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東京地方裁判所 平成12年12月25日判決

【判示事項】

1 宗教法人法の華三法行の代表者らによる勧誘行為の違法性が認められ、同代表者ら及び同宗教法人に対する損害賠償請求が認容された事例
2 不法行為による損害賠償請求権の消滅時効の起算点

判例タイムズ1095号181頁


主文

 一 被告らは、別紙認容金額一覧表記載の各原告に対し、連帯して、同一覧表記載の各原告に対応する「認容額合計」欄記載の各金員及びこれらに対する「遅延損害金起算日」欄記載の日からそれぞれ支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
 二 原告らのその余の請求をいずれも棄却する。
 三 訴訟費用は、被告らの負担とする。
 四 この判決は、第一項に限り、仮に執行することができる。


事実及び理由

第一 請求
 一 主位的請求
  1 被告らは、別紙請求金額一覧表記載の各原告に対し、連帯して、同一覧表記載の各原告に対応する「請求額合計」欄記載の各金員及びこれらに対する「遅延損害金起算日」欄記載の日からそれぞれ支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
  2 訴訟費用は、被告らの負担とする。
  3 仮執行宣言
 二 予備的請求
  1 被告法の華三法行は、別紙請求金額一覧表記載の各原告に対し、同一覧表記載の各原告に対応する「請求額合計」欄記載の各金員及びこれらに対する平成九年二月二六日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
  2 訴訟費用は、被告法の華三法行の負担とする。
  3 仮執行宣言

第二 事案の概要
 一 本件は、宗教法人である被告法の華三法行(以下「被告法の華」という。)が主催する研修に高額の研修費を払って参加し、また多額の支出をして掛け軸等の物品を取得した原告らが、被告らに対し、被告らが、組織的に、多額の金員を取得する目的で、足裏診断という体裁をとり、悩み事を抱える原告らに害悪を告知し、また、被告らの教えに従えば害悪を回避し得る旨断定するなど、詐欺的・脅迫的な手段を用い、不相当に高額な研修費を払わせて研修に参加させ、精神的・肉体的に苛酷な修行を強要し、さらに、高額な物品を購入せしめたものであり、右行為は、目的、手段、結果のいずれの観点からも、宗教として社会的に許容される相当な範囲を逸脱する違法があると主張し、主位的に不法行為に基づき、予備的に公序良俗違反による無効を前提とした不当利得に基づき、原告らが支出した額及び慰謝料等を請求したところ、被告らは、多額の支出は研修や物品の対価ではなく喜捨であり、多額の支出をすること自体が修行の一環である等主張し、宗教的行為として社会的に逸脱する行為はないとして、争っている事案である。
 二 争いのない事実〈省略〉
 三 争点及び争点に関する当事者の主張〈省略〉

