張して,本訴請求に係る訴えの却下を求め,また,本案の答弁として,請求棄却の判決を求めるものの,請求原因については,被告が送付した書面の内容,送付の事実のみ認め,その余の事実は否認すると述べるのみで,具体的な事実毎の細かな認否あるいは積極的な反論は全く提出しない。 2 反訴 本件反訴は,被告が,本訴における被告の主張を援用するとともに,反訴被告Aについて,D弁護士一派及び原告と共同して被告を訴追する同人の行為は,弁護士法,独占禁止法,刑法,民法その他の法令に違反する不法行為であると主張して,原告に対して債務不存在確認を求めるとともに,原告及び反訴被告Aに対し,連帯して損害賠償金1000万円の支払を求めるものである。 第3 当裁判所の判断 1 本訴について (1) 被告の本案前の主張について 甲第18号証及び原告本人尋問の結果によれば,原告は,被告に支払った金員の返還を求めるために,原告訴訟代理人弁護士Aに本訴の提起及び追行を委任したことが認められる。したがって,本訴は,被告が主張するような氏名冒用訴訟ではないから,被告の本案前の主張は理由がない。 (2) 本案について 証拠(甲1ないし5,6の1及び2,7,8の1及び2,12ないし16,18,原告本人)及び弁論の全趣旨によれば,前記第2の1の(1)のアないしエの各事実を認めることができる。 これら認定の事実に弁論の全趣旨を合わせると,被告は,いわゆる非弁提携弁護士であると認められ,しかも,原告から委任を受けた債務整理に関する業務を専ら自己の法律事務所の事務員に行わせ,しかも,その業務遂行の方法ないし内容は極めて不誠実であったということができる。そして,原告が,被告が弁護士として誠実に債務整理業務を行うことを期待し,そのことを契約の内容として本件委任契約を締結したことは明らかであるから,本件委任契約は錯誤により無効であると解するのが相当である。 そうすると,本件委任契約に基づく委任事務処理費用等として支払われた金員の一部の返還を求める原告の本訴請求は理由がある。 2 反訴について (1) 原告に対する反訴について 反訴請求の趣旨第1項は,被告が原告に対して何らの債務も負担していないことの確認を求めるものであるから,本訴で原告が請求している債権をも対象としていることは明らかであるところ,その部分については既に本訴で給付訴訟の対象とされているのであるから,消極的確認を求める利益はないし,その余の部分は本訴との関連性が認められない。また,反訴請求の趣旨第2項は,いかなる請求原因に基づくものであるか全く明らかではなく,訴訟物が特定されていない。 したがって,原告に対する反訴請求に係る訴えは,不適法である。 (2) 反訴被告Aに対する反訴について 反訴被告Aは,本訴の当事者ではない(本訴が,被告の主張するような氏名冒用訴訟でないことは,前記のとおりである。)から,反訴被告Aに対する反訴請求に係る訴えは,不適法である。 3 結論 よって,原告の本訴請求は理由があるから認容し,被告の反訴請求に係る訴えは不適法であるから却下する。 東京地方裁判所民事第38部 裁 判 官 北 澤 晶 |