「急増するクレジット被害」 1998年12月15日号 UP99/03/22 最終更新03/03/30 本文約1300字 MAC||HOME |
リード 現金不要のクレジットカードは、現代人の必須アイテムの一つ。インターネットでの利便性も大きい。しかし弁護士会の110番に殺到する被害相談を見ると、大きな落とし穴も見えかくれする。実際に被害にあったときの対処方法を探ってみよう。 「米国の業者から、突然心当たりのないクレジットの請求がきた。クレジット会社に相談したら直接業者と交渉してほしいと言われた。米国の会社とどうやって相談してよいかわからない」 1998年10月30日、僕の所属する第二東京弁護士会が開催した「インターネット・マルチメディアトラブル110番」に56件もの相談が殺到した。事前に受け付けたメールでの相談も21件に達した。1998年3月に開設した110番の相談がメールと電話をあわせて22件であったことを考えると、インターネット上のトラブルが急増していることがわかる。今回はこの110番の内容を取り上げたい(正式な集計結果は、二弁のホームページ参照)。 今回の電話相談で特筆すべきは、56件の相談のうち30件までもが、クレジットがらみの相談であったことだ。クレジットカードとインターネットが結びつくことでインターネットは金になる商売となり、インターネット上の取引がますます活発化している。 クレジット会社にとってもインターネットは新しい市場だ。これまでクレジットカード利用の経験がなかった人までもが、プロバイダーとの契約などでクレジットカードの利用をせざるを得なくなった。インターネット上の取引では、その多くが、カード番号、名義、有効期間などを打ち込むだけで決済される。でもよく考えると、暗証番号が不要のこうした簡単な方法は、他人が自分のカードの内容を勝手に打ち込むことも可能にした。 「2年前に有料ホームページに入るのにカードを使ったが、最近、米国の通販業者から知らない請求が来ている」「インターネットで商品を買ったが、最近別の会社から毎月請求が来るようになった」110番に寄せられたこうした相談は、過去インターネット上で決済したカードの情報が不正に利用された可能性が高い。 相談者の中には、パソコンさえ持っておらず、インターネット上の決済の経験もない人さえいた。カードの不正使用は、詐欺罪(10年以下の懲役)などの犯罪となるが、海外での犯行にはお手上げの状態。こうした点を見越しての海外での不正使用が横行しているのだ。 「業者と直接交渉してほしい」 こうした問題を消費者が相談すると、クレジット会社はまずこう答える。多くの消費者は、英語で米国の業者と交渉することは不可能。結果的に泣き寝入りとなる。しかしそもそも使っていないクレジットカードの支払い義務は全くないはずだ。そのうえクレジット会社は、自分と提携している業者がどんな理由で決済を要求しているのかくらい、調査すれば簡単にわかる。 どうやらクレジット会社は、調査のために要する労力や費用、そしてカードの不正利用が判明したときの保険適用-それは翌年の保険料に跳ね返ってくる、そうした経費増をできるだけ避けたいようだ。 だから消費者がクレジットの引き落としを拒否するなど強きに出ると、とたんに調査を開始する。クレジット会社も損をする可能性が出るからだ。どうしてもクレジット会社の対応が悪いなら消費者センターに相談するのもよいだろう。ともあれサービス産業の何たるかを忘れたクレジット会社の態度には疑問を感じる。猛省を求めたい。注1 以下の注は、03/03/30現在のものです。 注1 この稿の事後談は、1999年7月1日号「巨大クレジット詐欺・N-BILL事件の教訓」参照。 |