第三 当裁判所の判断
 一 被告法の華について
 当事者間に争いのない事実、甲A第一ないし一一号証、第一五ないし三八号証、第三九号証の一ないし四、第四〇号証、第四一号証の一ないし四、第四二、四三号証の各一、二、第四四、四五号証、第四七号証の一ないし三、第四八、四九号証、第五〇号証の一ないし三、第五二号証の一ないし三、第五三号証の一、二、第五四号証の一ないし三、第五五号証の一ないし五、第五六号証の一、二、第五七号証、第六〇ないし六三号証、第六六号証の一、二、第六七号証、第七二号証の一ないし七、第七三号証の一ないし三、第八四、八五号証、第八六号証の一ないし四、第八八号証の一ないし六、第八九ないし九一号証、第九五号証の一、二、第九八号証、第九九号証の一、二、第一〇五号証、乙第一号証の一ないし一二、第一〇号証、第一一号証の一ないし三、第一二号証、第一三号証の一ないし三、第四七号証、第五一号証、証人戊村三郎の証言、被告福永法源こと福永輝義(以下、「被告福永」という。)本人尋問の結果、弁論の全趣旨によれば、以下の事実が認められる。
  1 成立
 被告福永は、昭和五五年一月六日、「天声」を聞いたと称して、被告法の華の活動を開始し、昭和六二年三月二六日、静岡県知事の認証を受けて、被告法の華を宗教法人として設立した。
  2 組織及び施設
   (一) 役員
 被告法の華は、宗教法人として代表役員一名、責任役員五名、監事及び責任役員会等の機関を設置し、代表役員には宗教上の最高指導者たる地位にある「法師」の位にある者が就任すると定められ、被告福永が代表役員に就任した。
 被告井本房子(以下、「被告井本」という。)、被告星山康天こと李康天(以下、「被告星山」という。)、被告丙山は、被告法の華の理事かつ責任役員に就任した。
   (二) 信者
 被告法の華の信者は、「行者」と呼ばれ、このうち、後述する被告法の華の研修を受けた者のなかから、被告法の華に奉仕すべく依嘱された者が「天仕」と称され、布教活動等を含めた管理運営等に関する事務を行っていた。
 天仕には、「天仕規則」(甲A第三一号証)や「天声村天仕の心得二一ヶ条」(甲A第三三号証)などの規律や位階制度が定められた。位階の上位の天仕は、「理事」「講師」「準講師」等と称された(甲A第三二号証)。被告星山の供述によれば(甲A第四五号証)、天仕には、月平均二〇万円から三〇万円の給料が支払われた。高位の天仕である「講師」であった丁川春子(以下「丁川」という。丁川は、自らについて、被告福永、被告星山に次いで、被告法の華においてナンバースリーの地位を占めていたと供述している。)は、被告福永の天声を行者に伝える役目をしていたが、研修参加費等として原告らから支払われる金員が多いときには丁川に支払われる天仕般若料という名目の金員も多くなり、この金額として一〇〇〇万円を受け取ったこともあった(甲A第五〇号証の二)。
 被告法の華においては、後述の「足裏診断」という宗教活動が行われているが、この足裏診断を行うことができる者として、被告福永以外に、被告法の華から認定された「足裏診断士」がいた。
   (三) 全国組織
 被告法の華は、静岡県富士市に法人の本部施設を置き、全国を一〇の地域(北海道、東北、関東、首都圏、北信越、中部、関西、中四国、北九州、南九州)に分けてそれぞれに地域本部を設置し、さらに合計約三百弱(時期により変動している)の支部を置いた。
 地域本部には、本部長が置かれ、多くの地域本部には足裏診断士が置かれていた。この本部ごとに新規に勧誘すべき信者の目標数などが掲げられた。
 支部には、支部長が置かれた。支部長は、被告法の華から指名された者が支部長研修を受けて就任し、支部開設認定を受けて支部を開設できた。支部長は、支部開設の手引き(甲A第一一号証)、支部運営マニュアル一式(甲A第三九号証の一ないし四)に従って活動し、信者の獲得や本部への報告などが要請され、自ら足裏診断を行うことも許された。支部長には、信者獲得などの実績に応じて報酬が支払われ、被告星山の供述(甲A第四五号証)によれば、毎月平均五、六十万円が支払われていた。
   (四) 施設
 富士市における本部組織を、「富士天声村天地堂」(以下「天声村」という。)と呼び、約五五五五坪(乙第一三号証の三)の敷地に「天地堂」「講法堂」「研修センター」「仏舎利殿」「温行館」等と称する宗教施設が建立されていた。
 また、東京都渋谷区松濤に首都圏の拠点として施設を所有し、事務部門を集約するなどして利用していた。この松濤の施設は、「アースエイド松濤会館」「第二アースエイド会館」「アースエイドゼロの力学会館」等と呼ばれていた。
   (五) 関連機関ないし法人
 被告法の華は、その教義等を社会に普及させるための活動(布教、書籍等出版物の刊行、講演会の開催等)を担当する内部部署として「ゼロの力学本庁」を、別法人として被告株式会社アースエイド(以下、「被告アースエイド」という。)、有限会社□□研究所等を擁していた。また、被告法の華の機関紙を発行する株式会社さくら新聞社を有し、さらに、××グループと称する営利企業グループを傘下に収めていた。
 被告アースエイドは、平成二年九月一三日に設立され、出版及び雑誌の企画、編集、制作及び販売、並びに広告及びイベントの企画、設計、制作、運営、実施などを主たる目的とする株式会社である。主な出版物には「病苦を超える最後の天行力」(甲A第三号証)「愛を超える結婚があった!」(乙第四七号証)など、多数の被告福永の著書がある。その代表取締役には、被告星山が就任していた。
 有限会社□□研究所(甲A第八六号証の一ないし三)も被告福永の著書(国司院常照というペンネームを用いている)を出版し、具体的には「ありがとう!奇跡の足うら療法」(甲A第四二号証の一)「金運・上昇運は足うらでつかめ!」(甲A第四三号証の一)等を出版していた。この代表取締役には、被告井本が就任した。
 さくら新聞社は、「さくら新聞」と称する機関紙を発行し、被告法の華の広報活動を行っていた。その代表取締役には、被告井本が就任し、被告福永は取締役に就任していた。
   (六) 経理
 被告法の華の経理内容については、同被告や関連会社の税金の申告漏れの新聞記事(甲A第七二号証の一ないし四)が出るなど、必ずしも明確ではないが、被告福永は、収入として六一〇億円の天納金があり、その内の五三一億円を施設取得、儀式・行事費等に支出しており、この部分の経理を被告井本が監督していたと供述している。
  3 教義及び修行
   (一) 教義
 法人規則上、被告法の華の目的は、「『南無天法地源如来行』を本尊とし、『法の華三法行』の教義(『南無天法地源如来行』を通じて、尊師に啓示される『天声』を崇敬し、その『天声』に従って、三法行を行じ、家系を正し、さらに天行力を源かして自己の身心安定と錬磨に努め、以て完全円満なる人格をめざし、幸せな家庭および平和な社会を形成する。)をひろめ、儀式行事を行い、信徒を教化育成することを目的とし、その目的を達成するために必要な業務を行う。」とされている(乙第五一号証)。
 被告福永の供述によれば、「天声」とは、人間を含む全ての生命や自然を造り、誕生させ育んでいる絶対的存在である「天」の声であり、人間に大宇宙の法則を教える声であるという。そして、この天声は、人間である被告福永の天辺から足の先へと流れる「気」のような「力」のような「波動」として被告福永へ降り、それは、被告福永しか聞くことができず、被告福永の肉声を借りて語られるという。
 また、被告法の華は、「天行力」と称する「だれひとりとして同じ者のいない人間という存在の一人一人を生かし続ける宇宙の根源的な『力』」の存在を説き、「人間は、修養を積むことによって我欲、我執を去り、宇宙普遍の法則にしたがった真に正しい本来の姿になるとき、『天行力』を天から賦与される」と説いている。
   (二) 修行
 被告法の華の教義において、「人間の有する思念的な部分について、頭脳の働きに由来する思考や意識、あるいは既往の生活体験の中でそこに蓄積された常識や既成概念、つまり理性的・打算的・経験的な部分を『思い』と呼び、人間の首から下の部分、より根源的で潜在的な無意識部分から発する情念を『観い(おもい)』と呼んで区別し、本来的に歓喜に満ちた『観い』を『思い』が抑圧し、本来享受できるはずの幸福や健康が失われる。この『思い』を捨て去ることが『頭を取る』ということであり、『頭を取る』ためには『修行』が必要である。」と説かれている。
 被告法の華が、「修行」と称するものには、「天行力三法行」「七観行」「人間法源生き様修行」等がある。
 「天行力三法行」は、「法唱」「法筆」「法座」の三つの行からなり、「法唱」とは「般若天行」(般若心経に若干の変更を加えたもの)を繰り返し唱えること、「法筆」とは「般若天行」を写経すること、「法座」とは静かに瞑目して座すこととされている。
 「七観行」とは、「健康にあふれた楽しい毎日です。」等の七つの言葉を唱えることをいう。
 「人間一郎生き様修行」とは、富士市の本部施設に置いて四泊五日の日程で行われる修行である(以下「四泊五日研修」、又は、単に「研修」という。)。この四泊五日研修を行う指導員の部署を「般若塾」と呼んでいた。
 二 被告法の華の信者獲得の実態及び具体的活動
  1 本件原告らの被告らとの関わりの経緯は、別紙各原告の状況1ないし31の各「認定事実」欄記載のとおりであるが、同別紙に掲記した各証拠及び認定事実並びに前記一掲記の各証拠によれば次の事実が認められる。
  2 契機
   (一) 原告らと被告法の華との具体的な関わり
 原告らを含む被告法の華と関わった者の多くは、自身の癌などの病気、親・兄弟・子供などの身内の病気、仕事に関する問題、自己の性格に関する問題、人間関係や恋愛関係の問題などに悩んでいた。
 原告らは、各々の悩みがあるところに、被告福永の著書である「病苦を超える最後の天行力」等の書籍を書店で購入したり、路上や駅で配布を受けたり、自宅のポストに投函されたりして目にした。
 被告福永の著書には、天行力で病気が治せるとか、天行力で自分が変わり何でも悩みが解決できるとか書かれ、現世的な利益を得られたという具体例が織り込まれ、いかにも天行力という神秘的な力によって、原告らが抱えている悩みを解決できると思わせるように書かれていた。しかも、被告福永の肩書が「生態哲学博士」と記載されるなど(例えば、前掲甲A第三号証、乙第四七号証)、一見して宗教と分かりにくく書かれ、宗教色が薄くなっていた(被告福永自身も一貫して自ら宗教意識が希薄であると供述しているところである)。
 このようにして配布された書籍には、アンケート用紙が添付され、書籍中には、問い合わせ先として被告法の華の内部部署であるゼロの力学本庁の電話番号が記載されており、読者が、アンケートに回答したり、電話で問い合わせたりすることで被告法の華と接点ができた。
 被告法の華と接点ができると、原告らを含む読者のもとに、被告法の華から「さくら新聞」等の機関紙が送られ、勧誘の電話がかかった。このさくら新聞には、被告福永がローマ法王と会ったときの写真など被告法の華の広報記事が多数掲載され、原告らに、被告福永が偉大な人物であると認識させ、被告福永に対する信頼を醸成させた。そして、被告法の華からの電話においては、原告らの悩みを聞き出した上で、説明会や足裏診断へ参加するよう言葉巧みに勧誘した。この勧誘の際に、原告らが宗教ではないかと質問しても、被告法の華側では、宗教ではないと明確に答え、宗教性を一切出さなかった。このため、原告の中には、他の宗教を信仰していたが、被告法の華は宗教でないと考えて研修に参加した者もいた(原告e)。
   (二) 被告法の華による契機作出
 被告法の華は、右のとおり被告福永の著書を多数の読者に読ませることで、信者を獲得する方法をとっていたと考えられるが、このことは、以下のとおり、被告法の華の内部資料によっても裏付けられる。
 (1) 書店に多数被告福永の著書を置かせるための行動
