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近未来通信被害対策弁護団
弁護団の見解

近未來通信の組織的詐欺について


2006年12月2日



近未來通信被害対策弁護団

事務局次長 弁護士 山 口 貴 士



1 組織的詐欺の実態


(1)近未來通信は、ネット技術を使って通話料を安くするIP電話事業を展開しているという触れ込みで、「IP電話中継局オーナーシステム」と称する事業を展開するとし、「中継局オーナー」に対し多額の金銭を払い込ませ、IP電話利用者から徴収する通信料収入をもとに毎月、多額の配当金を支払うと称していた。

近未來通信は、会社組織ぐるみで最先端のIT企業であるかのように装い、「中継局オーナー」を勧誘するに際しては、

「投資1年後には毎月100万円近い配当金がある」

「2、3年で元はとれる」

「設備の更新費用はかからない」

などと虚偽の説明をしていた。

(2)しかし、実際には、IP電話利用者から徴収する通信料収入をもとに配当金を支払うのではなく、新しく「中継局オーナー」となった者から集めた資金の大半を配当に回す自転車操業状態であった。「中継局オーナー」に対しては、毎月「中継局還元計算書」という書類が送付されており、もっともらしく数字が列挙されていた。しかし、これらの数値は、近未來通信が適当に創作したものであり、「IP電話中継局オーナーシステム」には事業としての実体は全くない。

(3)近未來通信は、オーナーを増やすため新聞、雑誌、テレビに広告を出し、全国のホテルなどで説明会を開催し、この数年で約3000人の被害者から、400億円にものぼる金銭を集めたとされている。

2 これまでの経緯と現状

(1)近未來通信は、本年9月4日の時点において、配当の支払いを滞らせ始めた。東京地方裁判所は、本年10月10日付で近未來通信の銀行口座に対する仮差押決定を出しているが、その決定の中で、「IP電話中継局オーナーシステム」が実体のないものであることを明確に認定している。また、同様の決定は、大阪、名古屋、群馬においても出されている。裁判所においては、近未來通信が展開している「IP電話中継局オーナーシステム」が実体を欠くことは常識となっている。

(2)近未來通信は、今年の11月6日には、「還元金のお支払いに関して」と題する文書を「中継局オーナー」に送付しており、支払いの延期を一方的に通告した上で、自転車操業の破綻を自認した。石井優社長は逃亡し、本年11月15日には、石井優社長を除く全役員(取締役及び監査役)が辞任し、近未來通信は完全に機能不全に陥っている。本年11月20日に至っては、近未來通信の本社は事実上閉鎖され、電話すら通じない状態になっている。30日には、これまで近未來通信の代理人として活動してきた玉木賢明弁護士が辞任しているが、玉木弁護士は辞任の理由の中で、近未來通信が「事実上会社としての機能を果たしておらず、また同社代表者並びに役員とは連絡が取れない状況になった」ことを挙げ、その旨を裁判所にも連絡している。

(3)また、本年11月27日に総務省により立ち入り検査が行なわれた。同30日にその結果が総務省のホームページ上において公表されている。

検査の結果、平成17年7月期における同社の電気通信事業収入は、全売上高181億円中3億円程度であること、国内外112箇所に設置された2466台のサーバーの内、総務省が稼動を確認できたサーバーは2台だけであり、近未來通信が「中継局オーナー」に支払っていた配当の原資は通話料金ではなく、サーバーそれ自体の売り上げに基づくものであること、つまり、新たに「中継局オーナー」になった者が払い込んだ金銭を従前からの「中継局オーナー」の配当に充てている自転車操業状態であることが明白となった。

3 法律上の評価

(1)刑事

  ① 詐欺罪(刑法246条1項)(10年以下の懲役)

  ② 組織的詐欺罪(組織的犯罪処罰法第3条1項9号)(1年以上20年以下の懲役)

  ③ 出資法第8条1項2号違反(3年以下の懲役若しくは300万円以下の罰金又はこれらの罪の併科)

(2)民事

実際には事業としての実体がないにもかかわらず、あたかも事業としての実態が存在するかのように装い、本件業務協約書、本件業務委託契約書を締結させて多額の金員を支払わせている。詐欺及び不法行為が成立する。また、代表取締役にも賠償責任があるほか、他の取締役等の役員にも賠償責任が考えられる。                      

以上