 被告法の華の内部文書である「主要書店支部管理システム戦略」と題する書面(甲A第一六号証)によれば、被告らは、被告福永の著書を多数書店に置かせて販売を促進するために、全国の主要書店、特に他の書店に影響力をもつ最有力書店を決め、その書店に被告福永の著書を平積みさせる努力を行ったことが認められる(被告星山(甲A第四五号証))。その具体的な手法は、有力書店に一定の部数の書籍を納入した後、被告法の華の信者自ら、複数の書店を回り、一書店につき一冊ずつ購入し、各書店で売れゆきが伸びているように見せかける、購入の際にも、ただ購入するのではなく、あえて書店の店員に対象とする書籍があるのか尋ねるなどして、店員の印象に残るようにする、支部では信者勧誘のために書籍を配布していたが、そのための書籍も書店から購入するという方法を取り書店で売上げを伸ばすなどし、ベストセラー本のように見せかけるなどであった。
 (2) 病院付近での書籍のばらまき
 同様に被告法の華の内部文書である「報告書」と題する書面(甲A第一七号証)、「成行から天行へ」と題する書面(甲A第一八号証)、「戦略ポイント」と題する書面(甲A第一九号証)によると、「病苦を超える最後の天行力」を全国の病院付近で一二〇万冊ないし一五〇万冊を目標に配布していたことが認められる(被告星山(甲A第四五号証))。具体的には、現実に病気で悩んでいる人に同書を配ると反応が得られやすかったので、総合病院で八〇〇床以上の病院とそれ以下のものを分け、それぞれの病院が得意としている病気の種類を調べ、ターゲットとする病院を定め、支部長と天仕が班を組んで当該病院に赴き、「ガンは消せる!」と書かれた看板などを準備して目立ち、身だしなみを整えるなど好印象を与えるよう注意を払った上で、病人やその家族などを狙って書籍を配ることがマニュアル化され実行された。
  3 足裏診断
   (一) 原告らの具体的状況
 右のとおり、被告福永の書籍を読んで被告法の華と接点ができた原告らは、勧誘を受けて、足裏診断を受けるためアースエイド松濤会館等に赴いた。
 被告法の華の施設に着くと、まず、診断カルテ(甲A第四七号証の一ないし三)等を交付され、足裏診断に先立ってこれに記入するよう求められた。診断カルテには、家族構成、今までに読んだ被告福永の著書、生活や人生における悩み事、家族や三代前までの先祖の病気や不幸な出来事、本人の金銭的な状況、女性の流産や中絶の経験、被告福永に相談したいことなどを記入する欄が設けられていた。この診断カルテは、足裏診断を行う被告福永又はその他の天仕によって診断に先立って読まれた。(被告福永は、天から禁止されているので、診断カルテを事前に読むことはないと供述しているが、そうであれば、なぜ事前に診断カルテを書かせるのか合理的な説明がなし得ておらず、診断カルテに被告福永が記載すべき欄が設けられていることからすれば、事前に見たり、見ながら診断をしたと考えるのが素直であって、この点に関する被告福永の供述は措信できない。)
 診断カルテに記入した者は、別室に案内され、被告福永、足裏診断士及び支部長らから足裏診断を受けた。このとき、被告法の華の天仕らが同室して立ち会った。被告福永らは、原告らからまず悩みを聞き出し、原告らの足裏を見て、驚いた様子をみせ、以下のような言葉で断定する。
 「ほめられた足裏ではありませんね。」「癌も再発するに違いない。」(原告甲田)、「このままじゃ、くも膜下出血で倒れる。」(原告A)、「生命までも危うい。」(原告B)、「心臓疾患や十二指腸癌になる。子宮癌になる。」(原告H)、「このままだと子供たちは登校拒否になる。」(原告I)、「三代から五代先までたたりがある。」(原告J)、「あなたの母親の癌が必ず再発する。あなたも必ず癌になる。あなたは精神病だ。」(原告K)、「癌になる恐れがある。」(原告L)、「このままでは癌になる。」(原告E)、「足裏のほくろは、膵臓癌になりやすい。」「あなたも死んでしまう。」(原告M)、「このままいったら癌になる。」(原告N)、「頭を取らないと七月にリンパ癌になる。」(原告O)、「やがて脳梗塞になってしまう。ぼけて惨めな老後だ。頭の病気で、長生きできない。」(原告P)、末期癌の母がいる者に対して「母親の次に癌になるのはあんただ。」「早くしないと母親の心臓が止まるぞ。」(原告Q)、「直腸癌や大腸癌になる。」(原告R)、「病気でずっと苦労するし、不幸のままで人生を終わることになる。お母さんの病気も治らないね。家庭がむちゃくちゃになるよ。」(原告S)、「あなたはお母さんよりも早死にするよ。」(原告T)、「子供が不良になってしまう。いじめられて自殺する。」「(夫の寿司屋は)O-157に呪われている。」「家系が絶える。」(原告U)、「(出産で命を落とした)前の奥さんのようになります。」(原告V)、「このままだと将来うつ病になります。」「人間として失格だ。こんなもんじゃ結婚したとしても一年と持たない。」(原告W)、「今のままではそう長くは生きられません。」(原告G)、「今の状況だと最悪。研修に参加しないと人生がぼろぼろになる。」(原告X)
 右のように、多くの原告が、癌になる等具体的な害悪を告知され、断定された。しかも、詳細は別紙各原告の状況1ないし31の各「認定事実」欄記載のとおりであるが、被告福永らによって告知されたこれらの害悪の内容は、例えば、癌の再発をおそれている者に対して「癌が再発する」と言うなど、各原告がそれまで有していた各々の悩みに対応したものであったので、原告らが、右文言の告知を受け、更に悩みを増幅され、ひどく衝撃を受け、精神的打撃を被り冷静さを失ったであろうことは、容易に推認できる。
   (二) 被告法の華における「足裏診断」の位置づけ
 被告福永の供述によれば、人間にとって「天」のエネルギーである「天行力」が頭から足の裏へと融通無碍に流れ抜けるのが本来の姿であるが、「頭」が取れていない場合には、その流れが阻害され、病気や争い、金銭上の困難など全ての問題が生ずる。そこで、足裏の状況を見て、この「天行力」の貫通、阻害の程度を判断することを足裏診断といい、この診断の結果が、被告福永に「天声」で示されるという。
 この足裏診断は、被告法の華において重要な位置を占めると説かれているが、昭和五五年の当初から行われていたものではなく、被告法の華の法人登記がされた昭和六二年三月二六日より二年後である平成元年になって初めて行われた(乙第一三号証の三)。当初は、被告福永と戊村三郎(以下「戊村」という。)の二人だけで行われたが、足裏診断を受けさせる人数が増えたため、被告福永らだけでは、対応できなくなったため、被告法の華の講師などの幹部にも行わせるようになった。平成二年には、「開運錬成講座」を開き足裏診断士になるための通信講座を開始したが、希望者が少なく中断した。その後、平成四年六月に、被告福永は、戊村に足裏診断士を養成するように命じ、「足裏診断士養成所」を設立した。戊村は、同養成所の所長となり、講師として足裏診断士となるための講義等を行った。しかし、平成七年八月ころ、被告法の華本部からの通達で、足裏診断士の養成は中止された(甲A第一〇五号証)。
   (三) 足裏診断士養成マニュアル(甲A第二一号証、第九一号証)
 足裏診断士養成所開設中、講義に当たって、戊村は、レジュメとして「足裏診断士養成マニュアル」と題する書面を使用し、参加者に配付した。
 同マニュアルは、どのように相手方を不安に陥らせ、研修に参加させるかのノウハウが記載されているものである。すなわち、足裏をみて、まず「あなたこのままだとガンになるよ!」「汚い足裏ですね!」「相当血液を濁してきたね!」と第一声を吐いて相手をびっくりさせるが、その足裏の見方として、ほくろの位置が中指にある場合は失明の恐れがあるとか、指の形が折れ曲がっていると下向きな人生になっているとか自殺者がいるなど、病気や不幸になるという場合が列挙されている。さらに、性格分析についても、一般には積極的に評価される性格について、例えば、「忍耐力-我慢して観(おも)いにマイナスを刻む癖がある」「社交的-人に妬まれている」「人情深い-だまされやすい」「正義感が強い-敵も多い」と書かれるなど、否定的な方向から説明できるような例が摘示されている。そして、「知恵の表現集 最後の決め手で生かして下さい。」として、「今のままでは命を取られる」「後二ヶ月で倒産するよ」「自殺するね」「ノイローゼになる」「八方塞がりの人生だ」「短命で終わる」「足裏のほくろは癌になりますよ」と明らかに害悪を告知する内容の文言が記載されている。このような言葉は、すべて相手方を頭を取る方向に向ける、すなわち後記のとおり高額の費用がかかる研修に参加させるためであり、「相手方が求めていることと頭が取れることを結びつけ」るとされるのである。
 被告福永は、右マニュアルは戊村が私的に作成したものであり、被告福永は関与していないと供述している。しかしながら、被告福永は唯一天声を聞ける教祖として被告法の華の中で圧倒的な地位を占めていた者であるところ、前記認定のとおり、足裏診断は当初から被告福永と戊村の二人で行われ、足裏診断士の養成も被告福永が命じて戊村に行わせたのであり、しかも戊村は講師という高い地位を与えられて被告福永に極めて近いところにいた存在であったのであるから、被告福永において、戊村が右マニュアルを作成したことを全く知らなかったというのはあまりに不自然であるのみならず、被告法の華の北九州本部長であったYは、右マニュアルが被告法の華の本部でファイルに綴じられているのを見たと証言しているから(甲A第一〇五号証)、このようなマニュアルが戊村によって私的に作成されたものとは到底考えられないのである。
   (四) 足裏診断の組織性
 このように、足裏診断士養成マニュアルは戊村が私的に作成したものとは考えられないこと、前記認定の原告らに関する足裏診断の状況(害悪の告知内容等)が極めて類似していること、簡単な支部長研修を受ければなることのできた支部長でさえ足裏診断をすることが許されていた(甲B第二号証の三)が、このように、天声を聞くことのできない被告福永以外の者が足裏診断を行い得る理由について、被告福永は、同被告が行う足裏診断を見て、見よう見まねで行っているとあいまいな説明しかできないこと、これらを考え併せると、足裏診断に関して最も被告福永の近くにいた戊村が、被告福永の足裏診断を見て書面化したエッセンスが足裏診断士養成マニュアルであると捉えることができ、同マニュアルが作成される以前から被告福永の足裏診断をまねて講師らによる足裏診断が行われ、それが平成四年になって洗練された形でマニュアル化されたと考えられるのであり、同マニュアルをもとに戊村は講義を行っていたのであるから、同マニュアルの存在は、被告らが主張するように単なる一信者の熱意が行わせたものに過ぎないということはできず、被告法の華において害悪告知を伴う足裏診断を組織的に行っていた徴憑と捉えざるを得ないのである。
 そして、このようなマニュアルの存在や簡単な研修を受けて就任できる支部長でさえも足裏診断をすることを許されていたことは、足裏診断士自身が足裏診断は八〇パーセント嘘であると言うのを聞いた原告もいる(原告R)ことも合わさって、足裏診断そのものに対して強い疑いを持たせることとなっている。
  4 研修参加の勧誘
 右のとおり、足裏診断における具体的な害悪の告知により原告らは不安に陥れられ、冷静な判断力を失っている状況にあったと推認されるが、足裏診断によって、ただ害悪の告知をされるにとどまらず、高額の金銭的な支出を伴う研修参加等の勧誘が続けて行われた。
   (一) 害悪の告知により精神的に不安定となった原告らに対して、被告福永らは、そのような不安から解消され、悩みを解決するには「頭を取る」ために研修に参加するか、その他の支出をするしかないと勧誘した。そして、その際の勧誘文言は、ほとんど何の根拠もないのに、極めて断定的であった。
 例えば、「研修に参加すれば癌が治る。」(原告甲田)、「研修に行けばくも膜下出血もしない。」(原告A)、「五億円の負債も解決できる。」(原告C)、「それ(研修に参加)以外に助かる道はない。」(原告L)、重度の腎臓病の患者に対して「腎臓病は必ず治る。」(原告E)、重篤な精神薄弱者の親に対して、「解脱すれば、言葉が話せるようになる。身の回りのことも自分でできるようになる。」(原告N)、「うつ病の薬がいらなくなる。穴のあいた心臓が手術を受けなくても塞がる。」(原告F)、「脚の病気が治る。」(原告V)、「すぐ(赤い糸の人が)現れる。」(原告W)等であった。
   (二) 被告福永らは、右のような勧誘文言を用い、まず研修に参加するか否かの回答を求め、原告らに参加するという意思を表明させ、その上で初めて、研修費を伝えた。研修費の金額は、各原告によって差があったが、二二五万円と言われた者が多かった。原告らは、その額があまりに巨額であったため参加を渋ると、被告らは、参加すると言ったのに撤回すると更に悪いことが起こると言って追い込み、害悪の告知を更に継続し、場合によっては数時間にわたって説得した。この説得を拒みきれなくなった者に対して、研修費は二四時間以内(七二時間と言われた者もいる)に払わなければ効果がなくなると言い、家族などと相談することも禁じた。しかも、研修内容は説明せず、この段階でも、宗教ではないかと問われても宗教ではないと答えていた。
 なお、この研修参加については、当初費用が二四〇万円と言われ、あまりの高額に参加をためらっているうちに、半額の一二〇万円になってしまった原告もいた(原告Z)し、研修期間が五日間であったのに、仕事が多忙であると参加に難色を示すと一日に短縮された原告もいた(原告C)。さらに、原告Nの場合には、被告福永から、重篤な精神薄弱者である次女を研修に参加させるよう言われたが、原告Nが研修参加は無理であると返答すると、「じゃあ解脱だ」と、研修参加から解脱と称する一〇〇〇万円の納付へと簡単に内容が変わってしまった。
   (三) このように研修参加への勧誘を受けた原告らは、足裏診断において害悪を告知されて、精神的に動揺しているなか、研修に参加することでそれを解消できると水を向けられ、十分に検討する機会がないまま資金を工面して振り込んでしまった。この資金は、貯金や保険を崩した者もいるが、身内(原告甲田、原告Q)や雇用主(原告O)から借り入れた者もおり、これらによって調達できない場合には、サラ金からの借入をするように言われ、現実にサラ金から借金した原告もいた(原告Z)し、父親を騙してでも資金を調達するように言われた原告もいた(原告a)。さらに、執拗な場合には、被告法の華の信者が銀行にまで付き添って預貯金を解約させて支払わせるなどもしている(原告U)。そして、このような借入を起こしての被告法の華への支払は、後述の「家の中心」と称する掛け軸の購入の場合にもあった(原告A、原告N、原告b、原告G)。また、このような支出をさせる際には、相手方の地位、資力、年齢等は全く考慮されず、現実に、主婦等の無職の原告からも高額の研修費を支出させ(原告H、原告L、原告P、原告Q、原告c、原告V)、月額十四、五万円のパート収入しかない者から研修費と解脱料として一二二五万円もの高額の支出をさせ(原告N)、高校生にも研修費を支出させている(原告a)のである。
  5 研修の状況
   (一) 研修の流れ
 原告ら研修参加者が、天声村等の会場に着くと、まず受付があり、特に説明のないまま、修行生カルテ、私意書(これは、研修参加に当たって納めた費用は寄付したものであるから返還は求めないなどと記載された書面である。)、修行参加者受付証等に記入を求められた。持っていた貴重品、携帯電話、薬などは全て預け、白か色の付いたTシャツを着させられた。
 修行は、塾長と名乗る者が進行し、これに補助の天仕らがついて行われた。修行の内容は、七観行や「最高です。」という言葉の絶叫の繰り返し、般若天行の写経、二名で向き合って互いにののしりあう修行、本を頭の上に載せて落とさないようにして正座する修行、被告福永の説法を聞くことなどを絶え間なく行うというものであった。
 研修三日目には、「苦の行」と称する修行が行われ、三時間続けて目隠しをしてあぐらをかいて座り、思い思いのことを叫ぶ。この修行中、泣きわめいたり、「最高です。」と叫んだり、踊りだしたりする者もいた。
 その後、「二四時間行」と称する修行が、二四時間続けて行われた。二四時間行は、渋谷、池袋、新宿などの都心へバスで移動し、路上で土下座して七観行を絶叫したり、通行人に「最高ですか。」と大声で尋ねたり、般若天行の写経を求めたり、被告福永の著書を配ったりするものだった。そして、その成果を三〇分ごとに塾長等の指導者に報告した。二四時間行の最後に「頭が取れた」か否か判定が行われ、自己申告で取れたと思う者は挙手をすることとされた。往復のバスの中でも七観行を絶叫していたので、移動の間に仮眠を取ることも許されなかった。
 最終日に、「頭が取れた」か否かを判定する予備会が開かれ、ひたすら七観行を絶叫しながら、「頭が取れた」と思う者は挙手をすることが求められ、挙手をするまで七観行の絶叫から解放されなかった。原告らの中には、頭が取れたとは思えなかったが、手を挙げないと修行から解放されず苦痛が続き、全員が手を挙げないと先に挙手した者も休みを取れないという状況で、他の修行者の圧力も加わって手を挙げざるを得ない雰囲気となり、意味が分からないまま手を挙げた者もいた。その後、判定会が行われ、被告福永や講師などの天仕、以前に研修に参加した者の前で、七観行を絶叫して、講師らが、「頭が取れた」と判定すると修行を終えることができた。原告らは、概ね三回で「頭が取れた」と判定されたが、他の者を勧誘しますと答えて合格することができた者もいた(原告T)。原告らは、気絶してしまった者を除いて皆合格と判定されたが、「頭が取れた」ことを理解した者はいなかった。
 「頭が取れた」と判定された者は、修行からは解放されるが、すぐに帰宅が許されるわけではなく、被告福永から天声が降りたと称して呼び出され、天声の内容を講師の丁川やdらから伝えられ、後述のとおり「家の中心」等の掛け軸を購入するように求められた。原告らの中には、苛酷な修行による疲労困憊で冷静な判断力を欠き、これを購入すると答えてしまった者もいた。
 その後も、一人で帰宅できるわけではなく、地域の支部長らに付き添われて、その間に、「他の者を勧誘しなさい。」「被告福永の著書を配りなさい。」と指示された。原告の中には、「天に会わせるためには、嘘をついてもいいから勧誘しなさい。」とまで言われた者もいた(原告W)。
   (二) 研修中の環境及び苛酷さ
 研修中は、私語を厳禁され、睡眠時間を極端に削られ、食事は弁当が一日二、三食与えられるだけだった。所持品等を預けさせられたが、携帯電話を取り上げられ外部と連絡がとれなくなり、病人は薬を奪われて、薬を飲むことができなかった。
 一〇〇人以上いた研修参加者は、畳の大部屋一室に押し込められ、常時天仕らから監視されて外に出られなかった。睡眠も、毛布が与えられてその場で雑魚寝をする状態だった。入浴や洗顔の時間もなく、トイレに行く時間も決められ、その間にも七観行を唱えた。
 右の環境で苛酷な修行が行われ、失神したり、気分が悪くなって別室に移される者もいた。高齢の者も同様に苛酷な研修をするよう要求された。研修の苛酷さのために帰宅後に体調を崩す者もおり、後記のとおり、本件原告の中にもそのような者がいた。また、研修との因果関係は必ずしも明確ではないが、富士市消防本部による「救急出動状況表」(甲A第七三号証の三)によれば、平成五年から同八年の間に死亡事故三件、傷害事故六件で救急車が出動している。
  6 天声
 研修終了時点かあるいは終了後帰宅してから、被告福永から天声が降りたとして呼び出され、丁川やdなどの講師を通じて「天声」が伝えられた。
 天声は、「法説御法行」、「赤い糸法納」、「家の中心」、「自分の中心」、「解脱法納」、「人類救済師」、「人間社長」等の名称が付された掛け軸などの物品や称号を更なる支出をさせて購入させるというもので、その価額については概ね、「解脱法納」は三〇〇万円か一〇〇〇万円(時期によって額が異なっていた)、「赤い糸」は三〇万円、「人間社長」は一〇〇〇万円、「法説御法行」は一〇〇万円、「家の中心」は二三三万円、「人類救済師」は三〇〇〇万円、「人類救済大賞」は一億円とされ、物品の内容や称号としての価値と客観的経済的価値とを比較すればいずれも極めて高額なものであった。また、別の時期に「天声お知らせ」という書面が届き、二〇〇〇万円の天行力仏舎利を購入させられた者もいた(原告A)。
 原告らの多くは、家の中心と法説御法行のセットを三三三万円を支払って、購入させられた。
 原告らの供述によれば、原告らが、高額な「家の中心」等を購入したのは、苛酷な修行による精神的・肉体的疲労によって判断力が低下しているなか、これらの物品を購入しなければ今までの努力が無駄になると言われ、辛い修行を終え、高額な研修費を払ったのに無駄にはしたくないという心理が働き、あるいは、この場を早く逃れたいという心境でやむを得ず購入の承諾をしてしまったものと認められる。また、帰宅後に「天声」が示される場合には、四泊五日の研修で取れた頭がまた元に戻りそうになっていると説明され、やはり辛い修行と高額の研修費を無駄にしたくないとの思いや足裏診断のときに告知された害悪に対する恐怖のために承諾してしまったと認められる。
  7 その後の経緯
 研修終了後帰宅した原告らは、右のとおり「天声」を示され更なる支出を求められたが、それに加えて他の信者を勧誘するように要求された。中には、他の信者を勧誘するようにと執拗に電話をかけられて、精神的に不安定になってしまった者もいた(原告X)。
 また、苛酷な研修で体調を崩す者もおり、病気などを悪化させた者もいた(原告L、原告E、原告c、原告G)し、母の癌が治ると言われて研修に参加したのに、その研修中に母が死亡してしまい、死に目に会えなかった者もいた(原告Q)。
 原告らの多くは、被告らが病気が治る等の現世的な利益を説いたにもかかわらず、期待した効果が得られなかったため、被告法の華に対して疑問を持ったが、自分が被害にあっていると確信することまではできず、半信半疑の状態にあった。原告らは、それ以前に被告法の華との関係を絶った者もいたが、多くは、平成八年ころのマスコミ報道を見て被告法の華の実態を知り、被害対策弁護団の存在を知って、弁護士と相談し自分のおかれた状況を認識して本訴に及んだ。
  8 支部長研修
 研修に参加し、「家の中心」等の物品を購入し、被告福永から熱心だと評価された者は、さらに支部長になるように勧誘され、一泊二日で三〇万円かかる支部長研修へ参加するように案内が来た。前記のとおり、支部長は足裏診断をすることが許されたので、支部長研修では、戊村から足裏診断の方法の指導があった。この研修でも、戊村は、まず相手の足裏を見て驚き、相手を不安がらせるように指導し、頭を取らせるためには天もそのことを許しているという趣旨の説明をした(原告Aの供述)。
  9 被告法の華における金員の使途
 前記のとおり、被告福永の供述によれば、被告法の華は天納金として六一〇億円くらいを集めたものであるが、この使途は、やはり被告福永の供述で五三一億円が施設取得費等であると説明されるだけで、それ以上は、本件証拠上、十分に解明されたとは認められない(この点に関し、天納金として集めた額は八七〇億円であり、被告福永は約六〇億円を私的に流用していたとの報道がされたこともある。甲A第一〇〇号証の一)。しかしながら、被告福永自身、個人として三億五〇〇〇万円の追徴課税が行われたこと、マザーテレサ等の著名人と謁見するための工作資金として四億七〇〇〇万円余の支払をしたこと、一泊五〇万円もするホテルオークラのスイートルームに年間一、二か月という長期間滞在していたこと、妻がブランド品を買い漁っていたこと等を本人尋問において認めており、この点において、集めた金銭を自己の利益を図るために流用しているといわざるを得ないのである。しかも、前記のとおり、支部長には、信者獲得などの実績に応じて毎月平均五、六十万円の報酬が支払われ、さらに、天声講師であった丁川には、多いときで一〇〇〇万円という多額の天仕般若料が支払われていたのであるから、人類救済のために原告らから支出を求めたという被告らの主張は説得力を欠くといわざるを得ない。

 三 違法性の評価(争点1について)
 1 憲法で保障された信教の自由は、それが内心の信仰にとどまる限り私法秩序上違法と評価されることはないが、宗教的行為として外部的な行動を伴い外界との交渉を生ずる場合には、その行為が、いかに当該宗教上の教義に則り、教義上では正当化されるものであったとしても、市民法の定める法律関係からみて社会的に是認し難い違法なものであると評価され、民法上の不法行為に該当するとされることがあるのは当然である。
 ところで、内心における信仰の外部的発露である宗教的行為について、市民法的立場からその違法性の判断をするに当たっては、もともと宗教が超自然的、超人間的本質の存在を確信し、これを畏敬崇拝する心情と行為と解釈され得るものであることを前提とすれば、信者の勧誘態様や勧誘時に説かれる内容が、科学的知見に照らして荒唐無稽であるとしか理解し得ないものであったり、宗教上の物品や行為に対する支出が経済取引上の対価関係と比較して高額であると評価されるものであっても、その一事をもって直ちに違法性を有するということはできないし、その際に先祖の因縁話や信者に対する害悪の告知と思われる行為があったとしても、許される場合があるというべきである。
 しかしながら、勧誘の際に告知される先祖の因縁話や害悪の内容が極めて具体的であって、相手方の不安を過度にあおり立てるようなものであったり、逆に、科学的には保証し得ない具体的な利益を約束して相手方に過度の期待を持たせるような場合であって、その勧誘の方法が執拗であり、しかも相手方に熟慮の機会を与えることもなく、その結果として、相手方の地位、資力、年齢等からみて一般的には高額であると考えられる額の金員の支出をさせたような場合には、そのような勧誘は社会的にみて許容することができない違法な行為というべきであり、不法行為に該当するというべきである。
 以下、本件における違法性につき、項を改めて検討する。
  2 被告法の華の宗教的行為の問題点
   (一) 勧誘態様
 前記認定のとおり、被告福永らは、原告らを勧誘するに当たって、事前に原告らの悩みを把握した上で、足裏診断という医学的に根拠がありそうな体裁を装った上で、また、内部的にはマニュアルを作成して組織的に、癌になるなど原告らの悩みに対応する具体的な害悪を告知していて、そのため右害悪を告げられた原告らは極度の不安を抱かざるを得なかったし、また、研修に参加することで癌などの重病が治る等の現世的利益を断定的に説かれた原告らは、重篤な病を持つ自分や家族の病気快癒という叶わない希望を持つことになったのであって、このような具体的かつ断定的な勧誘方法は、脅迫的ないし詐欺的であるということができるのであり、被告らの勧誘行為の違法性を判断する重要な要素であるといわざるを得ない。しかも、原告らに対する勧誘の中には、相手がノイローゼになるほど多数回の勧誘をしたり(原告I、原告H)、数時間にわたる勧誘を行ったり(原告J、原告U)、前記のとおり、父親を騙しても金員を用意するよう言ったり、サラ金から金を借りさせ、挙げ句には銀行までついていって金をおろさせたりする執拗さを見せているものもあって、原告らの中だけでもこのように勧誘方法に問題がある場合が多々見られるということは、全体として、被告福永らの勧誘は、それ自体社会的に相当とされる範囲を逸脱した、余りにも過度な方法でされていたものというべきである。
   (二) 即断・即決・即納を迫ること
 さらに、前記のとおり、前記勧誘を行った上で、被告福永らは、研修の内容を一切説明せずに、原告らにひとまず研修に参加する旨答えさせ、その上で通常二二五万円と高額の研修費を伝え、二四時間ないし七二時間以内に支払わないと効果がなくなると極めて短時間で判断するように迫り、家族などと相談することを許さないなどとしているが(例えば、原告H)、前記勧誘の態様と併せて考えれば、即断・即決・即納を迫ることは、前記勧誘によって動揺させられ、自由な意思決定が阻害されていることに乗じて、高額の研修費を払わせることを狙った手段であると見ざるを得ない。
   (三) 研修の苛酷さ
 このようにして、事前に高額の研修費を支払い、内容を知らされることなく参加した研修は、前記認定のとおり、天仕らが常時監視するなかで、睡眠時間を極端に削られ、薬を奪われ、大声を出し続けさせられるなど苛酷なものであり、また、路上で土下座をさせられるなど屈辱的な気持ちにさせられるものであって、自らの信念で苦痛などを伴う修行を行う場合とは質的に異なるといわざるを得ないのである。そして、その結果、体調を崩したり、親の死に目に会えなかった原告がいることや、救急車が出動していることは前記認定のとおりである。
   (四) 結果の重大さ
 前記認定のとおり、原告らは様々な勧誘をされたが、それらはいずれも金銭の支出に向けられており、しかもその額は、何百万円、何千万円と、一般的に考えても、また、原告らの具体的地位、資力、年齢等を考えても、非常に高額であって、このような多額の支出を求める場合には、勧誘態様における適正さも、より厳しく要請されるというべきである。
 また、原告らは、このような多額の金銭的な支出を求められただけでなく、前記認定のとおり、自己の抱える悩みを助長する害悪を告知されて不安を抱き、傷つき、苛酷かつ屈辱的な研修に参加することによって肉体的・精神的苦痛を被り、さらに、研修後も体調を崩すなど種々の不都合を被ったのであって、その結果は単なる金銭的な被害にとどまるとはいえない。
   (五) 集めた金銭の使用状況
 そして、このようにして集められた金員は、前記認定のとおり、被告福永らの個人的利益を図るために流用された部分も相当にあると考えられるのであって、被告法の華は人類救済のために活動している宗教法人であり、その活動のために原告らからの支出を求めたという被告らの主張は、説得力を欠くといわざるを得ないのである。
   (六) 宗教性の秘匿
 前記認定のとおり、被告福永らは、原告らを勧誘するに際して、宗教ではないかと問われても、一貫して自らの宗教性を否定し、研修に参加する際の支出自体が修行であるとの本訴における被告らの主張を、勧誘に当たっては説明していないことなどからすれば、被告法の華の態度は明らかに宗教性を秘匿しているものと認められる。被告福永は、既存の宗教とは異なるという意味で宗教としての認識が希薄であると供述するが、既存の宗教と異なるから宗教とは言わないとの説明が原告らとの関係で一切なされておらず、むしろ医学的根拠があるものと紛らわしい足裏診断という体裁を取って原告らを勧誘したり、著書に「生態哲学博士」との肩書を用いていたことからすれば、「既存の宗教」とは異なるために宗教と呼ばないというのではなく、「科学的な根拠を必ずしも有しているわけではないという意味における宗教」とは異なる(つまり一定の科学的な合理性があるもの)と誤解が生ずることを狙ったから宗教と呼ばなかったと考えるのが素直である(このため、他の宗教を信仰している者も研修に参加したことは前記のとおりである。)。
 しかしながら、原告らが支出をするか否かという意思決定をする場合、それが修行ないし信仰心の発露として宗教家ないし宗教団体に対して支出するものであるかどうかは重要な要素として考慮されなければならないし、また、宗教に対する入信を決意して支出をする場面においては、その宗教がどのような教義に則っているものか知らされなければ、真意に基づく意思決定が行われたとは認め難いといえるから、宗教への支出を勧誘する者は、自己の宗教性を否定して勧誘すべきものではなく、宗教性を秘匿して勧誘し支出を求めることは、他の要因とも相まって、違法との評価を受けることがあるというべきである。
  3 まとめ
 以上のとおり、被告法の華において、原告らを勧誘するに当たって、宗教性を秘匿し、詐欺的・脅迫的な態様で、執拗に勧誘し、被告法の華の研修に参加し研修費を払うか否か即断・即決・即納を迫り、苛酷な研修を体験させ、高額な支出をさせ、その金銭を被告福永らにおいて自己の利益を図るために用いるなどしているのであるから、被告法の華の活動は、少なくとも右のような方法で原告らからの高額の支出を求めた点で、社会通念上相当性を逸脱しており、違法性を有することは明らかであるといわなければならない。

 四 被告らの責任について(争点2について)
  1 被告法の華の責任
 被告福永は、一貫して「天声」に基づいて原告らを勧誘したと供述しているところであり、被告法の華の教義の中心である「天声」に従ったというのであるから、本件原告らに対する勧誘は、被告法の華の信者ないし被告福永により被告法の華の教義に従って行われたことは明らかであり、被告法の華は、民法七一五条一項に基づく責任を負う。
  2 被告アースエイドの責任
 被告アースエイドの出版した「病苦を超える最後の天行力」等の被告福永の著書が、多くの原告に被告法の華に興味を抱かせ、添付の葉書や電話番号を通じて、被告法の華と接点を持たしめ、被告法の華の信者において同書を配布することで新しい信者を獲得していたという状況が認められ、また、被告アースエイドは被告法の華の傘下の企業として、別法人の形式を取りながらも書籍の出版という形で被告法の華と軌を一にする活動を担ってきたのであるから、その代表者である被告星山及び従業員らの行為を前提として、民法七一五条一項に基づき責任を負う。
  3 被告福永の責任
 被告福永は、被告法の華の教祖かつ代表役員であったのであり、唯一「天声」を聞ける者として、主導的な地位において前記違法行為を担ってきたものであり、民法七〇九条、同法七一九条に基づき不法行為責任を負う。
  4 被告井本の責任
 被告井本は、被告福永の実母であり、被告法の華の理事かつ責任役員の地位において、被告法の華の経理の大部分を統括していたのであり、また、株式会社さくら新聞の代表取締役として被告法の華を周知せしめ、被告法の華発行の「天声」と題する雑誌に寄稿し(乙第一号証の一ないし四)、天授式に参加して盛り上げる(甲B第二二号証の一)などして被害拡大の契機をつくったのであるから、被告福永と共同して、前記違法行為を担ってきたというべきであり、民法七〇九条、同法七一九条に基づき不法行為責任を負う。
 5 被告東川の責任
 被告星山は、昭和五五年の終わり頃から被告法の華と接点を持ち、同五七年に被告福永に弟子入りし、以後、被告福永と行動をともにし、宗教法人設立後は、被告法の華の理事かつ責任役員並びに被告アースエイドの代表取締役の地位にあった者であり、被告福永に次ぐ地位にある者として被告法の華の前記違法行為を担ってきたのであるから、民法七〇九条、同法七一九条に基づき不法行為責任を負う。
  6 被告丙山の責任
 被告丙山は、被告法の華の理事かつ責任役員であり、また、前記認定の苛酷な研修を担当する部署である般若塾の塾長の地位を占めていた者であるから、被告福永と共同して、前記違法行為を担ってきたと認められ、民法七〇九条、同法七一九条に基づき不法行為責任を負う。

 五 損害について(争点3について)
  1 支出額
 原告らが、別紙請求金額一覧表「出捐額」欄記載のとおり支出したことは当事者間に争いがなく、右支出額は、被告法の華の一連の不法行為によって生じたものと認められるから、その全額が損害となる。
  2 慰謝料
 原告らは、各々悩みを抱えていた状況で、前記認定のとおりの害悪の告知を含む勧誘をされ、不安を増長させられ、苛酷な研修に参加させられて心身ともに疲弊させられ、高額の資金を喪失するなどしており、その精神的苦痛は、支出額相当の金銭賠償を受けただけでは慰謝するに足りないというべきであり、本件事案における諸般の事情に鑑みれば、別紙認容金額一覧表「慰謝料」欄記載のとおりの慰謝料を認めるのが相当である。
  3 弁護士費用
 本件事案の性質を考慮すれば、被告らの行為と相当因果関係のある損害としては、別紙認容金額一覧表の「弁護士費用」欄記載の各金員と認めるのが相当である。

 六 消滅時効について(争点4について)
 被告らは、原告A(原告2)、原告B(原告3)、原告C(原告7)、原告D(原告9)、原告E(原告12)、原告F(原告25)、原告G(原告30)に対して、原告らの支出行為時を起算点として、三年の消滅時効を主張しており、支出行為から三年が経過していることは認められる。
 しかし、不法行為に基づく損害賠償請求権の起算点たる「損害及ヒ加害者ヲ知リタル時」とは、単に損害を知るにとどまらず、加害行為が不法行為であることをも併せて知ることを要すると解すべきであるところ、本件のように組織的にされた不法行為の場合は、被害者である原告らにおいて事実関係を把握するだけの情報や資料等を入手することは極めて困難であるのみならず、宗教的行為において詐欺的・脅迫的勧誘が行われた不法行為においては、当該宗教行為を教義の一環として受け入れている限り不法行為であると認識できないから、当該宗教における教義を信仰する心理状態が継続している限りは、時効は進行しないというべきであり、原告らにおいて、右心理状態から解放された時期は、マスコミ報道等を見て被害対策弁護団の存在を知り、同弁護団の弁護士と相談した時点であると考えられるから、平成八年の時点で弁護士と相談し、平成九年一月に提訴している本件においては、消滅時効は完成しておらず、被告らの主張は理由がない。

第四 結論
 以上によれば、その余の点につき判断するまでもなく、原告らの主位的請求は別紙認容金額一覧表の認容額合計欄記載の各金員及びこれらに対する各原告への不法行為があった後である同一覧表の「遅延損害金起算日」欄記載の日からそれぞれ支払済みまで年五分の割合による金員の支払を求める限度で理由があるから、その限度でこれを認容し、その余の請求は理由がないからこれを棄却することとし、主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官・佃 浩一、裁判官・石井俊和、裁判官・西村 修)

別紙 各原告の状況3~13〈省略〉
   各原告の状況15~31〈省略〉

別紙 各原告の状況1
 一 甲田花子(原告番号1)
 生年月日:昭和二五年二月三日生 性別:女 当時の職業:書店経営
 二 原告主張の被害額
 1 出捐額 合計二三二万一〇〇〇円(当事者間に争いなし)
  (1) 手帳・写経セット
            五万一〇〇〇円
  (2) 足裏診断料 二万〇〇〇〇
  (3) 研修参加費
        二二五万〇〇〇〇円
 2 慰謝料   二三万二一〇〇円
 3 弁護士費用 三四万八一五〇円
 4 請求額合計 二九〇万一二五〇円及びこれに対する平成八年七月三一日から支払い済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金
 三 証拠
 甲B第一号証の一、二、乙第二〇号証、証人iの証言、原告甲田花子本人尋問の結果、弁論の全趣旨
 四 認定事実
 1 悩み事等
 平成七年三月末ころ、医者から乳癌の疑いがあると診断され、同年四月二七日に乳癌の手術を受けた。原告は、術後に医者から乳癌は再発の恐れがあるから検査を定期的に受ける必要があると説明され、以後、癌の再発を恐れるとともに、家族にも負担をかけているとの負い目を感じていた。
 また、原告は、昭和六〇年ころから平成五年ころまで、夫の父及びアルコール中毒から精神障害を生じてしまった夫の兄の世話をせざるを得ない状況におかれ、心労を感じ、精神的に参っていた。
 2 契機
 原告は、上記の病気や家庭生活のことで悩みがあり心労を抱えていたため、平成八年四月ころ、その題名にひかれて、自己の経営する書店にあった被告福永著の「病苦を超える最後の天行力」を手にして読んだ。原告は、天行力の修行によってすべての悩みが解決され、人類が救済されるという内容を読んで、癌の再発を防げるかもしれないと、藁にもすがる気持ちで、その本に挟んであったアンケート葉書に住所、名前等を記載して送付した。
 3 足裏診断までのかかわり
 原告が葉書を送付すると、被告法の華から、「さくら新聞」や「ゼロ・パワー」という雑誌が送付された。原告は、これらの雑誌に記載されていた病気を克服したという体験談を読んで、天行力で癌は治ると思いこむようになり、同年五月二日、雑誌に紹介されていた「あさなる天行力三法行セット」(天行力手帳、写経用の帳面、天珠、ビデオテープがセットになったもの)を葉書で申し込み、五万一〇〇〇円を振り込んだ。
 その後、「専門講師があなたのすべてを把握し、具体的な解決案を提示する。」と記載された足裏診断の案内が送られてきたので、電話で予約をとり、同年七月三〇日、渋谷の東急本店横にある第二アースエイド会館の場所を案内された。原告は、診断料二万円を現金で支払い、アンケート用紙に癌の再発や家庭生活の悩み事を書いた。原告は、iと名乗る男性から、悩み事を記入したアンケート用紙を見ながら、一五分くらい悩み事について質問された。
 4 足裏診断の状況
 その後、別室に通され、iとj講師の立会いの下、k講師から足裏診断を受けた。
 kは、原告の足裏を一瞥して、即座に「ほめられた足裏ではありませんね。」と言い、三人から口々に「五代前からの先祖の生き様が悪い。」「このままだと駄目だ。」「家族もバラバラになってしまう。」「癌も再発するに違いない。」と断定された。さらに、kは、金額については触れずに、「研修会に参加して頭を取るしかない。」と言い、原告が「参加する。」と答えると、「参加費は二二五万円で、二四時間以内に用意しないと効果がない。」と言った。原告が「夫には借金もあるのに、そんな大金はとても用意できません。」と答えると、三人は再び「癌が再発して死んでしまう。修行をすれば癌も治る。末期癌の人でも助かった人がいる。借金をしてでも参加しなさい。」と責める口調で言い始めた。原告は、福永一郎がローマ法王と対談したり、ガンジー平和賞を取ったという「さくら新聞」の記事を見ていたため、被告らが嘘をつくはずがないと思い、kらの言葉を信じてしまい、今までの生活の苦しさや、癌再発の恐怖が一挙に込み上げてきた。そして、原告は、参加費が高いのも自分の悩みが大きいせいだと思い、苦しさから逃れたい一心で、研修の内容を知らされることなく、研修に参加することを約束させられてしまった。
 原告は、その場で四〇〇〇円を現金で支払い、翌日、姉の夫から借金をして研修費の残金二二四万六〇〇〇円を振り込んで支払った。
 5 研修会の状況
 原告は、同年八月四日、静岡県富士市での研修会に参加した。研修会には、二五〇人から三〇〇人くらいの参加者がいた。修行参加者受付証(乙第二〇号証)に記入させられ、Tシャツを着せられ、私語を厳禁された。修行は、塾長と名乗る人物が進行し、二十数名の指導員が補助して行われた。修行では、七観行を繰り返し唱え、その他に説法を聴き、写経を行った。修行の最中に「頭が取れたか。」と何度も聞かれ、挙手をしないといつまでも修行を終わらせてくれなかったため、原告は、意味が分からないまま手を挙げた。原告は、こんなことで本当に癌が治るのかと次第に疑問を感じながらも修行を行った。
 6 その後の経緯
 原告は、同月八日に帰宅すると、夫から、被告法の華が研修参加の名目で大金を取る被害が続出しているとの新聞記事を見せられ、借金までして修行に参加したことを叱られた。原告は、上記記事を見て、自分の感じた研修の内容に対する疑問と相まって、騙されていたと思い、提訴に及んだ。
各原告の状況2
 一 A(原告番号2)
 生年月日:昭和一〇年一〇月三一日生 性別:男 当時の職業:会社役員
 二 原告主張の被害額
 1 出捐額 合計二六一四万一一四八円(当事者間に争いなし)
  (1) 頭を取る説明会参加費
              二五〇〇円
  (2) 足裏診断料 三万〇〇〇〇円
  (3) 研修参加費
          一二五万二三二八円
  (4) 家の中心代
          三三三万四〇二四円
  (5) 徳積み法納代
           七〇万〇〇〇〇円
  (6) 天行力仏舎利代
         二〇〇〇万二〇六〇円
  (7) 法洗行定め加入代及び維持会費
           五一万八六一八円
  (8) 支部長研修代
           三〇万一六一八円
 2 慰謝料    二六一万四一一五円
 3 弁護士費用  三九二万一一七二円
 4 請求額合計 三二六七万六四三五円及びこれに対する平成六年一〇月二〇日から支払い済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金
 三 証拠
 甲B第二号証の一ないし五、乙第一五、一六号証、原告A本人尋問の結果、被告福永本人尋問の結果、弁論の全趣旨
 四 認定事実
 1 契機
 平成元年ころ、原告は、書店で被告福永著の「なぜ金持ちにならないのか」「三六五日で成功する本」という本を購入し、平成五年一月に、何となく同書を読み直し、記載されていた連絡先に電話したところ、天行力手帳を買うように勧められて購入した。その後、ゼロの力学からダイレクトメール等が送付されるようになり、「頭を取る説明会」開催の案内が届き、同年一一月一九日、二五〇〇円の参加料を支払って参加した。説明会では、l天仕が原告の足裏診断を行い、「このままでは人生に行き詰まる。足の斑点がちょっと病気の前兆がある。先生に会って問題を解決してはどうか。」と被告福永に会うように勧めた。原告は、l天仕の言葉に不安を感じ、被告福永に会うことにした。
 2 被告福永の足裏診断
 原告は、指示された同月二三日、面談料三万円を支払って被告福永から直接足裏診断を受けた。被告福永は、原告の足裏を見るなり、「このままじゃ、くも膜下出血で倒れる。」と断定した。原告は、著書を読んで被告福永を偉い人物だと思っており、純粋に聞き入れる気持ちになっていたため、被告福永の言葉に動揺し、自分の年齢も考えて、くも膜下出血に倒され家族に迷惑をかけると思い心配でたまらなくなった。
 診断後、別室に移され、m天仕が、「研修に行けばくも膜下出血もしない。研修を受けなければ治らない。」「研修費は一二五万円。」と言ってきた。原告は、高すぎると反発したが、m天仕に更に説得され、くも膜下出血に対する不安な気持ちから研修に行くのも仕方がないと思うようになり、翌々日の同月二五日に、一二五万円を振り込んだ。
 3 四泊五日研修
 原告は、同月二七日から四泊五日の天声村における研修に参加した。私意書(乙第一五号証)に署名指印した後、被告福永の二時間の講義を受け、「七観行」を絶叫させられるなどした。研修期間中、睡眠時間を極端に削られ、研修が終わるころには、疲労困憊し、ふらふらになっていた。最終日に、「苦の行」と称する目隠しをして三時間続けて般若天経を読経する特訓をしていたところ、n講師から被告福永の下に案内された。原告の目の前で、被告福永が、「天声」を紙に書いて(甲B第二号証の二)、n講師に渡した。原告は、n講師とともに天地堂という特訓場に戻り、同講師から被告福永の言葉を伝えられた。同講師は、原告はこのままでは、苦を刻む生活になってしまうから、家の大掃除をしなければならないと天声で示されたと説明した。同講師は、家の大掃除のために、「家の中心」を定め、「徳積み法納」をするよう勧めてきた。「家の中心」を定めるためには、三三三万円支払って、掛け軸を買わなければならず、「徳積み法納」をするためには、七〇万円でネックレスを買わなければならなかった。原告は、再び高額の金額を提示され簡単には承諾できなかったが、睡眠不足で心身ともに疲れ果て、精神的余裕がない状態であったため、これほど辛い修行をようやく終えたのに、掛け軸やネックレス代を惜しんだがために修行の功徳が半減し、くも膜下出血に倒されては大変だと思って、承諾してしまった。その場で、現金三万円を渡し、残金の四〇〇万円は、経営している会社が受けられる特別融資を利用して調達し、同年一二月一九日に振り込んで支払った。
 4 天行力仏舎利の購入
 平成六年四月二〇日過ぎころ、原告の下に、「天声お知らせ」と題する案内書が送付され、天より選ばれた七〇家に天行力仏舎利が授けられることになったという趣旨の記載があり、名乗り出るように書かれていた。原告は、仏舎利を手元に置くことで天の力がもっと自分に流れ込み、すべてが好転すると信じ、希望する旨の「天伺い」と題する手紙を投函した。そして、同年五月九日、n講師から電話があり、「Aさんおめでとうございます。Aさんに天行力仏舎利が授かることになりました。」と言われ、原告は天にも昇る気持ちになった。ところが、n講師から「定めは二〇〇〇万円です。」と言われ、余りにも高額であったため、黙り込んでしまった。するとn講師は、「仏舎利はこれまで日本には三井と三菱にしかなかったが、それが日本で三番目に天声村に頂いた。今回、その仏舎利に一郎先生が天行力をあてると奇跡がおこり、一個が一〇〇個に増えた。これを、七〇家に配ることになったが、Aさんはそのうちの一家に選ばれたのです。未来永劫幸せになれるのなら、二〇〇〇万円は安いものではないですか。」と説得してきた。原告は、二〇〇〇万円もするのも仏舎利が霊験あらたかな本物であるためだろうと考え、病気に対する不安やA家の発展を願う気持ちがあったため、結局承諾してしまい、様々な知人から借金をして何とか分割で支払った。
 5 法洗行
 その後、天のパワーが体内を流れるようになるという温泉に入る修行をすることになり、加入金五〇万円と維持会費一万八〇〇〇円を振り込んで支払った。
 6 支部開設
 同年一〇月に、被告法の華では支部制を取ることになり、o本部長から支部長研修会に参加するように言われ、一泊二日の支部長研修会に三〇万円支払って参加した。被告法の華では、支部長も足裏診断ができることになっていたので、支部長研修では、p講師から、足裏診断の方法の指導を受けた。足裏診断をするときには、「まず、相手の足裏を見て驚き、不安がらせろ。頭を取らせるためにはうそも天は許すんだ。」という趣旨の指導をされた。
 7 その後の経緯
 その後、原告は、マスコミで、二〇〇〇万円も払って購入した仏舎利内に安置している骨が化学分析の結果釈迦の骨でないことが明らかとなったと報道されたのを見たりして、被告福永に騙されていたと思うようになり、平成八年九月に脱会し、提訴に及んだ。
 また、自分が勧誘した一七、八名に対しては、申し訳ないとの気持ちを持っている。
各原告の状況14
 一 N(原告番号15)
   生年月日:昭和一八年四月五日生 性別:女 当時の職業:パート
 二 原告主張の被害額
 1 出捐額 合計一二四五万〇〇〇〇円(当事者間に争いなし)
  (1) 足裏診断料一〇万〇〇〇〇円
  (2) 研修参加費用
          二二五万〇〇〇〇円
  (3) 足裏診断料一〇万〇〇〇〇円
  (4) 解脱料一〇〇〇万〇〇〇〇円
 2 慰謝料  一二四万五〇〇〇円
 3 弁護士費用一八六万七五〇〇円
 4 請求額合計 一五五六万二五〇〇円及びこれに対する平成六年一二月三〇日から支払済みまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金
 三 証拠
 甲B第一五号証の一、二、乙第一七ないし一九号証、原告N本人尋問の結果、被告福永本人尋問の結果、弁論の全趣旨
 四 認定事実
 1 悩み事等
 原告は、長女と次女の三人家族である。原告の次女は、仮死状態で出生したためか、成長が遅く言葉がほとんど話せず、病院巡りをしたが治療法がないと言われ、現在は、茨城県北相馬郡の精神薄弱者援護施設に入所している。
 原告の離婚した夫が、酒浸りで、朝から飲んで家族に暴力をふるったため、原告は、毎日やむなく次女を背中におぶって働きに出た。そのような状況で、原告は、次女の面倒を十分にみられなかったと悔やんでいた。結局、原告は夫の酒乱に耐えかねて、昭和五九年に、長女と次女を連れて家を出て離婚し、女手一つで娘達を育てた。
 原告は、次女が幼少のころもっと面倒をみてやれていたら次女の状態はもっと改善されていたのではないかと思い、いつも次女にすまないと思っていた。次女は、精神薄弱者援護施設においても、最重度の障害と判定され、「アー」とか「ウー」とかの声しか出せず、言葉は全く話せなかった。さらに、病弱でてんかんに似た発作(意識喪失)をおこしやすい状態にあり、施設から年に五週間帰省するが、その時は、はれものを扱うように接していた。原告は、次女の状態を少しでも治してやりたいと願うとともに、自分の死後の次女のことを考えて悩んでいた。
 2 契機
 原告は、平成六年一〇月ころ、牛久駅出口で「病苦を超える最後の天行力」を無料で配布され、読んだところ、天行力の修行によってその一家の病気がどんなことでも治ると書かれており、興味を持って同書に挟んであったカードに記載されていた説明会に参加することを決めた。
 3 足裏鑑定までのかかわり
 原告は、同年一一月ころ、説明会に参加すると、支部長のqが、原告の悩み事や家族構成を聞いてきた。qから足裏診断をうけたところ、「足の形も色艶が悪い。病気があるようだから、もう一度福永先生によく足の裏をみてもらって、天行力を通してもらう方がよい。」と言われたので、「でもお金がかかるんでしょう。」と聞き返すと、「一〇万円かかります。しかし福永先生は一生に一度しかみてくれませんよ。」と言った。原告は、当時の月収が一四、五万円であったため、一〇万円は大金であり、すぐに受けるとは答えられなかった。しかし、qとその妻から数回にわたり原告方に電話があり、天行力のすばらしさについてしつこく説明されたため、原告は、被告福永の足裏鑑定を受ける気になった。そして、同年一二月、アースエイド松濤会館に赴き、アンケート用紙(診断カルテ(乙第一九号証))に、家族構成や仕事内容、次女の病気のことを記載し、一〇万円を支払った。
 4 足裏鑑定の状況
 原告が被告福永と対面すると、被告福永は、原告を一目見るなり、「苦労してきたな。天行力を通すから」と言って、原告の頭に五秒間くらい軽く触れ、「天行力が全然通らない。一〇のうち三くらいしか通らない。このままいったら癌になる。」「今年最後の特訓があるからすぐに行きなさい。そうすれば治る。」と断言した。そして、被告福永は、原告の足裏に触り、「色艶も悪いし弾力もない、親指も曲がっているから先祖からの血の受け継ぎが悪い、特訓に行くしかないな。」と言い、後方で控えていた若い女性に「細かいこと説明してやってくれ。」と指示をした。原告は、癌になると言われて涙が止まらなくなり、自分に何かあったら次女の面倒は誰がみるのかという不安で、特訓に行かなければならないという気持ちになっていた。その女性は、「特訓は四泊五日で、参加費は二二五万円です。」とだけ説明し、日程表や振り込み先の口座番号を印刷した紙等を交付して、「いまから七二時間以内に送金してください。」と言った。
 5 研修の状況
 原告は、郵便貯金等を解約して二二五万円を工面し、つくば市の郵便局から送金した。同月二三日からの四泊五日研修に参加し、まず、私意書(乙第一七号証)に記入した。研修では、Tシャツを着せられ、私語が厳禁され、七観行を絶叫するなどした。原告は、次女の体が治るようにと一生懸命修行を行った。
 6 次女を足裏診断に連れていった状況
 研修後、qから頻繁に電話がかかり、qから勧められて、次女を被告福永の下に連れていき、一〇万円支払って、次女にも天行力を通してもらった。被告福永は、次女の頭に軽く触れ、「天行力が通らない。先祖の霊が皆この子に来ている。特訓を受ければ、すぐ良くなり話せるようになる。何で今まで放っておいた。」と言ったので、原告は、「この子はとても特訓には耐えられないです。」と答えた。すると、被告福永は「じゃあ解脱だ。細かいことは後で別室で説明してやれ。」とjに指示した。別室でjは、「解脱」について、「五代前からの先祖が地獄界で苦しんでいる。その数は百人くらいで、その苦しみがこの子にかかってきている。先祖の霊を天上界に引きあげてやればこの子は言葉を話せるようになり、身の回りのことも自分でできるように絶対になる。解脱には一本必要です。」と言った。原告が、一本とは何かと尋ねると、「一千万円のことです。」とjは答えた。原告は、その金額に驚いたが、jに何度も次女が本当に治るのか確認すると、jは「大丈夫だ、そういう人は何人もいる。」と答えた。さらに、「途中でやめると、先祖にすごい傷を負わせることになるから」と言った。原告は、次女を助けたいという思いと、払わないと恐ろしいことになるという思いで、どんな工面をしても、一千万円払わなければならないと思った。そして同年一二月三〇日、全財産七〇〇万円に三〇〇万円借金をして一千万円を工面し松濤会館に持参し、被告福永に直接手渡し、私意書(乙第一八号証)に署名指印させられた。
 7 その後の経緯
 その後、次女の状態が少しも改善せず、jに何度も電話したが、jは、「それはあなたが自分を出すからいけない。」と言うばかりで、次第に取り合わなくなった。原告は、大金をはたいても次女の状態が改善されなかったので、次第に疑問を感じ、被告らに騙されたと考えるようになり提訴に及んだ。